東京オリンピックの通訳現場から 1

皆様こんにちは。MIIS2013年卒(CI専攻)、現在は母校で日英通訳を教えている森千代と申します。今回は東京2020オリンピック競技大会で日本語通訳を担当させていただいた6人のチームメンバーと一緒に、私たちのオリンピック通訳体験談を備忘録、回想録のような形でお届したいと思います。多少長くなるかと思いますがお時間のある方はぜひ参考にしてみてください。

7月23日の開会式を待たずに20日から始まったオリンピック競技。8月6日までの17日間、私たち日本語通訳チームは野球(男子)、ソフトボール(女子)、サッカー(男女)、バスケットボール(男女)、ホッケー(男女)、ハンドボール(男女)の6つの競技に参加した日本代表チームの記者会見で、日英・英日逐次通訳を担当しました。

1)準備

まず準備ですが、各自の通訳シフトが決まった直後から約3週間、各競技のルールや選手について様々な動画素材を用いて、毎日2時間チームで逐次通訳の練習をしました。今回はオリンピック史上初めてMS Teamsで記者会見の会場とつなげて通訳をリモートで行うことになり、いつも本学の授業で使っているZoomとは勝手の違うプラットフォームに慣れるため、毎日の練習もTeamsを使って行いました。

資料としては、競技ごとのルールや団体名などを網羅したワードリスト、各競技に参加する各国の選手・監督・コーチの情報リスト、記者会見に参加する各国の主要メディアのリスト、7人の通訳全員のシフト時間や会場の詳細がわかるマスタースケジュール等を作成して、すべてGoogle Driveでリアルタイムで共有しました。

資料を万全に準備した初回の現場。Photo Credit: Nick Kontje

2)記者会見当日

私たちが担当した記者会見は、数回を除いて殆どが試合後記者会見だったため、質疑応答の内容を正確に訳出するには実際の試合を観る必要がありました。ところが競技によっては日本やアメリカの主要テレビ局で放映されていないものもあり、各自が担当するすべての競技をライブ中継で見ることができるようにチーム内で情報交換し、有料アカウントに申し込むなど複数の方法で競技を開始からすべてライブで観戦できるようにしました。試合が始まるとLINEを使って、どの国でどのチャンネルでライブ中継をしているか情報交換をしました。

試合中は各国代表チームで活躍した選手、試合経過や得点の方法、試合のハイライト場面などを手元で記録したり、各メディアが報道する試合速報や東京オリンピック公式ウェブサイトにリアルタイムでアップデートされる結果の詳細を読みながら、試合を追っていきます。経験を重ねるごとに、試合を観ていると記者会見ではおそらくこんなことが質問されるだろうとか、今日の記者会見に登場するのはこの選手だろうというような予測がつくようになりました。

試合終了15分前くらいには記者会見場にログインして、接続確認や音声チェックをします。その後、各会場のVMM (Venue Media Manager) と呼ばれる担当者にその日の記者会見に登場する代表チームの順番や選手・監督の名前、どの代表チームに対してどの言語通訳が必要になるかなどを確認します。その間も試合の最後の場面や最終結果を見逃さないように、手元の別デバイスで中継を見たり速報を読んだりしました。

試合終了後20分(それ以上のことも多々ありました)ほどで記者会見場に各国代表チームの選手や監督が到着し、記者会見が始まります。オリンピック記者会見の共通言語は基本英語ですが、メディアからの質問が代表チームの言語と異なる場合や、代表チームの回答が英語ではない場合には、チーム言語と英語との両方向をそれぞれの言語の通訳チームが逐次通訳しました。記者会見は短い場合で20分程度、長い場合は50分ほどだったと思います。

メディアからの質問が代表チームの言語と異なる場合や、代表チームの回答が記者会見の共通言語である英語ではない場合などには、リレー通訳をしました。記者会見は短い場合で20分程度、長い場合は50分ほどだったと思います。

