2013年 キャリアフェア

Filed under: MIISについて,Professional Development,翻訳・通訳・ローカリゼーション管理 — Satoko Kanamori at 11:51 pm on Wednesday, March 20, 2013

2013年3月8日にモントレー国際大学院でキャリアフェアが行なわれました。大学院の近くにあるポルトラホテルの会議場で開かれ、100社の企業・国際機関等が参加しました。CIAからeBay、多くの翻訳会社などがブースを設置し、お話を伺う機会が与えられました。キャリアフェアの2週間ほど前から、学校でこのイベントのためのセミナーが多くあり、履歴書・面接対策セミナーなどに参加することができます。セミナーでは、就職アドバイザーからどの企業に回ればいいかなどの助言を得たり、他の生徒と面接の練習をしたりと内容は様々です。 キャリアフェア当日は、スーツ姿の生徒が履歴書を片手にぞろぞろとホテルに向かいます。アメリカは日本と比べると堅苦しくない部分が多いとは言え、日本語翻訳・通訳科の生徒の場合、アメリカに拠点のある日本企業の人と会うことが多いので、日本式の就職活動にも似ているところはあります。 1年生は、インターンシップに申し込む時期なので、キャリアフェアの週に開かれる企業のプレゼンテーションに参加します。キャリアフェア当日は、自分の決めた企業のブースを回り、履歴書・名刺を渡して自己紹介し、仕事内容などの説明を受け、質問などをします。その場で企業側が翌日に面接をしたいと希望することもあります。2年生も同じようなことをするのですが、インターンシップよりも主に卒業後の就職活動をする機会として活用します。 日本語翻訳・通訳科のインターンシップ・就職先は翻訳会社を除くとそこまで多くはないのですが、今回は、5つの企業が積極的に日本語プログラムの生徒をリクルートしていました。特許や自動車からゴルフまでと仕事内容も様々ですし、インターシップの場合は、夏休み中に翻訳か通訳、どちらを集中してやりたいのかを決めなくてはいけません。 また、キャリアフェアにおいて重要なのが、下調べです。どの企業がどのような生徒を採用したいのかを調べ、それが自分、そして自分のやりたいことと一致しているのかを見極めるのは、非常に大切です。様々な企業が参加するため、キャリアフェアはモントレー国際大学院が企画する極めて有意義なイベントの一つです。

東京裁判に関する講演の逐次通訳

Filed under: Professional Development,T&I Student Life,翻訳・通訳・ローカリゼーション管理 — Shinichiro Tanaka at 9:32 pm on Sunday, February 24, 2013

先週の予告通り、今回のブログは講演の逐次通訳について書きたいと思います。 2月22日、武田珂代子先生による東京裁判に関する講演の逐次通訳を同級生と担当させていただきました。内容は武田先生のご著書『東京裁判における通訳』に沿ったもので、中でも通訳の三層構造にフォーカスが当てられました。ご著書自体が非常に面白かったので、内容を楽しみながら準備をすることができました。東京裁判では、日本人、日系人、白人といった異なるグループの人々が、通訳、通訳を監視するモニター、言語の専門家全体を統括する言語裁定官として、通訳作業をそれぞれ担当していました。これには社会的、文化的背景が絡んでおり、敗戦国の日本人に頼ることを避けるため、アメリカ国民の白人が、たとえ日本語がおぼつかなくても言語裁定官として居なくてはならなかったといった点など、非常に興味深い話が書かれていますので、通訳を目指している方や、東京裁判についてご興味のある方は、ぜひ武田先生のご著書をお読みください。 今回は事前にパワーポイント資料をいただくこともでき、十分に準備することができたので、当日はそれなりにスムーズに通訳をさせていただくことができました。いただいたフィードバックは好意的で、大変嬉しく思いましたが、一年生なので少し手加減していただいたのかなと思います。それでも、個人的にはとりあえず出来るだけのことはしたと手応えを感じています。ご著書も何度も日本語と英語で読みましたし、東京裁判に関する動画などを見たりもしました。パワーポイント資料のサイトラも何回かして、自分だけでもプレゼンできるようにしました。やってみてわかったことは、他の授業の予習や復習ももっとやれることがあるはずだという点です。ただ、健康などを害してしまうと元も子もないので、程よいバランスを見出していきたいです。 今日は先生方並びに先輩方がいらっしゃっていたため、通訳を判断していただくという点では、素晴らしいオーディエンスの方々に恵まれました。一応大学時代も人前で通訳する機会はあったので、緊張しすぎることはなかったのですが、人に伝えるという意識をしっかり持つ余裕がもう少しあればよかったなと思います。観客を見るということや、落ち着いてフィラーなどをなくすということに意識を向けることができたらと思います。しかし、普段小さなクラスで通訳をするのと比べ、より大きなオーディエンスに向けて話す場合は視線のあり方や声の張り方などが違うということを改めて実感できたのは良かったです。クラス内の仲間内で練習するだけですと、何のために通訳をするのかという意識がでてこないので、こういう機会があるというのは素晴らしいことだと思います。 今回の企画を可能にしてくださった武田先生ならびにMIISの先生方、先輩方、同級生に改めて感謝の意を述べたいと思います。みなさま、本当にありがとうございました。 ちなみに、講演の当日、MIISの図書館で行われているブックセールが全品無料になりました。通訳者、翻訳者の勉強は永遠に終わりません。これだけ本が手に入ると嬉しいですね。

