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インターンシップについて【福谷昌子 ホンダR&Dアメリカ(Honda R&D Americas)(2)】

みなさんこんにちは。

日本語プログラム翻訳通訳専攻(T&I)2年生の福谷昌子です。

前回からお伝えしている、2018年夏のオハイオ州にあるホンダR&Dアメリカでのサマーインターンシップについての後半記事です。前半はこちらからどうぞ。

インターンシップならではの学び

MIISの同時通訳の授業では、1人の人が話し続ける講演や、2人〜4人によるパネルディスカッションのビデオを流して練習をします。日英・英日同時通訳の場合、通訳者1人が連続して通訳できるのは15分〜20分と言われています。同時通訳の授業が始まるのは2学期からで、私は2学期の終わり時点で8分程度の同時通訳しか経験がありませんでした。

研究所では、1つの会議につく通訳は基本的に1人です。最初の1週間は先輩通訳の皆さんのお仕事を見学させていただき、2週目からは本格的に通訳の実践に入りました。最初は1時間ほどの会議でも先輩通訳の方とペアになり、交代しながら慣れていきました。ブースに入って日本語から英語、または英語から日本語の一方向に講演の内容を通訳するふだんの授業や練習とは違い、会議では会話が中心なので、1回の会議で日英・英日の切り替えを何度もするのが新鮮でした。また、授業ではいつも1人でブースに入っていたので、タイミングを読んでペアの通訳さんと交代する練習ができたことも実践にかなった経験でした。

研究所で一番おどろいたことの一つが、エンジニアの皆さんが通訳を介したコミュニケーションにとても慣れているということです。研究開発とひとくちに言っても、車一台の設計となると車体からエンジン、電気系など、分野はさまざま。研究所の中でいくつもの室課に分かれてたくさんのエンジニアの方々が作業しています。そのため、一日のうちに行われる会議数も膨大でした。その会議のうち、日本人が出席する会議や日本とのテレビ会議など、通訳が必要になるものは、ほぼすべて言語サービス室課から通訳が送られます。日本人駐在員と働く機会の多いエンジニアの方々は、通訳がしやすいように話すペースを考えてくださったり、必要に応じて重要な点を繰り返したりしてくださり、とても通訳のしやすい雰囲気を作ってくださいました。

また、毎日通訳が研究所内を動き回っているような現場なので、通訳翻訳がしやすい環境もしっかりと整っていました。事前の資料提供に関しては、できるだけ事前準備ができるように会議担当者の方と直接話したりメールを飛ばしたりすることが言語サービス室課内で推奨されていました。そのため、実際に会議担当者のデスクまで行って資料提供をお願いしたりすることもあり、事前準備やクライアントとのコミュニケーションの大切さも身をもって学ぶことができました。わからないことの多いインターンの私に、いやな顔ひとつせず指導してくれる先輩方や資料提供に応じてくれるエンジニアの方々に恵まれていたことをとてもありがたく感じました。会議中にわからない専門用語があると、会議終了後、気さくに質問に答えてくださるエンジニアの方も多く、自動車に関するバックグラウンドがまったくなかった私でも勉強しやすく、学んだことをすぐに生かしていける環境でした。

ホンダジェットと(ホンダ・ヘリテージ・センターにて)

MIISだからこそできたインターンシップ

先にも書いた通り、このインターンシップは2018年の3月に開催されたMIIS TILMキャリアフェアを通じて採用していただきました。ホンダR&Dアメリカでは、中西部の地域を中心に、工学系の学部がある様々な大学からエンジニアのインターン生を採用していますが、言語サービス室課に関しては、毎年サマーインターンの採用のためにわざわざカリフォルニア州まで足を伸ばしてMIISのTILMキャリアフェアに来てくださっています。研究所のほぼ全室課に対して通訳サービスを提供する言語サービス室課では、会議の分野ごとに少しずつ異なる膨大な量の専門用語をいち早く覚え、臨機応変にエンジニア間のコミュニケーションをサポートするのに十分な通訳訓練経験が求められているためです。このようなMIISの学生の質への信頼を築き上げたのは、紛れもなく歴代サマーインターンを経験されてきた先輩方であり、卒業後ホンダR&Dアメリカに就職して活躍されてきた卒業生の方々です。私がインターンをした時点ではMIIS出身の先輩通訳の方が2人いらっしゃいましたが、お二方ともに室課のみなさんから信頼され、通訳チーム全体を率いる存在でした。MIISだからこそ経験できた、とても充実した3ヶ月となりました。

