Category Archives: T&I

Alumnus Interview: Lynn

皆さん、こんにちは。日本語通訳翻訳(T&I)プログラム1年生の神野裕史です。

1学期ももうすぐ終わりに近づいており、期末試験に向けて、通訳翻訳学科の学生はてんやわんやの大変な時期を迎えています。テスト勉強に加えて、イベントも盛りだくさん。2年生はFall Forumと呼ばれる実践的な通訳演習の機会があります(次回、このblogでFall Forumについて取り上げます。乞うご期待です)。1年生もサイトトランスレーションのクラスで中国語学科との合同演習をしたり、通訳翻訳プログラム全体での逐次通訳演習があったりと忙しい日々を送っています。

ChenYoshimura

勤め先にて(リンさんは右端)

さて、今回はOBの特許翻訳者としてご活躍されているリン・ラーセンさんとのインタビューをご紹介したいと思います。

― 本日はお時間、ありがとうございます。ご活躍されている卒業生のお話を聞けるのは非常にありがたいです。早速ですが、MIISで得た経験の中で、キャリア上、特に有益だと感じられていることはございますか?

まずは、高い外国語能力だけでは通訳者・翻訳者として活躍するのに不十分だと気付けた点でしょうか。通訳者になるには(特に同時通訳は)しっかりした訓練が必要です。一方で翻訳者には、原稿の隅々まで注意を払うことが求められます。これは、どれだけ注意深い人であっても、専門的な教育抜きには身につきません。

また、通訳者・翻訳者に共通して言えることですが、英語・日本語での背景知識も重要です。例えば、経済・自動車・知的財産などが日英の通訳者・翻訳者にとって重要な分野ですが、専門的に勉強した経験のない人は、母語ですら知識がないことが多いでしょう。

MIISでこれらの分野について学び、翻訳ができたことは非常に貴重な経験でした。MIISのカリキュラムにはしっかりと技術的な内容が盛り込まれており、文学などが翻訳の主な対象になっている一般の外国語のプログラムとは大きく異なります。

― ありがとうございます。翻訳者としてご就職されたとお聞きしていますが、仕事探しの上で、MIISの教育はどのように役立ちましたか?

1年生と2年生の間の夏休みに国連の専門機関である世界知的所有権機関(WIPO)でフェローシップ(≒インターンシップ)を行いましたが、その応募選考の際にはキャリアセンターを中心にMIISの力を借りました。フェローシップへの参加によって、非常にニーズのある分野である日本語→英語の特許翻訳の実務経験を積むことができました。

スイスにて

スイスにて

特許文書は技術的なプロセスや機械について法律用語で書かれており、非常に複雑な描写が多いため、専門的な訓練なしに翻訳を行うのは困難です。このインターンシップでの経験とMIISでの2年間の教育のおかげで、シリコンバレーにある法律事務所で、翻訳者として働き始めることが出来ました。

特許翻訳に限らず、もう少しマーケット全体を見てみると、競争がどんどん激しくなっています。ですので、MIISのような学校の修士号を持っていることは大きなアドバンテージです。

― 企業の方とは接点がまだあまりないのですが、修士号が評価されるというのは非常に心強いです。最後に、MIISでの印象に残っていることをお聞きしてもよろしいでしょうか?

オットセイの鳴き声に耳を傾けながら、居眠りをすることでしょうか?学校自体について話すと非常に小さなクラスで切磋琢磨したことが印象的です。2年間同じ仲間と、活発にグループで勉強するのですが、仲間の成長には驚きました。

カリフォルニア モスランディング

カリフォルニア モスランディング

そして、何を学んでいても、卒業後に役に立つと感じていたことも記憶に残っています(結構な授業料を払いますので、そう感じながら勉強できるのはありがたいものです)。学科外でも、色々な言語ペアの学生と会って、ネットワーキングができたのも非常に楽しかったです。皆、卒業後、それぞれの業界でリーダーになっていきますので、いつか頼りにする機会も出てくるのではないかと思っています。

Student Interview: Satoko and Fellowship at WIPO

皆さん、こんにちは。日本語通訳翻訳(T&I)プログラム1年生の神野裕史です。今年度、新しくblogを担当させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。

