トドとラッコと自転車

Filed under: Life in Monterey,MIISについて — Chiyo Benjamin at 9:00 pm on Thursday, October 6, 2011

初めまして。T&I一年の森千代と申します。私は日本の大学を卒業してから、ゴールドコースト、ブリスベン、ホノルル、バンクーバーと太平洋湾岸を点々と移動しながらWWFのボランティア翻訳の仕事を続けています。また留学と仕事の合間にピースボートに乗船し、通訳として地球を2周しました。専門は社会言語学で、MIISに来るまで10年近くアカデミックイングリッシュやTOEFLを指導してきましたが、せっかく美しいモントレー、今回は言語学のお話ではなくて、外に出てモントレー湾に生息するすばらしい野生動物たちに会いに行きましょう! 私が初めてモントレーという地名を知ったのは、実家の近くにある葛西水族館で「モントレー湾ジャイアント・ケルプの海」という展示をみた時でした。葛西水族館は、海洋生物学の研究施設としても有名なモントレー水族館の姉妹水族館で、展示の工夫や研究などを共同で行っています。憧れのモントレー水族館を見に来たのは今から5年前。まさか今年から水族館から歩いて5分の場所に暮らすことになるとは思っていませんでした。 朝起きてアパートのダイニングルームから静かな湾の朝焼けに見とれていると、広い空を飛ぶ水鳥、水面を跳ね回るイルカが見えます。海沿いの遊歩道を自転車で行くと、すぐそこにペリカン、アザラシ、ラッコがいます! そんな瞬間は野生動物好きにはまさに天国。うっかり学校へ行くのを忘れてしまいそうになります。 モントレー湾は、広大な水域を誇る国立海洋公園の一部で、小さなものはラッコから、大きなものはシロナガスクジラまで、30種以上の海洋性ほ乳類を観察することができます。また水鳥はペリカンなどおよそ95種。あまりに気軽に野生動物が見れるので、散歩しているだけで、まるで巨大な水族館の展示のなかにいるような錯覚を起こします。 まずなんと言っても興奮するのはラッコ!体長約1.2メートル、体重は25キロから35キロくらいになります。小学校高学年の子供くらいでしょうか?抱いたら意外と大きくて重そうですね。 低温の水中で体温を保つために、ほ乳類のなかで最も分厚い毛皮をきているラッコ。二重構造になっている毛皮は、1平方インチに約100万本の毛が生えています。ちなみに人間の頭髪は多い人でも10万本。ラッコはこの密度の高い毛と毛の間に気泡をためて、体温を暖かく保つことができます。 つやつやで暖かい毛皮を保つためには、こまめな毛繕いの他に、大量に食事をすることが不可欠。体温を保つために自分の体重の4分の1に相当する量の食事をします。これは体重が60キロの人だったら、毎日15キロ以上の食物(ご飯一膳分が約150グラムなので、一日100膳!)を食べている計算になります。ラッコの食事はカニ、ウニ、ムール貝などのグルメなメニュー。海底に潜って採ってきてから、水面に戻ってお腹をテーブルにして食べる姿はかわいすぎて、もうなんと言ったらいいかわかりません。実はラッコの前足には小さなポケットがついていて、貝類などをそのポケットにしまっておけるので、一度の潜水でたくさん集めることができるのです。あー、かわいいぃ! かつてはメキシコからカナダ、果ては日本の沿岸まで生息していたラッコ。しかし1800年代に乱獲されほぼ絶滅寸前。カリフォルニア近海でも一時約50頭まで激減してしまいました。現在はおよそ2000頭いると推測されていますが、周辺でオイルタンカー事故が起きたら一気に全滅する可能性があるとされています。 さて、お次はトド。実は私は、彼らがトドなのか、アザラシなのか、アシカなのか、オットセイなのか、彼らの何が違うのか、あるいは各種混ざって集合しているのかよくわかっていないないのですが、夜街が静かになると聞こえてくる海の大合唱。はじめは何事かと思ってうちの猫といっしょにどきどきしていましたが、大きな犬が吠えているような特徴的な吠え声はかなり遠くまで届き、モントレーならではの風物詩と言えるでしょう。気持ち良さそうに薄目(時々片目!)をあけて頭だけだして水につかっている姿は、まさに温泉につかる禿げたヒゲおじさん。どこなく懐かしいような、、、。 トドは時々こちらに向かって手を振っているように見えますが、このジェスチャーは、実は前足で太陽の熱を吸収し、低温の水中で体温を保つためにしています。食事のメニューは魚のほかに、イカやタコが好きで、成体は体長2.5メートル、体重はメスで100キロ、オスは350キロ近くにもなります。 近くにいくと圧倒的な威圧感。一度ナミビアで小さなボートに乗っていたときにトドがひなたぼっこをしにボートに乗り込んできた事があって一瞬凍りつきましたが、その後は気持ち良さそうに目をつぶってひたすらじーっと座っていた(寝てた?)ので、結局抱きついていっしょに写真をとりました。ぬれているときはゴムのようにつるつるに見える毛皮ですが、乾いてくると細い毛がかなりの密度で分厚い脂肪の層の上に生えている事がわかります。ちなみに、モントレーで見かけるアザラシは背中に斑点模様のあるゴマフアザラシのようです。あぁ、ここはゴマちゃんの楽園。 そして忘れてはならないのがカマイルカ。モントレー湾のなかを縦横無尽に飛び跳ねています。カマイルカは何千頭もの群れを作って泳ぎ、病気やけがをした個体がいるとお互いに世話をします。このような大きな群れを作って行動しているため、非常に発達したコミュニケーション能力を持ち、個体認識のためになんと一頭づつそれぞれ違う口笛を吹きます!まだ幼いイルカは、ヒレを使って近くを泳ぐ大人のイルカとコミュニケーションをとります。 モントレーにはまだまだこの他にも野生動物たちがたくさん!そんな生き物たちを眺めながら自転車で海沿いをのんびり行けば、忙しいスケジュールの疲れもストレスも一気に吹き飛ばしてくれます!そんな大自然に囲まれたモントレーを一度見に来てくださいね。 (文責:森千代)

« Previous Page