これから

サマーインターンでの大きな学びのひとつは、どんな分野であれ、飛び込んでみなければどんな景色が待っているかわからないということです。インターン前は、車に関する知識も皆無に等しく、自分から興味をもったことのある分野でもなかったため、3ヶ月通訳としてやっていけるのか不安で仕方ないというのが正直なところでした。しかし、素晴らしい先輩通訳の方々やエンジニアの方々とお仕事をさせていただく中で、それまでまったく知らなかった自動車業界の面白さを垣間見ることができました。

私はいよいよ5月にはMIISを卒業し、社会に飛び込んでいくことになります。まだ進路は模索中ですが、先入観や苦手意識などにとらわれずに選択していきたいと思います。

インターンシップについて【福谷昌子 ホンダR&Dアメリカ(Honda R&D Americas)(1)】

みなさんこんにちは。現在日本語プログラム翻訳通訳専攻(T&I)2年生の福谷昌子です。今回は、2学期終了後の夏休みに、オハイオ州レイモンドのホンダR&Dアメリカでインターンシップをさせていただいた経験についてお話ししたいと思います。

学生アソシエイト通訳として採用されるまでの流れ

毎年春学期、MIISではTILM(翻訳通訳ローカリゼーション管理)プログラムの学生を対象としたキャリアフェアが開催されます。ホンダR&Dアメリカの方も、2018年3月に行われたキャリアフェアに日英社内通訳のインターンを採用しにいらっしゃっていました。そこで履歴書を担当の方にお渡しし、フェア後にインターン希望者と担当者で懇談の形をとって面接よりもカジュアルな雰囲気でお話をし、後日ホンダの人事部と言語サービス室課の方々と電話面接を行いました。1週間ほどで採用通知をいただき、オハイオでのサマーインターンシップが決まりました。

学生アソシエイトとは

この開発研究所で働かれている方々は、主に日本人駐在員、現地採用の正社員(アソシエイト)、派遣社員に分かれています。私は学生アソシエイトとして採用していただき、正社員が出席する会議やイベントにも参加させていただく機会がありました。

インターンシップの終わりには、3ヶ月間でどんな業務を体験したかや、その経験を通して学んだことなどをマネージャーの前で発表する場があり、エンジニアとして働いていた他の学生アソシエイトの皆さんのインターンシップ内容も知ることができました。

言語サービス室課の一日

言語サービス室課は、その名の通り、通訳翻訳の言語サービスを他の各室課に提供しています。翻訳のみ担当の方もいらっしゃいますが、ほとんどは主に通訳として一日に複数の会議に参加し、空いている時間に会議で使われる資料の翻訳をしていました。

日本とのテレビ会議も多く、時差を考慮した上で最も合理的な早朝(日本の夕方)と夜(日本の早朝)に会議を設定するのが一般的でした。私はお昼頃から夜の会議までを担当する遅番だったので、朝は比較的ゆっくり出勤し、午後から一日2〜3件、多いときは4件の会議の通訳を行いました。通訳は原則同時通訳で、ブースではなく持ち運び可能な同時通訳機器で行いました。

研究所の近くにあるホンダ・ヘリテージ・センター

読んでいただきありがとうございました。次回はこのインターンシップを通して得た学びについてお話します!

在学生インタビュー【ティム・サーさん ニンテンドー・オブ・アメリカ(Nintendo of America)でのインターンシップについて】

今回は、2学期終了後の夏休みに、ワシントン州のレッドモンドにあるニンテンドー・オブ・アメリカにてインターンシップをされたティム・サーさん(翻訳ローカリゼーション管理修士課程ローカリゼーション専攻2年生)にお話を伺いました。

シアトルのスペースニードル展望台にて

-今回はお時間をいただきありがとうございます。サーさんは今年、ニンテンドー・オブ・アメリカでサマー インターンとして働かれたそうですね。もともと同社ではインターン採用の予定はなかったと聞きましたが、どのようにしてインターンシップを獲得したんでしょうか?

