在学生インタビュー【彦坂メアリーさん グッドマン社インターンシップについて】

今回は、2学期終了後の夏休みに、ダイキン工業株式会社の米国子会社で、住宅用空調大手であるグッドマン社(Goodman Global Group, Inc.)にてインターンシップをされた彦坂メアリーさん(会議通訳修士課程2年生)にお話を伺いました。

―本日はお時間をいただきありがとうございます。彦坂さんは夏休みの間、グッドマン社で2ヶ月間インターンシップをされていましたが、具体的にどんなお仕事をされていらっしゃったのでしょうか。

グッドマン社では、通訳インターンとして働いていました。仕事内容は、大半が通訳で、時間の合間に翻訳もするという感じでした。通訳は、逐次通訳と同時通訳のどちらもする機会があったのですが、具体的には、グッドマン社のアメリカ人社員の方と、日本のダイキン工業からたくさん来られている日本人出向社員の方との間に入って、製造の現場での逐次通訳や月例や週例で行われる会議での同時通訳をさせていただきました。

逐次通訳は、MIISの授業では2〜3分間聞いてメモをとり通訳しますが、それとは違い、1〜2文くらいの短い内容を訳していくという形でした。同時通訳では、インターンなので完全な通訳はできない可能性があるということを伝え、その了承を得た上で、一緒にインターンシップをしていたクラスメイトと、どちらかと言えば少し練習のような形で通訳をさせていただいていました。会議の内容は会社のビジョンや予算のことなど多岐にわたり、同時通訳をするにはとても難しかったのですが、良い経験となりました。

翻訳は、通訳を依頼された会議で使うパワーポイントの資料を会議前に翻訳したり、日本から送られてきたいずれ翻訳が必要になる資料を空いた時間に少しずつ翻訳したりという感じで、内容は製造関係が多かったです。会議に使う資料の翻訳は、事前資料として会議の内容を理解するのにも役立ちました。

―インターンシップでどのような学びがありましたか。

良い意味でも悪い意味でも、MIISで学んだことがすべてじゃないということに気づかされました。MIISの通訳の授業では、2〜3分の長さの通訳が当たり前ですが、スピーカーの話しやすさや通訳を聞く側の聞きやすさを重視して、インターンシップではその長さが1分にも及ばないことがほとんどでした。また、日本側とアメリカ側の間に立ってみて感じたのが、文化や考え方の違いや、コミュニケーションの違いを理解した上で通訳することがとても大切だということです。「言葉の置き換えだけでは通訳は務まらない」ということを身をもって理解し、通訳者に何が期待されているのかについて考え直すきっかけとなりました。通訳する上で一つ一つの言葉がどれほど大事なのか、言葉を巧みに操ることがどれほど難しく、また魅力的であるのかに気がつきました。

また、MIISで勉強している時は、学生として自分がいかに完璧な通訳をするかやいかに間違いをしないようにするかにフォーカスしてしまい、自分本位になりがちです。ですが仕事となると、通訳は自分ではなくて、人と人とのコミュニケーションを図ることにフォーカスしないと、ただの自己満足に終わってしまうと改めて感じました。さらに、学校では通訳でも翻訳でも、基本的に教材の話し手や書き手に質問することはできない環境です。そのため、自分で調べたことや、自分の解釈に頼って訳すわけですが、実際の現場では、質問することが当たり前で、逆に質問せずに自分の解釈で訳して間違うよりも、質問した方が絶対にいい環境です。そのような環境で仕事をしてみて、自分の本当に聞きたい情報を的確に引き出せるように、質問をすることにも慣れておく必要があると感じました。

―MIIS で学んだことがインターンシップでどう活かされたか、お聞かせください。

もちろん通訳のメモ取りの技術をはじめ技術面で活かされたことはたくさんありましたが、MIISで学ぶことで打たれ強くなったことが私には大きかったです。私はすごく緊張するタイプなのですが、何かの課題に直面しても「次に行こう」という気持ちで通訳に臨むことができたのは、MIISで1年間授業を受けてきた中で打たれ強くなったおかげかなと思います。通訳をしていると失敗はとてもよくあることですが、失敗の連続でもくよくよせず、その失敗から学んだことを活かしていこうと思える性格が1年で培われたのではと思います。

また、これは質問とは逆になりますが、MIISで学んでいないことでとても苦労したこともあります。英日通訳の授業で扱われる教材は、ほとんどが英語ネイティブのスピーカーのもので、基本的には流暢なイギリス英語やアメリカ英語です。でも実際に通訳が必要な現場では、英語ネイティブの方ももちろんいますが、そうでない方も多く、聞き取りに苦労したこともありました。そのような時にはリスニングにより集中力を使うことになり、それが本当に大変でした。今の時代、英語ネイティブでない方が英語を話す機会はたくさんあるので、いかにいろんな人の英語に慣れるかがすごく重要で必要なことだと強く感じました。