通訳に慣れ資料が減った終盤の現場。Photo Credit: Nick Kontje

今回私にオリンピック通訳の依頼、そして通訳の数が足りないのでMIISの学生さんに声をかけてほしいという依頼が舞い込んだのは本番まであと6週間というタイミングでした。そこから急遽帰国を決め、帰国準備、PCR検査、帰国後2週間の自主隔離などバタバタしながらあっという間にオリンピック当日がやってきました。しかし、それよりも、今回のメンバーの中には日中フルタイムで社内通訳やインターンの仕事をし、その後にアメリカ時間の夜中や明け方に記者会見を担当するという、かなりのハードスケジュールをこなしたメンバーもいました。寝不足の続いた17日間だったと思います。本当にお疲れさまでした。

東京2020オリンピックはコロナ禍でのオリンピックということで、初めてリモート通訳を試みた、ある意味で歴史に残るオリンピックとなりました。コロナ禍という苦しい時間を世界中の人たちと共有し、一年間延期の後開催されたオリンピックだったこと、そして自分たちが通訳として各国代表チームの選手たちの声として世界へ向けてメッセージを伝えたことが相まって、かつて感じたことのないような深い感動を覚えた大会でした。選手や監督たちの通訳をしながら心が震え、涙が出そうになるのを必死に我慢しながら訳出したのは、私だけではないはずです。

このような貴重な大会に7人でチームワークを発揮することができたことは、素晴らしい夏の思い出になりました。また、毎日の練習や準備、そしてたくさんの記者会見の現場を通して、これからMIISの名を背負って立つプロ通訳を目指す学生さんたちの底力と可能性を垣間見ることができて、本当に頼もしく感じました。3年後のパリ2024オリンピックでまたチームを組むことができるように、これからも一緒に頑張っていきましょう!

次回は、日本語通訳チームのメンバー6人から寄せられたメッセージをご紹介します。

2020年キャリアフェアを振り返って

皆さん、こんにちは!2年生の奥山裕太です。数週間前に、毎年恒例のTILMキャリアフェアがMonterey Conference Centerで開催されました。

毎年キャリアフェアでは、主に1年生は夏の間のインターンシップを、2年生は卒業後の就職先を探すことが目的となるのですが、それと同時に多くの通訳・翻訳エージェンシーとのネットワーキングも兼ねているイベントです。当日はスーツ姿の学生が片手に履歴書と名刺を持ちながらあわただしく会場を行き来し、様々なブースを訪ねていました。

今年は30社近くの企業や国際機関が参加しています。また、その中でも主に Honda Kaihatsu Americas や Daikin North America が日本語プログラムの学生をリクルートしに参加しました。また今年は日本会議通訳者協会(JACI)も初参加となり、キャリアフェア前日には日本とアメリカの通翻訳市場について貴重なワークショップを開催していただきました(詳しくは前回のブログ記事をご覧ください)。その他にもキャリアフェアでは日本語話者を探しているエージェンシーが多いので非常に有意義な機会となりました。

私自身も昨年はこのキャリアフェアを通してDaikin North America での夏季インターンを経験し、今年は主に国務省やHonda Kaihatsu Americas の方からお話しを聞くことができました。学生の間はやはり学業と就活を両立させることが難しく、こういったキャリアフェアを学校側が主催することで学生が就活をスムーズに進めることができると実感しています。これからもこのキャリアフェアがさらに発展していき、MIISにおいてもっとも貴重なイベントであり続けることを願っております。

JACIワークショップが開催されました!

皆さん、こんにちは!2年生の奥山裕太です。この度2月27日にJACI(日本会議通訳者協会)によるワークショップが開催されました。

MIISにて初めて開催されたJACIワークショップですが、今回は日本とアメリカにおいてどんな通訳・翻訳の場があるのかについて、主催者であるJACIの関根マイクさんや、卒業生の方々からお話しいただきました。社内通訳としての道やフリーランスとしての道、政府関係や製薬業界の仕事など、卒業後には様々な可能性が広がっていることをまさに今活躍している先輩方から学ぶことのできた機会でした。

ワークショップでは、下記の卒業生の方々にご講演いただきました。

-粟屋アンさん

-ウッド佳世さん

-神野裕史さん

-森千代先生

-森田系太郎さん(JACI理事)

