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卒業生インタビュー【トーマス・ホワンさん】

今回は、2010年の卒業生トーマス・ホワンさんにお話を聞きました。トーマスさんは、MIISで翻訳・ローカリゼーション管理(MA in Translation and Localization Management)を専攻され、現在は翻訳会社のプロジェクト・マネージャーとして活躍されています。

―まず、MIISの修士課程で翻訳・ローカリゼーション管理を勉強しようと思ったきっかけを教えていただけますか。

cropped-Monterey-Harbor.jpg私は高校のときに日本語の勉強を始め、大学では日本語を専攻しました。大学卒業後は専攻をぜひ活かしたいと誰でも考えると思いますが、私もまず翻訳関連の仕事を探しました。専攻といちばん直結した仕事は翻訳だと思ったからです。いろいろ調べている途中で、大学で開催されたキャリアフェアにMIISから代表が来ていたので、話を聞いてみました。さらにMIISについて資料を集め、MIISキャンパスを実際に見学したあと、家族やキャリアアドバイザーの勧めもあり、入学を申し込みました。MIISで勉強することが、将来キャリア探しに役立つはずだと考えたからです。

―ご卒業後は、翻訳・ローカリゼーションの会社でプロジェクト・マネージャーをされていると伺いました。どのようなお仕事か、教えていただけますか。

簡単にいえば、クライアントから来たファイルを受け取り、そのファイルの翻訳を責任を持って完成させてクライアントに納品する担当者、ということでしょうか。

IT時代のいま、エンドユーザーは迅速で簡単に情報を得ることを求めています。このためローカリゼーションでは、翻訳者やエディターはただワードファイルで作業するだけではすまなくなってきました。ほとんどの場合、ウェブサイトのアップデートの繰り返しや、モバイル用のアプリについても対応しなければいけません。それから、Flashバナーや動画など、マルチメディアコンテンツも激増しています。たった2分の字幕つき動画に対して、5~6人以上が関わることもあります。 翻訳対象の言語が増えれば、人数はさらに増えます。

そういったなかでプロジェクト・マネージャーは、プロジェクトで何がカバーされるか、何が期待されるかを、関係者全員に確実に理解させなければいけません。そして、クライアントとベンダーとコミュニケーションを取り、翻訳関連の問題を解決し、担当プロジェクトが必ず納期通りに完了するように、プロジェクトの各ステップの進行状況を常に管理することが必要です。

それからプロジェクト・マネージャーは、コミュニケーションをはかり、プロジェクトの進行を管理するだけでなく、何が最適な手順なのかいつも考えながら、プロセスの改善につとめなければなりません。品質を犠牲にしないでコストを削減することはできるか。要求条件がいくつか課せられているなかで、コストパフォーマンスが最適なアプローチは何か。どんな問題が起こりうるか、それを防ぐためには何をすればいいか。新規クライアントとのキックオフ・ミーティングや、既存のクライアントとの現行プロジェクトなどで、プロジェクト・マネージャーは、こういった問いに対応しなければなりません。この仕事の楽しさは、こういった新しい課題が毎日待ち受けていることですね。

―在学中はインターンシップなどはされましたか。どんな経験だったか教えてください。

MIISの1年目が終わった夏休み、東京の翻訳会社でインターンとしてつとめました。翻訳ツールmiis_campus_securityを使った作業やQA(品質管理)、プロジェクト管理などに、このときはじめて関わりました。プロジェクト・マネージャーのQA作業を手伝ったり、翻訳メモリの整理をしたり、依頼メールの送信・受信を管理したりといった業務が大半でした。

2年目は、教授から紹介されたインターンシップの仕事をさせていただきました(MIISの教授はすべて現役のプロフェッショナルです)。翻訳エージェンシーの仕事で、翻訳管理システムやプロジェクト管理について、さらに経験を積むことができました。QA や翻訳メモリのアップデートを手伝ったほか、プロジェクトの管理を最初から最後まで任されました。おかげで、学校で習ったことを活かすと同時に、実際の現場でどのようにローカリゼーションが進行するのか、学ぶことができたと思っています。

―MIIS で学んだことが、いまお仕事にどう活かされているか、お聞かせください。

ほかのTLM(翻訳・ローカリゼーション管理)専攻の仲間と、実際のクライアント案件や翻訳プロジェクトの管理作業をする機会に恵まれました。翻訳者を探し、翻訳料金を交渉する。予算のバランスを取りながら、プロジェクトがスムーズに進むよう、関係者全員とコミュニケーションを取る。どれも私にとってははじめての経験でした。新人ならではの失敗もたくさんしましたが、TLM専攻の学生としてもっとも成長した時期は、このプロジェクトを担当していたときだったという思いが強いです。このときに学んだことで、いまの仕事でも活かせていることはたくさんあります。

MIISで翻訳を学んだことも、いまの仕事に大きく役立っています。最適な国際化とは何か、クライアントに説明するときに、言語面からプロジェクトを見ることができるからです。翻訳者の立場に立たなければ、翻訳関連の問題を説明したり、予測したりすることは難しいでしょう。