MIISに入学してから2ヶ月強が経ちます。新入生も学校が始まって初の中間テストが終わり、ようやく学生生活に馴染んできたところです。そんな学生の今の関心事項のひとつが2学期終了後の夏休みに行うインターンシップです。いったいどんなインターンシップ先があるのか、どんなお仕事ができるのか、学生の間ではよく話題になっています。そこで、blogを読んでくださっている皆さんのご参考にもなればと思い、この夏、3ヶ月、世界知的所有権機関(WIPO)でインターンシップを行った2年生の金森聰子さんに、インターンシップの感想を伺いました。

― 秋休み明けのお忙しい中、ありがとうございます。スイス・ジュネーブのWIPOで夏休みに3ヶ月間インターンされていたと聞きましたが、どんなお仕事をされていらっしゃったのでしょうか?

金森さん WIPOのエントランス前で

金森さん WIPOのエントランス前で

WIPOは国連の専門機関で、知的財産の保護を世界中で促進することを目的としています。その業務のひとつに特許の国際出願制度の運営があります。WIPOでのインターン制度はフェローシップと呼ばれていますが、私はフェローの1人として日本から出願された特許を日本語から英語に翻訳する仕事を行っていました。

フェローシップを始めた当初は要約と呼ばれる特許出願の明細書や図面などの概要をまとめた資料の翻訳を行いました。そして徐々に慣れてくると、より分量の多い「特許可能性報告書」も翻訳の対象に加わりました。どちらも翻訳後、リバイザーと呼ばれる担当者の元に原稿を持参し、校正・校閲を依頼し、修正箇所の指示を仰ぎます。

WIPO外観

WIPO外観

― フェローシップでどのような学びがありましたか?

いちばんの発見は特許翻訳が楽しかったことです。書かれている内容をリサーチして、しっかり理解して、翻訳する。間違いが許されない仕事で、精密さが求められますが、知的刺激をたくさん受けることができました。フェローシップを始める前までは、特許翻訳の経験そのものはなかったものの、MIISで学んだ経験が役立ちました。MIISの授業では、言葉を置き換えるのではなく、意味を理解して別の言語で伝えることが強調されています。その重要性を感じた局面が何回かありました。また、文章の論理展開を理解するのに必要な分析思考もMIISで鍛えられたと思います。

国際機関で働けたこと、ジュネーブに滞在できたことも貴重な経験だったと思います。職場には「世のため、人のために働いている」という雰囲気がありました。また、国際機関が集い国際会議も多く開かれるジュネーブの街には何カ国語もの言語が飛び交い、非常にコスモポリタンな空気に溢れていました。例えば、WIPOでは英語に加え、フランス語も公用語として使用されているので、フランス語でも会議が開かれ、英語に通訳されています。WIPOのフェローシップは、卒業後に実際の仕事に結びつくことも多いと聞いていますので、またご縁があるのではと楽しみにしています。

ジュネーブのレマン湖

ジュネーブのレマン湖

― 今日はお忙しい中、ありがとうございました。

いえ、こちらこそ。MIISはWIPOに長年フェロー生を送り出してきた経緯もあり、WIPOの翻訳の責任者がフェローシップの説明に来たり、キャリアアドバイザーからのアドバイスが受けられたりと、フェローシップを目指す上でも恵まれた環境だと思います。皆さんの参考になれば嬉しいです。

翻訳・通訳・言語教育プログラム紹介

今回から、各プログラムついて触れていきたいと思います。

翻訳・通訳・言語教育プログラムについて

翻訳・通訳、ローカリゼーション管理、また言語教育の分野では世界的に有名なプログラムです。モントレー国際大学の卒業生は世界各地で仕事をしており、一例をあげると、国連・安全保障理事会での討論やパシフィックリム通商会議や夏季オリンピックの競技といった場での通訳、多言語にわたる国際協定や各種取扱説明書、ウェブサイト、書籍、学術論文などの翻訳など、様々な分野で、卒業生の活躍が光ります。

言語教育に関しても、アメリカ国内でもトップレベルのプログラムです。創造的かつ応用的なカリキュラム、最新の設備、そして実地経験に基づくトレーニングを通して、一流の言語教育者を育成します。