一年生の逐次通訳実践〜武田珂代子先生による講演会を控えて

Filed under: MIISについて,Professional Development,T&I Student Life — Celine Browning at 10:36 pm on Sunday, February 17, 2013

春まだ浅いこのごろですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。 さて、前回は二学期についての記事でしたが、今回は来週予定されている武田珂代子先生の講演会について書きたいと思います。 まずは、武田先生の簡単なご紹介です。武田先生は現在、立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科教授としてご活躍されています。先生のご専門は、通訳翻訳研究で、ご自身は本学の通訳・翻訳学科を卒業されています。1994年から本学で教鞭をとられ、その間、本学教員でもいらっしゃるアンソニー・ピム教授の下、スペインのロビラ・イ・ビリジリ大学で博士号を習得されました。 さて、このたびのご講演は、武田先生の博士論文のテーマでもありました「東京裁判における通訳」についてです。今回はなんと私たち一年生に通訳の機会が巡ってきました。一年生がこのような講演の逐次通訳を本学で行うのは初めてのことです。これまで二回ほど二年生の先輩方の逐次通訳を見る機会がありました。その二年生の前や先生方の前で通訳に挑戦するのは、いくら私たちが将来プロを目指しているといえども、かなりの緊張を強いられるものです。 来週に向け、通訳担当者の私たちは様々な準備をしています。例えば、武田先生についてのリサーチは言うまでもありません。先生についてのご紹介などのとき、知識不足で正確な訳ができなくては話になりません。次に,英語と日本語で先生の著書を読むことも必須です。これは、先生が使われる東京裁判関連の用語を両言語で把握しておくためです。これらの単語をまとめた用語集も作成します。さらに、インターネットなどで調べられる範囲で東京裁判や通訳、そのほか関連性のある内容にも一通り目をとおしておきます。 先生のご講演は来週の金曜日です。ですので、次回のブログはもう一人の通訳を担当する一年生の事後発表になるかと思います。私たちはまだ経験の浅い一年生ではありますが、またとない機会をいただいた以上、恥をかかないよう頑張りたいと思います。 では、次回をお楽しみに…

フォール・フォーラム

Filed under: MIISについて,Professional Development — Celine Browning at 12:12 am on Tuesday, November 20, 2012

