卒業生インタビュー 【神野裕史さん】

今回は、今年MIISの翻訳通訳修士課程を卒業されたあと、アメリカで通訳・翻訳者としてご活躍中の神野裕史さんにお話を伺いました。

―今日はお忙しいなか、ありがとうございます。はじめに、 海外の大学院で通訳と翻訳を学ぼうと決めた理由を教えていただけますか。

一番の理由は、通訳・翻訳技能を身につけるには時間をかけて訓練を積む必要があるだろうと思ったからです。2年間という時間を通訳・翻訳の勉強に投資して、実力をつけたいと思ったからというのが最大の理由でした。

MIISで学ぶ前は、財団法人で日本語を母語としない方を対象としたBJTビジネス日本語能力テストの普及業務を担当していました。受験者の中には東アジア・東南アジアの日本語通訳・翻訳者の方も多く、通訳・翻訳の仕事に興味を持ちました。

そこで、日本で通訳学校に1年ほど通い、非常に楽しかったのですが、会社から帰った後、夜21時くらいから同時通訳の練習をすると頭が興奮して眠れなくなるし、朝起きてから出社までの間はゆっくりしたいし、満員電車で勉強するのもつらいし…と、勉強時間の確保が大きな課題でした。仕事と学業を平行させていくのは私には合わないのだろうと気づき、しっかり勉強できる環境を探して出会ったのがMIISでした。

―神野さんは今年5月に卒業されたあと、アメリカで就職されたと伺いました。どのようなお仕事か、お聞かせください。Jinno 1

ソフトバンクが買収した携帯電話通信事業者のスプリントのネットワーク部門で、Global Communications Managerとして働いています。現在の主な業務は、ソフトバンク・スプリント役職員のコミュニケーションを通訳・翻訳業務を通じてサポートすることです。ネットワーク品質や効率を高めようとソフトバンクとスプリントが一体となってイノベーションを起こしていくビジネスの最前線に立ち会えるのは、非常に刺激的です。

―MIIS で学んだなかで、「現場で活かせている」と実感できるのは、どんなスキルでしょうか。

最も大きいのは、なんと言っても通訳・翻訳の実務能力だと思います。通訳にせよ、翻訳にせよ、意味を捉え、別の言語で伝えるのは、MIISでの訓練の量と質、両方必要だったと感じています。Jinno 2

通訳者・翻訳者としてのコアスキルは意味を捉え、別の言語で伝えられることだと思いますが、翻訳であれば「誤字脱字を見逃さない」「パソコンを使いこなす」、通訳であれば「必要な声のボリュームで話す」「座る位置、立つ位置を意識的に選ぶ」などの周辺知識、コンピテンシーも含めて学習できるのがMIISの良かった点だと思います。

―学生時代はどんなことに力を入れてすごしていましたか。Jinno 3

あまり楽しい大学院生活に聞こえないかもしれないのですが(笑)、クラスメートとの練習です。入学前に読んだマルコム・グラッドウェルの本に「何かに習熟して一流になるのに、人は1万時間の積み上げが必要」と書いてあったので、2年間で1万時間は無理にせよ、なるべく技能を積み上げるために時間を割こうと思っていました。

―学生生活で一番思い出に残っていることをお聞かせください。

1年に1度、通訳を学んでいる全言語の学生が逐次通訳をMIIS・モントレーのコミュニティ全体にお披露目するFall Forumというイベントがあります。イベントの企画・実行にかかわったことで、通訳をイベント主催者の視点から考えることができたほか、他言語の学生たちと一緒に働く機会が持て、非常に勉強になりました。Jinno 4

―それでは最後に、MIIS入学希望者にアドバイスがあればお願いします。

入学前に2点お勧めしたいことがあります。まず1つ目ですが、サイトトランスレーションと逐次通訳の授業を見学されることをお勧めします。教授だけでなく、バイリンガルのクラスメートに自分のパフォーマンスを見られ、(批判ではなく)批評を受ける環境なので、言語能力と心の両面から準備ができているか検討する良い材料になるかと思います。jinnno 5-2

2つ目ですが、通訳・翻訳という職種柄、言語の組み合わせと母語によって、また、国によって、市場が大きく異なるので、どの国にどのような仕事があるのか、どの国で働きたいのか(働けるのか)、MIISのキャリアセンターなどから情報を得て、大まかなイメージを持てるようにしておくと良いと思います。