 Photo by Lucyna Jodlowska (http://www.lucynajodlowska.com/)

前のポストでも書きましたが、翻訳・通訳・言語教育プログラムでは以下の修士号が修得できます

  • 翻訳学修士号(MAT)
  • 翻訳・通訳学修士号(MATI)
  • 翻訳・ローカリゼーション管理学修士号(MATLM)
  • 会議通訳学修士号(MACI)
  • 英語教授法修士号(MATESOL)
  • 外国語教授法修士号(MATFL)

モントレー国際大学では、毎年ジョブフェアや、様々な国際機関、政府組織、民間企業などへ就職するためのキャリアフェアを行っており、こうした充実したキャリアサポートに支えられ、翻訳者・通訳者ともに、国際機関、各国政府、非営利組織、民間企業や他国制企業への就職や、フリーランスで働くなど、様々なオプションの中から進路を選べるようになってます。

また、モントレー国際大学は、卓越した言語教育プログラムそして、英語やその他の語学教育における専門技術を備えた優秀な人材を世界各国に排出していることで知られています。このような環境で、言語教育プログラムでは、理論に戻づいた基礎知識と専門技術を組み合わせたカリキュラムを通して、熱意と向上心のある言語教育者を育成します。

在学中に培った専門知識と技術は、卒業後の仕事に存分に生かされます。充実したキャリアサポートのもと、卒業生は公立・私立学校や、政府の教育機関にとどまらず、カリキュラムの構成・発展や、語学プログラムの評価方法の修正、そして教師の育成といった分野での活躍しています。

卒業生の主な就職先を挙げると、

  • 国防総省語学研修所(カリフォルニア)
  • 国連
  • 防衛省(日本)
  • トヨタ
  • 富士通マイクロエレクトロニクス
  • 本田開発興業
  • 関西学院大学
  • 名古屋大学
  • 神田外語大学
  • UCLA
  • 慶應義塾高等学校
  • Goldman Sachs Japan
  • 慶應義塾高等学校

Photo by Lucyna Jodlowska (http://www.lucynajodlowska.com/)

ATA会議と国際連合

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秋学期も終わり、遅ればせながら、2ヶ月前に参加した ATA (American Translator’s Association, アメリカ翻訳協会) 会議について書こうと思います。
ATAは、米国を主とする翻訳・通訳者が加盟している団体です。しかし、大規模なイベントのため、世界各国からの参加者も多く、日本人も多数。ネットワーキングの機会や翻訳技術のセミナー、認定プログラムおよび翻訳業界について情報提供なども行われ、翻訳や通訳の仕事をしている会員たちをサポートしています。ATAは年に一度会議を行い、開催される場は毎年異なります。2009年は、ニューヨークのタイムズ・スクエアで開催され、50周年記念ということで華やかなイベントとなりました。

この会議には二つの目的があります。第一に、出席している翻訳会社や通訳会社に履歴書を提出し就職活動したり、MIISなど、翻訳・通訳を教えている大学の代表者に面会するため。そして第二に、今現在、翻訳・通訳の現役プロによるセミナーにおいて最新の技術や方法、経験などを学ぶためでもあります。セミナーには様々なテーマがありました。会議通訳向け準備方法、精神障害者のための通訳、翻訳で使われるテクノロジーの今後、法廷通訳のデモンストレーション、など様々でした。また、これらのセミナーは、日本語を含む様々な言語で行われました。
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最も印象に残ったのは、MIISの卒業生や関係者がいかにも多く参加していたことでした。MIIS関係者の人たちがいくつもの言語で活躍しており、参加者からセミナーで話していた専門家まで、いたるところにMIISの存在が感じられました。「やはりMIISのT&Iプログラムはすごい!」と改めて関心しました。