皆様、秋も深まり冬が近づきつつありますが、いかがお過ごしでしょうか?ここモントレー国際大学院では、先日フォール・フォーラムというイベントが開催されました。 フォール・フォーラムとは、主に通訳・翻訳課程の2年生が中心となって行うパネルディスカッションです。しかし、一般的なパネルディスカッションとはやはり少し違います。なぜなら、本学の学生が7言語で話される内容を英語に逐次通訳するという一面があるからです。この機会を通して1年生や学外の人が本学の通訳・翻訳課程の内容や質の高さを知ることができ、2年生は卒業してプロになる前の本格的な実績を積むことができます。本学の通訳・翻訳学科以外の学生も通訳がどのように異文化間コミュニケーションを可能にするのかがわかります。この催しは普段あまり関わりを持たない学科間の交流の場にもなります。 今回のフォーラムのテーマはスポーツでした。健康、経済、文化、ジェンダーなどの様々な観点からスポーツが論じられました。三つのパネルディスカッションがあり、テーマは次の通りでした。 1.Sports and Health: Run for Your Life! 2.Sports and Money: A Zero Sum Game? 3.Sports and Culture: Must have Balls to Play? スピーカーにはもちろん通訳・翻訳学科の学生もいますが、スペイン出身の元アスリートの地質学者や、本学科のセネガル出身の教授、MBA課程の学生、ロシア出身のフリーランス翻訳者、国際環境政策学科のセネガル出身の学生(フランス語)、さらには中国出身の国防総省語学研修所(DLI)の教授などが参加されました。 たとえば二つ目のパネルでは、中国語>英語>スペイン語>英語>ドイツ語>英語>中国語の通訳が行なわれました。まず、モデレーターの中国語の質問を中国語科の学生が英訳します。それにスペイン語のスピーカーが答え、スペイン語科の学生が英訳します。さらにドイツ語の質問が続き、それがまた英訳され、最後には中国語のスピーカーが回答するといった具合です。 このフォーラムを通じて最も目についたことは翻訳・通訳学科での各言語ごとのスタイルの違いです。たとえば、日本語のスピーカーや通訳者の場合はやはり、動作や話し方の格調の高さに、特に注意が払われます。逆にスペイン語の場合は、スピーカーの話す速度がとても速く、カジュアルに感じます。手の動きも話者、通訳者の両者ともに惜しみなく導入し、話者の話し方を再現する通訳者もいました。ロシア語の場合は静かで落ち着きがあり、身振り手振りもありませんでした。とてもプロ意識の高い学科だと実感しました。中国語は本学で最も学生数の多い分野ですが、内容、話し方ともにとても質が高いものでした。 一つ気づいた重要な点は、通訳者が笑顔で話すと気分良く聞くことができるということです。 アイコンタクトについても、常にではなくてもある程度の間を置いて客席を見ることにより、聞いている側は親近感を覚えます。もう一つ重要な点は、通訳者が適切な訳語を考え出せない時でも、わからない事を声や態度で示さず、堂々といかにも自信のあるように話せば聴衆の信頼を損なわないという事です。同じように、たとえば通訳者が服をいじったりペンを回したりすると、聞いている側は不安を覚えてしまいます。このような多言語の通訳を見ることにより、様々な真似るべき点、注意すべき点を再認識することができました。 このように本学では1年を通して逐次、同時通訳の本格的な実践を積む様々な機会があります。春学期にはTEDxトークというイベントがあるので、報告をどうぞお楽しみに。

サンディエゴATA会議で得たもの

Filed under: Professional Development — Satoko Kanamori at 11:12 pm on Monday, November 12, 2012

10月24日から27日まで翻訳・通訳科の一年生はサンディエゴで開催されたATA(American Translators Association, アメリカ翻訳者協会)の会議に参加しました。 まず、ATAは翻訳者だけではなく通訳者も登録できる、アメリカをベースにした団体です。プロの翻訳・通訳者の支援のため、新しい人材を育てるため、そしてさらに翻訳・通訳の仕事を推進するのが目的です。ATAは年に一度、毎年違う都市で会議を開きます。プロの翻訳・通訳者(大勢のMIISの卒業生)に出会える良い機会でもあり、分野ごとのプレゼンテーションを見て、学び、そして翻訳・通訳者とだけではなく、様々な関連企業とネットワーク作りもできます。 ATAは様々な言語部門に分かれているので、Japanese Language Division(日本語部会)のセミナーに出席したり、一般的な翻訳・通訳に関するセミナーにも参加したりすることができます。今年の一年生は5人しかいないので、興味のある分野に分かれて別々のセミナーに出席し、後から主な内容をお互いに説明するという方法で分担しました。 私が特に興味深いと思ったセミナーは、デポジションのチェッカー通訳者の役割、英日同時通訳時の予測方法、翻訳・通訳業界においての知識とマナーなどでした。 最初はあまり興味がないと思っていた分野でもセミナーに参加し、その分野に詳しい人と話すことで興味が湧き、新しい発見につながりました。また、現役の翻訳・通訳者に会うことで、たくさんの刺激を受けることができ、やはりこの業界で働きたい、キャリアを積みたいと改めて思いました。 サンディエゴでのATA会議は、セミナーに参加するだけではなく、これからどのように翻訳・通訳者としての道を切り開くのかということを考えさせてくれる場でもありました。私の将来のビジョン作りにも大きな影響を与え、有意義な時間を過ごすことができました。