皆様お忙しい中ご協力いただき大変ありがとうございました。

米国務省でのご経験をお話しいただいたウッド佳世さん。

また今回は通訳を学ぶ1年生、2年生もワークショップの同時通訳を担当しました。練習を兼ねての同時通訳だったのですが、やはりいざ本番となると、緊張が高まり気が引き締まるため、普段の授業とはまた違った現場の空気を感じることができました。そのため、通翻訳業界についてさらに知識が深まるだけでなく、同時通訳のリアルな場を体験できた一石二鳥なイベントだったのではないかと思います。

この度は、このように貴重な機会をいただき誠にありがとうございました。この場をお借りして、主催者の皆様ならびに卒業生の皆様にお礼申し上げたいと思います。また来年もこのように実りのあるワークショップを開催できることを楽しみにしております。

Fall Forum 2019 を通して

皆さん、こんにちは!2年生の奥山裕太です。先日の11月22日にMIISで毎年恒例の通訳イベント「Fall Forum 2019」が開催されました。今回は Fall Forum についてのブログです!

今年の Fall Forum

今年は、「Off To Work We Go」というテーマのもと、働き方や仕事の在り方について議論が行われました。オープニングセッションの後は、6つのパネルディスカッションに分かれて、「AIと自動化」、「職場における平等」、「ギグエコノミー」、「非公式経済と移住」、「仕事の意義」、「働く場所の変化」というトピックのもと白熱したディスカッションが行われました。 今年の Fall Forum では、日本語、中国語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ロシア語の計6つの言語を含む多言語フォーラムで、通訳を学ぶ2年生が逐次通訳にて英語に訳しました。またオープニングセッションでは基調講演があったため、同時通訳の機会もあり、非常に充実したイベントだったのではないでしょうか。 日本語プログラムからは1年生もスピーカーとして2人参加したことで、日本語でのディスカッションも大いに盛り上がりました。

Fall Forum を終えて

私は今回、オープニングセッションの同時通訳とパネルを2つ通訳するという長丁場だったのですが、その中で沢山のことを学ぶことができました。まず同時通訳から始まったのですが、今回のオープニングセッションの基調講演が中国語でのスピーチだったため、まず中国語プログラムの学生が英語に訳すのを聞いてから英日で通訳するリレー通訳を行う必要がありました。リレー通訳ではいったん中英の通訳を挟むため、やはり普段の同時通訳よりもスピーカーから遅れてしまう懸念があり、いつも以上に言葉数を減らし、なるべくコンパクトに情報を伝える必要がありました。しかし自分でもなかなか訳出をコンパクトにできない場面があり、これからも表現力を増やしていかなければならないなと再確認できました。パネルディスカッションの逐次通訳では、他の言語プログラムの学生たちの通訳を聞くことができ、フィラーや言い換えがなく非常にスムーズな訳出に驚かされ、元のスピーチは理解できなくても、英訳を聞けば非常に分かりやすく、聞いていて心地よい訳出に感動しました。

同時通訳でも逐次通訳でも、自分はまだフィラーが入ってしまったり、言葉選びや表現に悩んでデリバリーがスムーズでないことがあるので、他の学生のようにスムーズな訳出を目指したいと思ったフォールフォーラムでした。

Fall Forum 2019 が開催されます!

11月22日にMIISで毎年恒例の通訳イベント「Fall Forum 2019」が開催されます。

今年は、「Off To Work We Go(七人の小人にちなんで)」というテーマのもと、働き方や仕事の在り方が今後どう変わるかを考察していきます。まずはゲストスピーカーによる基調講演から始まり、その後は6つのパネルに分かれてディスカッションを行います。

各パネルは以下のとおりとなります。

・AIと自動化(Artificial intelligence and automation of work)

・職場における平等(Equality in the working environment)

・ギグエコノミー(Gig economy)

・非公式経済と移住(Informal economy and migration)

・仕事の意義(Purpose of work)

・働く場所の変化(Evolution of where we work)

また Fall Forum は、通訳を学ぶ2年生が英語への逐次通訳を実践的に行える貴重な機会でもあります。今年は、中国語、フランス語、ドイツ語、日本語、ロシア語、スペイン語の6ヵ国語で通訳が提供されるのですが、日本語プログラムからは2年生が1人、通訳者として参加します。また1年生からも2名スピーカーとして参加します。

年1回のイベントであるFall Forum、テーマは仕事の未来となりますが、その中でも特にAIと自動化と聞くと通翻訳に携わる皆さまにとっては大きな関心があるトピックかと思われます。また現学生による通訳を見ることのできるまたとないイベントです。イベントの最後にはレセプションもありますので、お時間空いておりましたら、ぜひご参加ください。お待ちしております!