ネットワーキングです!MIISのキャリアカウンセラーのエディーさんから、ニンテンドー・オブ・アメリカで働いている方をLinkedInで探して、空いているポジションがないか聞いてみてはどうかとアドバイスをいただきました。そこで、日本で働いた経験がある方や、MIISの卒業生など、自分と共通点がある方を探しました。そしてついに私の履歴書を社内で共有してくださるという方が現れ、人事部につなげていただくことができました。時間はかかりましたが、通常は2年契約でしか採用しないポジションで特別に夏だけ働かせていただくことになったのです。最初はどうなるか心配でしたか、最終的にはこうしてインターンシップを獲得できました。

-1日の勤務スケジュールはどんな感じでしたか?サーさんが所属していたチームや部署ではどのような責任や仕事を任されていたんでしょうか。 

私が働いていた言語サービス(Language Services)部署では、日本の国内拠点とやりとりをする社内文書を翻訳しています。多くがデベロッパーからのコメントでしたが、マニュアルガイドやプレゼン資料を訳すこともありました。通常、一日のはじめにデベロッパーのコメント・プラットフォームからひとまとまりの翻訳業務が入ってくるので、それを日本語に翻訳します。すべて翻訳し終わると、一日を通してプロジェクト・スペシャリストからもっと大きい翻訳案件が回されます。さらに、翻訳を中心とした様々なテーマについてのミーティングも頻繁に開かれていました。

毎週金曜日には、みんなでアイスを食べながら親交を深めるアイスクリーム・ブレイクも設けられました。

-ニンテンドー・オブ・アメリカでの経験はどうでしたか?今回のインターンシップでの学びを教えてください。 

とても良い経験でした!チームのみなさんも素晴らしい方ばかりで、優しく接していただきました。最初は、ローカリゼーションを専攻しているのに翻訳の仕事ばかりで少し残念に思っていましたが、最終的にはとても価値のある、学びの多い経験になりました。長い期間をかけて確立された効率的なワークフローを間近で見ることができた上、大学院での残りの1年間、何に焦点を当てて過ごすべきかについてもアドバイスをいただくことができました。そして言うまでもなく、とても興味深い方々との出会いもありました。

-MIISのTLM(翻訳ローカリゼーション管理)プログラムでの勉強は、ニンテンドー・オブ・アメリカでどのように生かされましたか?

MIISで勉強したことこそが、このサマーインターンシップを獲得できた大きな理由の一つだったと思います!CATツール(翻訳支援ツール)の使い方も既に勉強して知っていましたし、最近のローカリゼーションでよく使われているツールや専門用語も知っていたので、時間を無駄にすることなくスムーズにチームに溶け込み、すぐに仕事を始めることができました。また、MIISでの経験のおかげで、ワークフローやベストプラクティスなどについての会話にも自信をもって飛び込んでいくことができました。MIISでの経験は大いに生かされたと思います。

サーさんのニンテンドーグッズ

-最後に、ブログ読者の方にメッセージをお願いします。 

サマーインターンシップを探すにあたって私とまったく同じことをするのをお勧めできるかどうかはわかりません。このインターンを獲得するために春学期はずっとネットワーキングに努めていましたし、実はニンテンドー・オブ・アメリカだけに賭けているところがありました。ダメだった時のための他の選択肢は用意していなかったので、プレッシャーはとても大きいものでした。もし自分にとって夢のサマー インターンがあるのであれば、全力でそれに向かっていってほしいと思います。ただ、少なくとも他の選択肢も見ておくと良いかもしれません。

*今回のインタビューは英語で行い、翻訳したものを掲載しています。

在学生インタビュー【ショーン・ケリーさん Boxインターンシップについて】

今回は、2学期終了後の夏休みに、シリコンバレーの会社、Boxにてインターンシップをされたショーン・ケリーさん(翻訳ローカリゼーション管理修士課程2年生)にお話を伺いました。

−本日はお時間をいただきありがとうございます。ショーンさんはこの夏、Boxでインターンをされていましたが、今回のBoxでのインターンシップでは、具体的にどんなお仕事をされていらっしゃったのでしょうか。

Boxでは、ローカリゼーションチームのインターンとして、 Box製のソフトウェアに関する、ほとんどの翻訳プロジェクトの管理を担当していました。Boxはソフトウェアの会社で、ファイル共有や、ファイル上での共同作業を可能にするソフトを開発し、企業に販売しています。