―MIIS の学生生活で、いちばん思い出に残っていることは何ですか。

Samson Centerいちばん印象に残っている大切な思い出は、友だちのことです。1年目はTI(翻訳・通訳)専攻だったのですが、日本語プログラムは10人ぐらいでした。みんな、とにかくいつでも一緒にいましたね。サムソンセンター(カフェテリア)に入ると、通訳などを練習していたり、翻訳の宿題のピアフィードバックをしているクラスメートに必ず会いました。こういった時間がいちばん楽しかったですね。2年目からTLM専攻に変えたあとは、あまり会えなくなってしまったので寂しかったです。

―入学希望者の方たちに、特にアドバイスがあればお願いします。

まず、いろいろな意見を受け入れられる柔軟な心を持つことです。MIISでは、自分の翻訳や通訳などに対して、先生や仲間からたくさん批評を受けることになります。こわいな、と思うかもしれませんが、そういった率直なフィードバックをもらわなければ、あれほど多くを学ぶことはできなかったと私自身は痛感しています。クラスメートはそれぞれの得意分野に基づいたフィードバックをしてくれます。それをしっかりと受け止めることが、ずっとあとになっても活かせるような、非常に貴重な財産になると思います。

それから、ときどきはゆっくり休むことです。何時間もかけて課題をやったり、試験勉強をしたりして、ストレスを抱えることも多いでしょう。だからこそ、大事なときに実力が発揮できるよう、心も体も必ずゆっくり休憩させることが大切ですね。

卒業生インタビュー【ダニエル・ドラモンドさん】

今回は、今年MIISの翻訳修士課程を卒業されたあと、翻訳者としてご活躍中のダニエル・ドラモンドさんにお話を伺いました。

―はじめに、MIIS を選ばれた理由を教えていただけますか。

Headshot

MIISキャンパスで

MIISの名前を初めて聞いたのはJETプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)に参加していたころです。その後もMIISのことは常に頭の片隅にありました。でも翻訳を仕事として本格的にやってみたいと思ったのは、アメリカに帰国してから数年経ったころです。日本語と英語の翻訳プログラムがある学校をいろいろと探して、最終的にMIISとケント大学に絞り込みました。どちらも素晴らしいですが、MIISの国際性を重視した姿勢や雰囲気が自分には一番合っていると感じました。

―卒業後はどのようなお仕事をされていらっしゃいますか。

カリフォルニア州サンタクララにあるチェン・ヨシムラ法律事務所で特許翻訳者として働いています。肩書きの通り、仕事のほとんどは日本語から英語への特許翻訳です。私たちの仕事の最終的なゴールは、クライアントが申請している特許出願が許可されることですので、時には単なる翻訳の範ちゅうを超えたサポートを提供することがあります。特許申請が通る可能性が高まるように、基準に照らしあわせて申請書を多少調整しなくてはならないことがよくあります。

―MIIS で学んだことで現在の仕事に活かせていることを教えてください。

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クラスメイトと

特に役立ったと実感している点が3つあります。私は翻訳専攻でしたが、ローカリゼーションのクラスをたくさん取りました。いまの職場で翻訳ソフトウェアを使っているので、特に翻訳支援ツールの実習ができたことに、感謝しています。それから、ラッセル秀子先生の翻訳のクラスで長めの文書を翻訳する機会に恵まれて良かったと思っています。翻訳で使用する用語、スタイルなどを長い文書の翻訳で統一を図りながら取り組んだことは、20ページ以上に及ぶことが多い特許翻訳をするのに役立っているからです。そして、ターニャ・パウンド先生の特許翻訳クラスですね。特許の長い文章をどのように読解して、うまく区切りながら翻訳するかを学んだことは、いま仕事で特に一文が長くて理解が難しいような文章を訳さなくてはならないときに、当然のことですが役立っています。

―学生時代はどんなことに力を入れて過ごしていましたか。

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WIPOインターンシップの初日

一人で勉強やリサーチをして過ごす時間も長かったですが、クラスメイトともよく一緒に勉強しました。特に翻訳の宿題についていろいろ意見を交わしたことはとても役に立ちました。議論を通して他の人の解釈を聞いたり、あるフレーズが何を意味し、どのように訳すか、といったことを話し合ったりしたのは、とてもいい経験でした。

―学生生活のなかで一番思い出に残っていることは何でしょうか。

一番記憶に残っているのはクラスメイトと過ごした時間です。サムソンセンター(カフェテリア)などキャンパスで一緒に勉強した時間だけでなく、ハイキングに行ったりランチを一緒に食べたりといった、自由時間があまりないなかで一緒に楽しく過ごした貴重な時間が印象に残っています。MIISで過ごした2年間の間に築いた友情をとても大事にしていますし、これからも機会があればMIISでできた友人と交友を温めるのを楽しみにしています。

―入学希望者にアドバイスがあればお願いします。

同期の神野裕史さんもこのブログのインタビューでお話しされていたと思いますが、入学を検討されている方は、MIISを実際に訪れてみて翻訳や通訳のクラスを見学することをおすすめします。自分が願書を出しているときにそういった機会があればよかったと思います。そうしていたら、クラスがどんな感じであるとか、入学前に何を準備しておけばいいかもっとよく分かっていただろうと思います。2番目のアドバイスとしては、当たり前に聞こえるかもしれませんが、実際の仕事と同じように厳しい締め切りのある翻訳の経験を積むことです。そうすることで翻訳者の仕事がどういったものか理解できると思いますし、自分が実際に翻訳者に向いているか見極めるのにも役立つと思います。