英語のグローバル化と翻訳

Filed under: 翻訳・通訳・ローカリゼーション管理 — Lexi Whitmore at 10:47 am on Monday, December 3, 2012

翻訳のオーディエンスがターゲット言語のネイティブスピーカーだという思い込みは多くの人が持っているといえます。MIISに入学する前、自分自身もそう思っていました。私はアメリカ生まれで英語のネイティブですが、以前、日英翻訳の仕事をしたときは、アメリカ人が読むだろうと考えながら訳しました。しかし、MIISの先生方やベテラン翻訳者のお話を伺い、今の時代、日英翻訳は必ずしも英語ネイティブだけを対象にしているわけではなく、世界中の英語話者を対象にする場合もあると分かりました。つまり、英語のグローバル化が翻訳に影響を及ぼす時代が来たということです。このグローバル化について、ちょっと考察したいと思います。

現在、英語はアメリカ、イギリス、オーストラリアなど以外にも、ほかの国々で使われていますが、実際に英語話者は何人ぐらいいるのでしょうか。スウェーデンのNationalencyklopedinが2010年に行った調査によりますと、英語ネイティブは3.6億人、英語を第二言語として習得したのは3.75億人、外国語として習得したのは7.5億人です。すべてを足せば約15億人になり、世界中の人々の6分の1以上が英語話者だということになります。要するに、英語は既にリンガ・フランカになったのです。これが翻訳にどのような影響を及ぼすかというと、ネイティブとネイティブではない英語話者、両方が理解できるような訳を提供しなければいけない依頼がこれから増加するでしょう。

実際にそうなれば、いくつか問題が起きるかもしれません。まず、このような依頼を受けたとき、抵抗を感じる英語ネイティブもいるのではないかと思います。日英翻訳者になる人は、ある程度自分の母語、あるいは第二言語に愛着を持っていることが多いでしょう。したがって訳文をわかりやすくするために、時々表現力の豊かさと正しさを犠牲にせざるを得ないことは好ましくない、と思うかもしれません。その一方、翻訳者の任務は簡単に言えばソース言語がわからない人にターゲット言語でメッセージを伝えることですので、翻訳を利用する人が理解できなければ、翻訳者の努力が無意味になり、クライアントは満足しないという考え方もあります。どんな意見を持っていても、英語のグローバル化はこれからますます進むかもしれませんので、日英翻訳者の仕事にどのような変化をもたらすか、引き続き見ていく必要があるでしょう。



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