ソフトはアジャイルソフトウェア開発という方法で開発されていて、これは開発されたソフトが継続的にアップデートされていくというものです。ソフトが常にアップデートされるので、ソフトに何か新たな文字列が追加されると、それがBoxの開発した「Mojito(モヒート)」と呼ばれる翻訳管理ソフト上に自動的に集められる仕組みになっています。私はそれを定期的にチェックし、新しい文字列が翻訳されるように手配していました。具体的には、Mojito上で新たな翻訳プロジェクトを立ち上げ、必要な作業を業者に依頼していくというものです。作業を依頼すると、業者からは進捗や遅れなどについて連絡が来るのでその対応をします。Boxでは、翻訳の作業と校正などの作業は別々の業者(LSP[翻訳会社])に依頼していたので、私はその二社それぞれに、週に一度スカイプをして進捗状況や次の作業について確認をしていました。

Boxのインターンは、各自何かのプロジェクトを任されます。プロジェクトは、後にソフトの開発に活かされるためのものです。私も二つのプロジェクトに取り組んでいました。まず一つ目は、ソフトの検索機能を日本語でテストするというものです。日本はBoxにとって非常に大きな市場なのですが、Boxのソフトには日本語での検索機能に、まだいくつかの課題があります。Boxの本社には日本語話者がいないことや、日本支社では他の業務がたくさんあるため、私が日本語で検索機能をテストし、何がうまくいって何がうまくいかないのか、それについて何かパターンはないか、などを調べる作業を担当させてもらいました。

もう一つ私が取り組んでいたのは、ある言語についてのABテストの方法についてです。このABテストは、言語を追加したり、変更を加えたりすることで、Boxのソフトのユーザーの使用体験にどのような影響があるかを確認する作業のことです。うまくテストを行うために何が必要か、様々なことを試しました。

また、ローカリゼーションチームは小さなチームだったので、それ以外にも多くの業務に関わらせてもらうことができました。さらにローカリゼーションチームの所属する、プロダクトチームの定例会議に参加させてもらうこともできました。プロダクトチームの取り組んでいることや、社内で起こっていることをたくさん知る機会となり、とても貴重な経験でした。

ところで、「Mojito(モヒート)」には面白い由来があります。ローカリゼーションチームは以前、モジチーム(Moji team)と呼ばれていました。というのも、ローカリゼーションチームは、たくさんの日本語の文字化けに対応しなければならなかったからです。あるとき、この製品の名前を考えていた開発者の方が、モジ(Moji)はモヒート(Mojito)に似ていると思いついたことから、「Mojito(モヒート)」という名前がつけられることになったそうです。私も実際、インターンシップ中に、モジ(Moji)の意味を聞かれて説明することがよくありました。

−インターンシップでどのような学びがありましたか。

インターンシップ中には、社内の様々な立場の方とのコミュニケーションについて学ぶことができました。ローカリゼーションを担当する私たちのチームは、モノやサービスが自分の母語で提供されている方が使い心地がいいだろう、楽しいだろうと考えるので、あらゆるものを様々な言語に訳したいと考えます。ですが、ローカリゼーションに必要な作業を実行するには、必要なコストや変更について、他の部署の方にきちんと根拠を示して説明する必要があります。

ですので、例えばある言語が追加されたことで、ユーザーがもっとお金を使ってくれるようになった、利用時間が長くなったなどを、示してくれるデータを探さなければなりません。また、どの言語に優先的に対応するかについても、「この言語は、これだけのユーザーがいて、これだけ多くのユーザーに影響するから、ぜひ対応するべきだ」というように言えないといけません。先ほどお話しした日本語の検索機能についてもそうです。日本は大きな市場ですが、もしこれが、もっとユーザー数の少ない他の言語に関わることだったとしたら、私が担当していた作業は必要にならなかったかもしれません。

またエンジニアの方とは、向こうには技術的な面から見て必要だと思うことがある中で、こちらが必要だと思うことをどのようにすればうまく伝えることができるのか、考える必要がありました。様々な立場の方に、ローカリゼーションについて理解してもらうために説明するのは、とても興味深い経験でした。

その一方で、私はイギリス英語版(コンテンツやユーザー・インターフェースなど)の改善にも取り組んでいた関係で、様々な種類の英語についても学びました。アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスの英語について、何がどのように違うのかなどを、改めていろいろと調べ、学ぶことができたのはおもしろかったです。またBoxでは、英語のように、同じ言語でも地域差があるものは、一定のユーザーがいれば、それぞれに対応することも重視されていました。そのため、それによってどんな効果があるのかを示すデータを探すことにも取り組んでいました。