活躍するMIIS卒業生

今回は、MIIS卒業生が紹介されたブログや記事などをいくつかシェアします。

★まずは、今年度卒業したエリカ・エグナーさんについての記事です。エグナーさんはJETプログラム(The Japan Exchange and Teaching Programme)を経て、MIISで翻訳通訳、ローカリゼーション管理を学ばれました。(リンク先記事は英語です。)

http://sites.miis.edu/…/wisconsin-tokyo-kumamoto-monterey-…/

★同じく、今回卒業されたチェルシー・イナバさんについての記事です。イナバさんも本学で翻訳通訳、ローカリゼーション管理を学ばれました。

★次は、2017年の卒業生、土居可弥さん(翻訳通訳専攻)のインタビューです!土居さんは現在、テスラ・ギガファクトリーのパナソニックで翻訳・通訳のお仕事をされています。

日本語版: http://jp.vo1ss.com/2019/05/19/kaya-doi/
English Ver.: http://en.vo1ss.com/2019/05/19/kaya-doi/

★そして、通訳翻訳ジャーナル』最新号にMIIS卒業生の森田系太郎さん(会議通訳専攻)と加藤智子さん(翻訳通訳専攻)のインタビュー記事が載りました。MIISでの留学生活についての対談です。ぜひご覧ください!

★5月の米大統領夫妻の来日で通訳を担当されたのは、MIIS卒業生のレフテリ・カファトさん(大統領通訳)とウッド佳世さん(メラニア夫人通訳)です。下記に朝日新聞デジタルのリンクを載せていますので、ご覧ください。素晴らしいご活躍ですね!

https://www.asahi.com/articles/ASM5S4H7TM5SUTIL01F.html

2019年春休み 東アジアにおける外交政策・通商・安全保障 東京研修(後編)

みなさんこんにちは。

日本語プログラム翻訳通訳専攻2年生の福谷昌子です。

今回は、前回に続いて、春休み期間中の東アジア研究の授業の一環として行われた東京への研修旅行の2日目から最終日までについてお伝えします。

前回の記事はこちらからどうぞ。

2日目(3月18日):通訳①

この日のスケジュールは次の通り。

防衛省・防衛研究所にて英語での意見交換会・質疑応答。テーマは「日本をめぐる安全保障環境」

国会議事堂見学後、元参議院議員の方との懇談会・質疑応答

経済産業省にて英語での講演・質疑応答。テーマは「多国間貿易」

私たちが通訳を担当したのは、国会での懇談会でした。各自のリサーチテーマを元に貿易や北朝鮮の核ミサイル問題などについて様々な質問が投げかけられ、その質問と答えを逐次通訳しました。中国語通訳の学生がタイムキーパーとして助けてくれる中、日本語通訳2名で15分交代で通訳を行い、通訳メンバーの中で良いチームワークを持ってスムーズに進めることができました。

国会議事堂前にて

3日目(3月19日):通訳②

都内学術機関にて個人インタビュー

政策研究大学院大学にて英語での講演・質疑応答。テーマは「日本の国家安全保障政策と課題」

外務省にて英語での講演・質疑応答

この日は、午前中に2名の学生による個人インタビューに同行して通訳をしました。インタビューのお相手は日本の移民政策に詳しい大学教授の方で、日本における外国人労働者の状況について質問がされました。ここでは、時間の節約と円滑なインタビューを目的として、インタビュアーの学生1名につき通訳1名が隣に座って日→英はウィスパリング、英→日は逐次で通訳を行いました。