世界知的所有権機関 夏期フェローシップ(その2)

Filed under: Internships,Professional Development — Chiyo Benjamin at 3:55 pm on Tuesday, November 6, 2012

みなさんこんにちは。今回は、前回の私のワイポでの翻訳フェローシップに関する投稿の続編ということで、フェロー翻訳者の仕事の内容についてもう少し詳しくお話します。   私たちフェローのオフィスはリバイザーのオフィスと同じフロアーにあり、翻訳ドラフトを一本仕上げるたびに細かくフィードバックをもらい、修正点が多い場合は二度目のドラフトを提出します。初めのうちは時間をかけてきちんと下調べをし、リサーチ能力を身につけるように指導されます。2ヶ月近く経つと翻訳はすべて採点され、一本ずつ合格、不合格が決定されます。毎回翻訳のクラスの期末試験を受けているような感じでしょうか。 採点はエラーごとに、その重度によって減点数が決まります。ミーニングエラー、読解エラー、リサーチ不足による訳語エラーなどは重度です。特許翻訳では分野ごとの用語特異性が非常に高いので、一般的な辞書の訳語、オンライン辞書やコーパスに載っている訳語をそのまま使ってしまうと訳語エラーになってしまいます。私の場合は英語が第二言語なので、特許翻訳に特有の冠詞の使い方(文法ミス)に非常に苦労しました。冠詞ミスは、読解ミスなどのいわゆる重度エラーに比べ小さな減点だったようです。   私が一番気をつけていたのは、一度リバイザーに注意された点や、フィードバックをもらった事項はすべてノートに書き留めて、同じミスは繰り返さないようにしたことでした。リバイザーは、私たちフェローが3ヶ月という短期間のトレーニング中に、今後、委託翻訳者として自力で仕事をこなす力を身につける能力があるかどうかを見ていますので、素直にフィードバックを受け入れ、吸収し、次の翻訳に適用する能力があることを証明しなければなりません。翻訳能力だけでなく、知らない分野や専門用語を的確に調べるリサーチ能力、またリサーチを短時間でこなし、ノルマをクリアする仕事の効率性も評価されます。 このように書くとワイポでの仕事は大変なように思えてしまうかもしれませんが、知的探究心の強い方、難解なパズルが解けるまで根気よく取り組むのが好きな方には本当に面白い仕事だと思います。用語や文法にこだわりを持ち、最適な表現を見つけ出すのが好きな方にもうってつけだと思います。どのリバイザーも辞書が好き、調べ物が好き、自分の知らないことは知りたい、わかりたい、というタイプの翻訳者さんばかりでした。日々取り組む様々な特許や科学的事象の仕組みを、少しずつ調べながらひも解いていく面白味は何にも代え難いものがあります。   私にとってジュネーブでの仕事の最大のボーナスは、フランス、イタリア、ドイツ、リヒテンシュタイン、オーストリアと隣接しているスイスという土地柄、週末を使って気軽にヨーロッパ各地を旅することが出来たことでした。ヨーロッバは電車、バス路線、高速道路などが整備されているので、短時間でどこへでも行けます!夏の間のヨーロッパ旅行についてはまたいつかの機会に!  