もう一つ興味深かったのは、翻訳者にはいかに文脈が必要なのか、改めてよく分かったことです。翻訳者の方に依頼するファイルは、表の中に、見出しのように言葉が並んだだけの形式でした。翻訳者の方は、それらが何のためのものか、開発者が書いた説明を確認できるようになっていますが、時々それを見てもよく分からないものも出てきます。そんな時にこの文字列はどこに表示されるのか、この表は何なのか、ここでは何が起こっているのか、など様々な質問を受けました。質問を受けると、それがソフトの中でどこに表示されるのかを調べて説明したり、スクリーンショットを撮って送ったりもしました。複雑すぎて突き止めることが難しい場合には、開発者に問い合わせたりもしました。最終的には、業者の翻訳担当部門の方に対してWebセミナーも行いました。ソフトの中で翻訳される部分がどのように表示されるのかなどを説明し、役に立ったと言ってもらえたのでよかったです。

−MIISで学んだことがインターンシップでどう活かされたか、お聞かせください。

一番大きかったのは、翻訳のプロセスについて把握していたことです。例えば、TEP(Translation, Editing, Proofreading)とは何なのか、それぞれの業者はどんな働きをするのか、どのようなプロセスがあってその中で翻訳はどの段階にくるのか、などです。何が行われているのかすぐに理解できたので、苦労なくすぐに仕事に入っていくことができました。

インターンシップ1日目の職場のデスク

CATツール(翻訳支援ツール)について知識があったことも、とても役立ちました。MIISで学んできたことのおかげで、全体的にあまり混乱することもなかったので、何が行われているのか把握するのに必死になるのではなく、どうすればユーザーのために改善していけるのか、どうすれば行いたい作業を実現できるのか、などに集中することができました。

また、少し意外というか、予想していなかったこともあります。はじめは、業者の方とスカイプをする時のことを考えると、きっと私は向こうの話す内容を分かっていないと思われてしまうのではと、とても緊張していました。ですが、結局心配の必要はなく、実際は業者の方と同じ目線や用語で会話することができていました。これはとても嬉しかったことです。

インターンシップでは、本当に素晴らしいチームで仕事をさせてもらい、とても良い経験をすることができました。私の上司はMIISの卒業生だったのですが、その方のおかげでインターンシップ中には、色々な場面でプレゼンテーションをする機会をいただきました。さらに、11月1日からシリコンバレーで開催されるLocWorldという会議で、エンジニアの方と二人でBoxを代表してプレゼンテーションをさせていただくことになりました。LocWorldでは、スタートアップ企業向けの、ローカリゼーションに関するパネルディスカッションが行われます。そこで私の上司が発表するよう依頼されていたのですが、スケジュールの都合で出席が難しいため、代わりに私に発表しないかと言ってくださったからです。うまくいくことを願っています。

LocWorldでケリーさんは11月1日に発表されるようです。頑張ってください!

*今回のインタビューは英語で行い、翻訳したものを掲載しています。

在学生インタビュー【彦坂メアリーさん グッドマン社インターンシップについて】

今回は、2学期終了後の夏休みに、ダイキン工業株式会社の米国子会社で、住宅用空調大手であるグッドマン社(Goodman Global Group, Inc.)にてインターンシップをされた彦坂メアリーさん(会議通訳修士課程2年生)にお話を伺いました。

―本日はお時間をいただきありがとうございます。彦坂さんは夏休みの間、グッドマン社で2ヶ月間インターンシップをされていましたが、具体的にどんなお仕事をされていらっしゃったのでしょうか。

グッドマン社では、通訳インターンとして働いていました。仕事内容は、大半が通訳で、時間の合間に翻訳もするという感じでした。通訳は、逐次通訳と同時通訳のどちらもする機会があったのですが、具体的には、グッドマン社のアメリカ人社員の方と、日本のダイキン工業からたくさん来られている日本人出向社員の方との間に入って、製造の現場での逐次通訳や月例や週例で行われる会議での同時通訳をさせていただきました。

逐次通訳は、MIISの授業では2〜3分間聞いてメモをとり通訳しますが、それとは違い、1〜2文くらいの短い内容を訳していくという形でした。同時通訳では、インターンなので完全な通訳はできない可能性があるということを伝え、その了承を得た上で、一緒にインターンシップをしていたクラスメイトと、どちらかと言えば少し練習のような形で通訳をさせていただいていました。会議の内容は会社のビジョンや予算のことなど多岐にわたり、同時通訳をするにはとても難しかったのですが、良い経験となりました。