面白いお話がもう一つありました。MIISの教授の紹介で、国際連合の通訳者に会えたことでした。国連で同時通訳者、そしてその人たちを仕切る事務総長補佐官に会う機会もあり、貴重なお話を聞かせていただきました。残念ながら、国連では日本語は公式言語でないため、使われることが少なく、日本語T&I学生の私たちとは国連にはあまり縁がありませんでした。しかし、ともに参加した中国語やロシア語を話す学生にとって、その言葉は公式言語であるため、彼らにとってMIIS卒業後、国連の仕事に就けることが現実性を帯びていました。
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説明によると、国連で働くには最低3ヶ国語を話さなければならない、そして少なくともそのうち2つは国連の公式言語でなければならない、ということでした。さらに、通訳者として働く場合、使用する言語には組み合わせがあります。一つ例を挙げれば、ロシア語が母語の場合、必ずフランス語も話せなければならない。なぜなら、国連の通訳者は、一人で幾つもの言語を使用するのではなく、リレー通訳を行います。つまり、次々と倒れていくドミノのように、ロシア語、フランス語、スペイン語、英語など、一つの言葉から次の言葉へ順番に通訳されるということを聞きました。

特に印象に残るコメントがありました。MIISの学生が国連のベテランの通訳者の一人に「今でも緊張しますか」と聞いたところ、彼は、「私が緊張しなくなった日は通訳をやめる日だ」と答えました。やはり、どんな人でも緊張し、さらに言えば、緊張感なしにレベルの高い仕事はできない、ということです。通訳を目指す皆さん、自分が緊張するからといって、めげないでください。国連のベテラン通訳者も十分緊張しています。

ニューヨークへの旅では、ATAの参加、国連のツアー、そしてニューヨークにいる友達にも会え、目いっぱい楽しむことができました。来年のATA会議はデンバーで開催される予定です。私はまだ一年生だったため、今年は翻訳・通訳の世界を理解するために参加しましたが、来任は就職活動の目的もできるため、私にとって意義深いイベントになると思います。

はじめまして!

Matthew Carpenter

僕は今年の九月モントレー国際大学のT&I(翻訳と通訳)学部へ入学しました。名前はカーペンターマシュー。日本生まれのアメリカ人で、日本には全部あわせて二十年住んでいました。これから勉強の合間このブログに記事を提供していくことになります。どうぞよろしく!

ここへ来る以前はシアトルでウェルズ・ファーゴ銀行に勤めていました。バイリンガルな分僕の語学力を活かした仕事がしたいという思いに駆られてここへ来ました。まだ始まったばかりだけど、この学校へ来て満足しています。理由は色々ありますが、まずやはりアメリカ人が日本語を話すのがここでは当たり前だということ。バイリンガルだからといってもここでは珍しくないし、そうだからといっていい成績が取りやすいというわけでもない。他には、授業内容が充実してて期待も高くいい成績は簡単にはもらえない。語学力向上を目指す僕にとって授業が優しすぎれば却って期待はずれになりここへ来た意味がなくなります。

モントレーは美しい所で、気候も心地よく、これから二年間生活していくのにはすばらしい所です。学校内の生徒も実に世界中から集まっていて、刺激ある環境です。これから二年間何を学びどんな出会いがあるのか、楽しみです!

武田珂代子教授出版物 続報

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先日インタビュー を交えてお知らせした武田教授の本「東京裁判における通訳」が大手各紙で紹介されています。 毎日新聞の記事より
「東京裁判の運営に重要な役割を果たした通訳に光を当てる『東京裁判における通訳』(みすず書房)が刊行された。裁判の関連本は多いが、通訳の問題を正面から論じた研究はほとんど例がない。」
朝日新聞から。
「異なる言語の人が参加する国際裁判が公正に行われるためには、適切な通訳の存在が不可欠だ。しかし第2次世界大戦直後の東京裁判では、連合国側が信頼で きる通訳の人材は少なかった。また翻訳に関するルールも、法廷で審理が始まってから試行錯誤の末に形成された。本書は東京裁判の通訳をめぐる権力関係を取 り上げたものである。」

同じく朝日新聞の東京裁判に関する記事から。
「海外の史料を用いた研究としては、東京裁判を国際人道法の発展史に位置づけた戸谷由麻『東京裁判』(みすず書房)や、通訳の問題を分析した武田珂代子(かよこ)『東京裁判における通訳』(同)がある。 」

それからオンライン版では見当たらなかったのですが、熊本日日新聞も1月18日付けでこの本の紹介をしています。武田教授が熊本出身というつながりからでしょうか。
各記事はリンク先から全文が読めるようになっていますので、興味のある方は是非読んでみてください。