4日目:移動日

学生各自、中国・北京へ移動

日本語通訳は東京に残り、そのままモントレーに戻りました。

まとめ

以上、研修旅行についての詳細をお伝えしました。

ふだんは入ることのできない政府機関を訪問して幅広い分野についてのお話を伺い、なによりそれを通訳させていただく機会をいただき、大変光栄であり貴重な経験でした。

通訳・翻訳の授業と同時並行でリーディングの課題が多い*GSIPM(国際政策管理大学院)の授業を受けるというのはMIISで過ごす2年間で初めての経験でしたが、非常に学びが多く、また他プログラムの学生と知り合うことのできるとても良い機会となりました。

個人的には、7年ぶりに日本の春を感じることができ、とても充実した春休みとなりました。

この場をお借りして、引率してくださった赤羽恒雄先生、Wei Liang先生、東アジア研究に合わせて授業教材を選んでくださった通訳科の先生方、そしてこの研修を可能にしてくださったすべての方々に感謝申し上げます。

MIISのホームページで公開されている記事もよろしければ合わせてお読みください。

https://www.middlebury.edu/institute/news/students-conduct-field-research-east-asia-during-spring-break (英語)

*GSIPM: MIISには、大学院が2つあり、TILMはGSTILE(翻訳通訳言語教育大学院)に属しています。GSTILEでは通訳、翻訳、TESOL(外国語話者を対象とする英語教育)のプログラム、GSIPMには核非拡散、環境保護、国際教育管理などのプログラムがあります。

2019年春休み 東アジアにおける外交政策・通商・安全保障 東京研修(前編)

みなさんこんにちは。

日本語プログラム翻訳通訳専攻2年生の福谷昌子です。

先日Facebookページでもお知らせした通り、先月の春休み期間中、東アジア研究の授業の一環として行われた東京への研修旅行に日本語プログラムの2年生が2名、通訳者として同行しました。

今回と次回のブログ記事では、その時の様子についてじっくりお話させていただきます!

東アジア研究とは

MIISでは、「東アジアにおける外交政策・通商・安全保障(Foreign Policy, Trade and Security in East Asia)」という授業がプログラムをまたいで隔年オファーされており、春休みには授業の一環として東京と北京への研修旅行があります。

学生たちは、研修旅行前に各自研究テーマを設定し、授業内外でのリサーチや現地でのリサーチ・インタビューを通してレポートの材料集めをしたのち、学期末には研究レポートを提出します。

研修では、各都市の政府機関や大学機関へ訪問し、代表の方による講演を聞かせていただいたり、各学生が研究テーマを元に質問する質疑応答の時間をいただいたりします。

今年の東京研修には、翻訳通訳科および翻訳科から、日本語プログラムの2年生が2名、通訳者として同行しました。

準備

2月に春学期が始まってから春休みまでの7週間は、他の授業と同様、週1回の授業がありました。日本語・中国語プログラムから各2名、通訳として同行することが決まっていた学生も、通訳準備の一環としてこの授業を聴講しました。

私たち翻訳通訳科の学生が普段受けている授業では、通訳者・翻訳者としての実践的なスキルを身につけるため、皆が同じ資料を読むのではなく、翻訳課題や次の授業で練習する通訳のトピックについて各自でリサーチを行い、必要なリソースを見つけ、その翻訳に必要な知識を得るために勉強したり、適切な訳を探すために用語を調べたりするのが一般的です。

それとは打って変わって、この東アジア研究の授業では、毎回授業前に読むリーディングの課題があり、授業の前半ではリーディングの内容に沿った教授の講義、後半ではその週のディスカッションリーダーを任された学生を中心にディスカッションが行われるという授業構成になっていました。

扱う分野は、「東アジアにおける外交政策・通商・安全保障」という授業名からもご想像いただける通り広範で、主に日本、中国、韓国、ロシア、アメリカ間の関係を、外交、貿易、安全保障の角度から勉強しました。

乗り継ぎ地の台湾で観光した時のようす

日程

3月16日   移動日(モントレーから東京)

17日〜19日 東京研修

20日     移動日(東京から北京)

21日〜23日 北京研修

24日     移動日(北京からモントレー)

研修には教授2名の引率のもと学生24名(うち通訳4名)が参加し、日本語通訳は東京研修のみ同行しました。ここでは東京研修に焦点を当てて紹介していきます。

1日目(3月17日):観光日

午前中に靖国神社の遊就館を見学後、午後は銀座観光。

そのあと浜離宮庭園からフェリーに乗って隅田川を渡り、浅草観光をして1日を終えました。

靖国神社

今回は、主に研修旅行の準備段階についてお話しました。

次回からは早速、通訳を行なった経験について詳しくお伝えしていこうと思います。

ぜひチェックしてみてくださいね!