翻訳は、通訳を依頼された会議で使うパワーポイントの資料を会議前に翻訳したり、日本から送られてきたいずれ翻訳が必要になる資料を空いた時間に少しずつ翻訳したりという感じで、内容は製造関係が多かったです。会議に使う資料の翻訳は、事前資料として会議の内容を理解するのにも役立ちました。

―インターンシップでどのような学びがありましたか。

良い意味でも悪い意味でも、MIISで学んだことがすべてじゃないということに気づかされました。MIISの通訳の授業では、2〜3分の長さの通訳が当たり前ですが、スピーカーの話しやすさや通訳を聞く側の聞きやすさを重視して、インターンシップではその長さが1分にも及ばないことがほとんどでした。また、日本側とアメリカ側の間に立ってみて感じたのが、文化や考え方の違いや、コミュニケーションの違いを理解した上で通訳することがとても大切だということです。「言葉の置き換えだけでは通訳は務まらない」ということを身をもって理解し、通訳者に何が期待されているのかについて考え直すきっかけとなりました。通訳する上で一つ一つの言葉がどれほど大事なのか、言葉を巧みに操ることがどれほど難しく、また魅力的であるのかに気がつきました。

また、MIISで勉強している時は、学生として自分がいかに完璧な通訳をするかやいかに間違いをしないようにするかにフォーカスしてしまい、自分本位になりがちです。ですが仕事となると、通訳は自分ではなくて、人と人とのコミュニケーションを図ることにフォーカスしないと、ただの自己満足に終わってしまうと改めて感じました。さらに、学校では通訳でも翻訳でも、基本的に教材の話し手や書き手に質問することはできない環境です。そのため、自分で調べたことや、自分の解釈に頼って訳すわけですが、実際の現場では、質問することが当たり前で、逆に質問せずに自分の解釈で訳して間違うよりも、質問した方が絶対にいい環境です。そのような環境で仕事をしてみて、自分の本当に聞きたい情報を的確に引き出せるように、質問をすることにも慣れておく必要があると感じました。

―MIIS で学んだことがインターンシップでどう活かされたか、お聞かせください。

もちろん通訳のメモ取りの技術をはじめ技術面で活かされたことはたくさんありましたが、MIISで学ぶことで打たれ強くなったことが私には大きかったです。私はすごく緊張するタイプなのですが、何かの課題に直面しても「次に行こう」という気持ちで通訳に臨むことができたのは、MIISで1年間授業を受けてきた中で打たれ強くなったおかげかなと思います。通訳をしていると失敗はとてもよくあることですが、失敗の連続でもくよくよせず、その失敗から学んだことを活かしていこうと思える性格が1年で培われたのではと思います。

また、これは質問とは逆になりますが、MIISで学んでいないことでとても苦労したこともあります。英日通訳の授業で扱われる教材は、ほとんどが英語ネイティブのスピーカーのもので、基本的には流暢なイギリス英語やアメリカ英語です。でも実際に通訳が必要な現場では、英語ネイティブの方ももちろんいますが、そうでない方も多く、聞き取りに苦労したこともありました。そのような時にはリスニングにより集中力を使うことになり、それが本当に大変でした。今の時代、英語ネイティブでない方が英語を話す機会はたくさんあるので、いかにいろんな人の英語に慣れるかがすごく重要で必要なことだと強く感じました。

在学生インタビュー【カトリン・ラーセンさん WIPOインターンシップについて】

MIISでは、毎年スイスの世界知的所有権機関(WIPO)でインターン翻訳者として働く学生がいます。今回は、WIPOから帰ってきたばかりのカトリン・ラーセンさん(翻訳・通訳修士課程2年生)に感想を伺いました。

―今日はお時間をいただきありがとうございます。カトリンさんはこの夏3ヶ月間、WIPOでインターン翻訳者としてご活躍されましたが、まず、MIISにいらっしゃる前はどのようなお仕事をされていましたか。

私は子供のころからアメリカで育ったのですが、日本に興味を持っていました。初めて日本語を勉強できたのはスタンフォード大学に入学してからで、その後、日本語に関わる仕事をしたいと考えました。大学を卒業してからすぐ日本に引っ越し、日本のモバイルインターネット企業DeNAで海外人材の採用を担当していました。この時に面接の通訳をする機会に恵まれて、初めて通訳という仕事を実際に体験できました。

