世界知的所有権機関 夏期フェローシップ(その2)

Filed under: Internships,Professional Development — Chiyo Benjamin at 3:55 pm on Tuesday, November 6, 2012

みなさんこんにちは。今回は、前回の私のワイポでの翻訳フェローシップに関する投稿の続編ということで、フェロー翻訳者の仕事の内容についてもう少し詳しくお話します。

 

私たちフェローのオフィスはリバイザーのオフィスと同じフロアーにあり、翻訳ドラフトを一本仕上げるたびに細かくフィードバックをもらい、修正点が多い場合は二度目のドラフトを提出します。初めのうちは時間をかけてきちんと下調べをし、リサーチ能力を身につけるように指導されます。2ヶ月近く経つと翻訳はすべて採点され、一本ずつ合格、不合格が決定されます。毎回翻訳のクラスの期末試験を受けているような感じでしょうか。

採点はエラーごとに、その重度によって減点数が決まります。ミーニングエラー、読解エラー、リサーチ不足による訳語エラーなどは重度です。特許翻訳では分野ごとの用語特異性が非常に高いので、一般的な辞書の訳語、オンライン辞書やコーパスに載っている訳語をそのまま使ってしまうと訳語エラーになってしまいます。私の場合は英語が第二言語なので、特許翻訳に特有の冠詞の使い方(文法ミス)に非常に苦労しました。冠詞ミスは、読解ミスなどのいわゆる重度エラーに比べ小さな減点だったようです。

 

私が一番気をつけていたのは、一度リバイザーに注意された点や、フィードバックをもらった事項はすべてノートに書き留めて、同じミスは繰り返さないようにしたことでした。リバイザーは、私たちフェローが3ヶ月という短期間のトレーニング中に、今後、委託翻訳者として自力で仕事をこなす力を身につける能力があるかどうかを見ていますので、素直にフィードバックを受け入れ、吸収し、次の翻訳に適用する能力があることを証明しなければなりません。翻訳能力だけでなく、知らない分野や専門用語を的確に調べるリサーチ能力、またリサーチを短時間でこなし、ノルマをクリアする仕事の効率性も評価されます。

このように書くとワイポでの仕事は大変なように思えてしまうかもしれませんが、知的探究心の強い方、難解なパズルが解けるまで根気よく取り組むのが好きな方には本当に面白い仕事だと思います。用語や文法にこだわりを持ち、最適な表現を見つけ出すのが好きな方にもうってつけだと思います。どのリバイザーも辞書が好き、調べ物が好き、自分の知らないことは知りたい、わかりたい、というタイプの翻訳者さんばかりでした。日々取り組む様々な特許や科学的事象の仕組みを、少しずつ調べながらひも解いていく面白味は何にも代え難いものがあります。

 

私にとってジュネーブでの仕事の最大のボーナスは、フランス、イタリア、ドイツ、リヒテンシュタイン、オーストリアと隣接しているスイスという土地柄、週末を使って気軽にヨーロッパ各地を旅することが出来たことでした。ヨーロッバは電車、バス路線、高速道路などが整備されているので、短時間でどこへでも行けます!夏の間のヨーロッパ旅行についてはまたいつかの機会に!

 



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