インターンシップについて【福谷昌子 ホンダR&Dアメリカ(Honda R&D Americas)(2)】

みなさんこんにちは。

日本語プログラム翻訳通訳専攻(T&I)2年生の福谷昌子です。

前回からお伝えしている、2018年夏のオハイオ州にあるホンダR&Dアメリカでのサマーインターンシップについての後半記事です。前半はこちらからどうぞ。

インターンシップならではの学び

MIISの同時通訳の授業では、1人の人が話し続ける講演や、2人〜4人によるパネルディスカッションのビデオを流して練習をします。日英・英日同時通訳の場合、通訳者1人が連続して通訳できるのは15分〜20分と言われています。同時通訳の授業が始まるのは2学期からで、私は2学期の終わり時点で8分程度の同時通訳しか経験がありませんでした。

研究所では、1つの会議につく通訳は基本的に1人です。最初の1週間は先輩通訳の皆さんのお仕事を見学させていただき、2週目からは本格的に通訳の実践に入りました。最初は1時間ほどの会議でも先輩通訳の方とペアになり、交代しながら慣れていきました。ブースに入って日本語から英語、または英語から日本語の一方向に講演の内容を通訳するふだんの授業や練習とは違い、会議では会話が中心なので、1回の会議で日英・英日の切り替えを何度もするのが新鮮でした。また、授業ではいつも1人でブースに入っていたので、タイミングを読んでペアの通訳さんと交代する練習ができたことも実践にかなった経験でした。

研究所で一番おどろいたことの一つが、エンジニアの皆さんが通訳を介したコミュニケーションにとても慣れているということです。研究開発とひとくちに言っても、車一台の設計となると車体からエンジン、電気系など、分野はさまざま。研究所の中でいくつもの室課に分かれてたくさんのエンジニアの方々が作業しています。そのため、一日のうちに行われる会議数も膨大でした。その会議のうち、日本人が出席する会議や日本とのテレビ会議など、通訳が必要になるものは、ほぼすべて言語サービス室課から通訳が送られます。日本人駐在員と働く機会の多いエンジニアの方々は、通訳がしやすいように話すペースを考えてくださったり、必要に応じて重要な点を繰り返したりしてくださり、とても通訳のしやすい雰囲気を作ってくださいました。

また、毎日通訳が研究所内を動き回っているような現場なので、通訳翻訳がしやすい環境もしっかりと整っていました。事前の資料提供に関しては、できるだけ事前準備ができるように会議担当者の方と直接話したりメールを飛ばしたりすることが言語サービス室課内で推奨されていました。そのため、実際に会議担当者のデスクまで行って資料提供をお願いしたりすることもあり、事前準備やクライアントとのコミュニケーションの大切さも身をもって学ぶことができました。わからないことの多いインターンの私に、いやな顔ひとつせず指導してくれる先輩方や資料提供に応じてくれるエンジニアの方々に恵まれていたことをとてもありがたく感じました。会議中にわからない専門用語があると、会議終了後、気さくに質問に答えてくださるエンジニアの方も多く、自動車に関するバックグラウンドがまったくなかった私でも勉強しやすく、学んだことをすぐに生かしていける環境でした。

ホンダジェットと(ホンダ・ヘリテージ・センターにて)