WIPO Geneva

スイスのジュネーブにあるWIPO外観

1年半を少し過ぎた時点でアメリカに帰り、身についた日本語を使って、サンフランシスコにある同社の子会社で日本人の経営陣とIRチームのサポートなどをしていました。
IRチームの仕事関連で通訳の業務が増えて、社内全社ミーティング、社外の投資家との会議など、いろいろな場面で通訳をする機会がありました。しかし、通訳の訓練を受けたことがなく、自分の通訳はかなり未熟なものだと実感しましたので、さらにスキルを磨きたいと考え、MIISで勉強することに決めました。

―今回のWIPOのインターンシップでは、具体的にどんな翻訳のお仕事をされていらっしゃったのでしょうか。

簡単に言いますと特許の日英翻訳です。世界の多くの国から特許がWIPOに提出されて、そのすべてを英語とフランス語に翻訳する必要があり、私の場合は日本からの特許の要約と特許庁が作成している国際予備審査報告を英訳していました。かなり独特なスタイルが特徴で、慣れるのに大変でした。さらに、専門性の高い内容ばかりで、原文を理解するために当該分野の知識を身に付ける必要がありました。日本の特許は幅広い分野で申請されているので、自動車をはじめ、あらゆる製造方法、製薬、半導体など一般的な分野の発明から、ゲーム内で不法にアイテムを盗めないようにするシステムなど、様々な発明に触れることができました。特に多かった自動車と半導体の分野では、資料を引用しなくても詳しく説明できるようになったような気もしています(修理はさすがに無理ですが)。

Matterhorn

マッターホルンを背景に

プロセスとしては、まず原文を読み、わからないことや確認する必要がある箇所を関連資料で確認しながら翻訳をしました。出願書の要約のみを翻訳していましたが、WIPOでは出願書を全部見ることができましたので、請求の範囲などを見ることが理解にかなり役立ちました。書き終わったらドラフトを数回読み返し、英語で意味が通じているのか、意味がずれていないか、数字や複数形が合っているかなど確認をしてから修正担当者に提出します。修正担当者は全員WIPOの非常に優れた英日翻訳チームで、特許に大変詳しい方々です。その方々から修正箇所の指摘や全体のフィードバックをいただいて、自分の翻訳を修正してから最終提出をしました。たまには「練習」という形で、間違ってはいないけれど、よりきれいに表現できるはずという箇所の指摘を受け、いくつか可能な翻訳を考え、そのメリット・デメリットを議論しました。大変なときももちろんありましたが、そのおかげで便利な表現と文法構造を学ぶことができました。

―インターンシップでは、そのほかにどのような学びがありましたか。

私にとっての一番の気づきは、他の人にとっては目新しいことではないかもしれません。日本語を書く人はほぼ全員日本語のネイティブなので誰でも上手に書け、当然間違いなどしないものだとなぜか思い込んでいましたが、今回の経験で自分の思い込みが間違っていたことに気づきました。質の高い原文ももちろんありましたが、漢字の変換ミス、コピー・貼り付けの間違い、曖昧に書かれていて意味が通じないものもたくさんあり、そのような文章にどう対応するかで力を試されました。

また逆に、私は英語ネイティブなので、英語で書くときは言いたい意味が通じていると自分が思っていれば、それはまったく問題なく通じているのだと勝手に自信を持っていましたが、テクニカルな分野の書き方にはそれなりのコツがあることがよくわかりました。「口では通じるけれど書く場合は使えない」、「意味はわからなくはないけれど曖昧過ぎてテクニカルなものに相応しくない」というフィードバックには、少しプライドが傷つくこともありましたが、そのおかげでテクニカルな書き方を学ぶとっかかりができたと思います。まだまだですが、これからそのスキルを磨き続けたいと思っています。

―それでは最後に、MIIS で学んだことがインターンシップでどう活かされたか、お聞かせください。

UN Broken Chair

国連広場「壊れた椅子」の彫刻

私は2年目で学ぶテクニカル翻訳の授業をまだ履修していませんでしたが、毎回の翻訳の課題でわからないことをすべて調べきり、利用する表現を全部徹底的に調べるように指導してくださったMIISの先生に感謝しています。特に特許の要約は短いですが、すべての言葉に意味が込められており、その意味と意図をつかんで、そのすべてが英語で正しく反映されているかを確認するのが極めて大事です。長々と続く文章や複数形の曖昧さなどは日本語の特徴で、どの部分がどこにかかっているのか、ある部分は一つだけか複数なのかなどは、原文だけではわからない場合が多かったので、出願書や当該分野について調べる必要がありました。実際に翻訳を勉強し始める前には、翻訳というのは文章だけを見て訳すものだと思っていたのですが、特許翻訳を通じて専門知識やリサーチの必要性を痛感しました。