MIISだからこそできたインターンシップ

先にも書いた通り、このインターンシップは2018年の3月に開催されたMIIS TILMキャリアフェアを通じて採用していただきました。ホンダR&Dアメリカでは、中西部の地域を中心に、工学系の学部がある様々な大学からエンジニアのインターン生を採用していますが、言語サービス室課に関しては、毎年サマーインターンの採用のためにわざわざカリフォルニア州まで足を伸ばしてMIISのTILMキャリアフェアに来てくださっています。研究所のほぼ全室課に対して通訳サービスを提供する言語サービス室課では、会議の分野ごとに少しずつ異なる膨大な量の専門用語をいち早く覚え、臨機応変にエンジニア間のコミュニケーションをサポートするのに十分な通訳訓練経験が求められているためです。このようなMIISの学生の質への信頼を築き上げたのは、紛れもなく歴代サマーインターンを経験されてきた先輩方であり、卒業後ホンダR&Dアメリカに就職して活躍されてきた卒業生の方々です。私がインターンをした時点ではMIIS出身の先輩通訳の方が2人いらっしゃいましたが、お二方ともに室課のみなさんから信頼され、通訳チーム全体を率いる存在でした。MIISだからこそ経験できた、とても充実した3ヶ月となりました。

これから

サマーインターンでの大きな学びのひとつは、どんな分野であれ、飛び込んでみなければどんな景色が待っているかわからないということです。インターン前は、車に関する知識も皆無に等しく、自分から興味をもったことのある分野でもなかったため、3ヶ月通訳としてやっていけるのか不安で仕方ないというのが正直なところでした。しかし、素晴らしい先輩通訳の方々やエンジニアの方々とお仕事をさせていただく中で、それまでまったく知らなかった自動車業界の面白さを垣間見ることができました。

私はいよいよ5月にはMIISを卒業し、社会に飛び込んでいくことになります。まだ進路は模索中ですが、先入観や苦手意識などにとらわれずに選択していきたいと思います。

インターンシップについて【福谷昌子 ホンダR&Dアメリカ(Honda R&D Americas)(1)】

みなさんこんにちは。現在日本語プログラム翻訳通訳専攻(T&I)2年生の福谷昌子です。今回は、2学期終了後の夏休みに、オハイオ州レイモンドのホンダR&Dアメリカでインターンシップをさせていただいた経験についてお話ししたいと思います。

学生アソシエイト通訳として採用されるまでの流れ

毎年春学期、MIISではTILM(翻訳通訳ローカリゼーション管理)プログラムの学生を対象としたキャリアフェアが開催されます。ホンダR&Dアメリカの方も、2018年3月に行われたキャリアフェアに日英社内通訳のインターンを採用しにいらっしゃっていました。そこで履歴書を担当の方にお渡しし、フェア後にインターン希望者と担当者で懇談の形をとって面接よりもカジュアルな雰囲気でお話をし、後日ホンダの人事部と言語サービス室課の方々と電話面接を行いました。1週間ほどで採用通知をいただき、オハイオでのサマーインターンシップが決まりました。

学生アソシエイトとは

この開発研究所で働かれている方々は、主に日本人駐在員、現地採用の正社員(アソシエイト)、派遣社員に分かれています。私は学生アソシエイトとして採用していただき、正社員が出席する会議やイベントにも参加させていただく機会がありました。

インターンシップの終わりには、3ヶ月間でどんな業務を体験したかや、その経験を通して学んだことなどをマネージャーの前で発表する場があり、エンジニアとして働いていた他の学生アソシエイトの皆さんのインターンシップ内容も知ることができました。

言語サービス室課の一日

言語サービス室課は、その名の通り、通訳翻訳の言語サービスを他の各室課に提供しています。翻訳のみ担当の方もいらっしゃいますが、ほとんどは主に通訳として一日に複数の会議に参加し、空いている時間に会議で使われる資料の翻訳をしていました。

日本とのテレビ会議も多く、時差を考慮した上で最も合理的な早朝(日本の夕方)と夜(日本の早朝)に会議を設定するのが一般的でした。私はお昼頃から夜の会議までを担当する遅番だったので、朝は比較的ゆっくり出勤し、午後から一日2〜3件、多いときは4件の会議の通訳を行いました。通訳は原則同時通訳で、ブースではなく持ち運び可能な同時通訳機器で行いました。

研究所の近くにあるホンダ・ヘリテージ・センター

読んでいただきありがとうございました。次回はこのインターンシップを通して得た学びについてお話します!