特に私が苦労したのは言葉が二重の意味を持つ場合です。日本語の原文を理解し、その意味に合った英訳を書き、訳自体は間違ってはいませんでしたが、英語の表現に二つの意味があったことに気づかない場合がありました。こういったケースは特許では特に問題になりますので、英語を母語としていても、テクニカルなものを書くときにはとりわけ注意しなければいけない点があることを把握して書く必要性が、よくわかりました。

在学生インタビュー【山本千鶴さん UN Womenインターンシップについて】

MIISでは、2学期終了後の夏休みにインターンシップを行い、実績を積む学生が少なくありません。今回は、国連機関「UN Women日本事務所」でインターンをされた山本千鶴さん(翻訳・通訳修士課程2年生)にお話を伺いました。

―夏休み明けのお忙しいなか、ありがとうございます。山本さんは夏休みのあいだ、UN Women日本事務所で3ヶ月間インターンをされていましたが、どんなお仕事をされていらっしゃったのでしょうか。

大きく分けて4つあります。1つ目は企業との関係構築です。女性の活躍を推進している日本企業をリサーチし、絞り込んだのちに、役員の方々とのアポイントメントを取り、企業訪問に同行しました。また、UN Womenの取り組みを知っていただくために、日本語版の簡単な説明資料を作成しました。2つ目はUN Womenの重要な報告書である “Progress of the World’s Women”の日本語版作成です。翻訳会社との調整、および翻訳チェックを担当しました。3つ目はウェブサイトの翻訳です。日本事務所の開設によって、日本語での情報がより求められるようになるため、NY本部の英語のウェブサイトを日本語に翻訳しました。4つ目は開所式の準備です。UN Women日本事務所の開所式を開催するにあたって、招待状の発出および招待客の管理、必要な印刷物の手配、開所式運営のサポート、そして報道発表の準備を行いました。記者会見では、ムランボ=ヌクカUN Women事務局長の通訳を担当する機会にも恵まれました。

IMG_3235―インターンシップでどのような学びがありましたか。

事務所が開設されてから日が浅く、また、少人数の事務所であったために、非常に多くのことを任せていただきました。より多くの方々にUN Womenの活動を知っていただくため、日本事務所長のご指導のもと、政府や民間企業、市民団体、学術界等、様々な方々に働きかけを行いました。特に、新規にコンタクトを取った企業でも快く対応してくださり、あきらめずにやってみることで新たなつながりが結べるのだと実感しました。企業訪問に同行させていただいたことで、民間企業の取り組みや働く女性が置かれている状況を外側から知ることができました。また、事務所の開所式という一度限りの大きなイベントの準備に関わり、NYのUN Women本部や、日本事務所が存在する東京都文京区役所、外務省、イベント関係会社等、様々な方々とやりとりをするなかで、タイムリーなコミュニケーションの大切さを感じました。そして、まったく新しい組織での勤務だったため、情報インフラの整備と、組織の紹介資料等のツールの確保は大変重要であると痛感しました。日本事務所の初期メンバーとして事務所の立ち上げに携われたことは大変幸運だったと思っています。

―MIIS で学んだことがインターンシップでどう活かされたか、お聞かせください。IMG_3237

“Progress of the World’s Women”やその他媒体の翻訳をした際に、読み手にとってわかりやすい文章を作るように心がけました。文字通りの翻訳や意味が伝わるだけのものではなく、読み手がストレスフリーで理解できるように全体の意味を捉えた翻訳に仕上げるよう注力しました。また、開所式の記者会見で通訳をした際は、落ち着いて相手に伝わるような通訳を心がけました。知識を蓄えておくことで少しでも緊張がほぐれるように、事前のリサーチだけでなく、ムランボ=ヌクカUN Women事務局長が日本に到着された際には成田空港までお迎えに同行させていただきました。最後に、これは同時通訳にも関連しますが、マルチタスク、つまり複数の業務を同時遂行するスキルです。開所式が迫っていた時期には、翻訳チェックやその他業務も並行して進めていたため、仕事に優先順位をつけて取り組むことで、全体の進行を遅らせることなく進めることができました。このような素晴らしいインターンの機会を与えてくださり、ご支援くださった関係者の方々に心より感謝しています。