世界知的所有権機関 夏期フェローシップ

Filed under: Internships,Professional Development — Chiyo Benjamin at 3:04 pm on Wednesday, October 3, 2012

皆さんこんにちは。会議通訳専攻2年の千代です。モントレー国際大学院では新学期が始まってはや6週間が経過し、T&I日本語学科の学生は日々忙しく勉強や練習に励んでいます。今日は私が夏の間3ヶ月フェロー翻訳者として働いていた世界知的所有権機関(WIPO、以下ワイポ)での特許翻訳フェローシップの仕事についてご紹介したいと思います。 これはワイポのホームページからの抜粋ですが、ワイポは、スイスのジュネーブに本部を置く国連の専門機関で、1970年に設立されました。WIPOは、加盟国が知的財産権の保護を目的とした規則や実務を制定・調整するためのフォーラムとしての役割を果たしています。多くの先進国では何世紀も前から知的財産を保護する制度がありますが、その一方で、新興国および発展途上国では、現在、特許や商標、著作権の法制度・体制を構築する過程にあります。   ワイポには世界中から国際特許申請書類が送付されてくるわけですが、外国語で書かれた申請書類のうち、特許内容の要約(abstract)の部分は全てまず英語へ、その後フランス語へ翻訳されます。また特許申請をする前に、各国の特許庁が各申請内容を過去に特許を受けている発明と照らし合わせて、新規性(novelty)、進歩性(inventive step)、産業上の利用可能性(industrial applicability)を有しているかを審査し、その結果を報告書(report)にまとめるのですが、この報告書の内容も英語に翻訳されます。つまり、ワイポの日英翻訳者はこの要約と報告書を日本語から英語に翻訳するのが主な仕事です。   ワイポのフェローシップに応募するためには、まず翻訳試験を受け、試験に合格すると個人面接があります。一旦フェローシップが決定したら、夏休みの最初から最後まで3ヶ月間まるまるジュネーブに滞在しフルタイムで仕事をします。私の場合、面接の結果が出発の2−3週間前までわからなかったので、正直ドキドキしました。もしワイポがだめだったら夏の間どうしよう、という不安もありましたが、どうしてもワイポで仕事をしたかったので、他のインターンシップをいろいろ探さず、祈るような気持ちで結果を待ちました。   5月の頭にようやくOKの返事が来て、その3週間後には人生初めてのスイス、ジュネーブへ向かう飛行機に乗りました。サンフランシスコで飛行機に搭乗したとたんに発熱し、そのまま2週間近くひどい気管支炎をわずらい、しかも住む部屋が見つからず3週間ホテルを点々としながらの通勤など、落ち着くまでの最初の一ヶ月は大変でした。何よりも感謝だったのは、クラスメートのリンと一緒に採用されたことです。彼と相談しながらいろいろ決めることができたのは非常に大きな支えでした。ワイポにはMIIS出身の翻訳者さんがたくさんいますが、それでも最初の1ヶ月は、一人きりでは絶対に乗り越えられなかったと思います。 ワイポでのインハウス翻訳の最大のメリットとしては、一日8時間集中して机に向かったあとは、夕刻から解放され、週末も締め切りに追われることなく完全に自由という点でした。ジュネーブにある国連機関のインターンはほとんど無給の場合が多いようですが、ワイポの仕事は給与、保険、交通費ともに破格の待遇です。まずは翻訳試験にチャレンジしてみるといいと思います!   それでは次回はワイポでの具体的な翻訳やトレーニングの内容についてご紹介しますのでお楽しみに!  

O Canada! Eh?

Filed under: Professional Development — Chiyo Benjamin at 3:43 pm on Monday, May 14, 2012

皆さんこんにちは。今回で私のブログも今年度最後となりました。今までハワイ、カリフォルニア、日本の通訳資格等について書いてきたので、今回は私がモントレーに来るまで住んでいたカナダの資格試験について少しご紹介したいと思います。   まず、カナダの西海岸に位置するブリティッシュ・コロンビア州について少しご紹介します。ブリティッシュ・コロンビア州は山、川、海の大自然に囲まれた緑豊かなところで、最大の街は最近冬期オリンピックが開催されたバンクーバーです。バンクーバーは人口の約7割が英語を第二言語として話すといわれ、街で会う人の多くが英語のノンネイティブ・スピーカーです。北米大陸西海岸の都市のなかでも特に国際色豊かな街で、世界トップクラスのスキーリゾート、ウィスラーのあるところ、といえばすぐにわかる方もいるかもしれません。州都ビクトリアは、バンクーバーからフェリーで1時間ちょっとのところに浮かぶバンクーバー島の南端にあり、こじんまりとした英国風の美しい街並みが印象的です。パシフィック・グローブやペブル・ビーチの落ち着いた雰囲気によく似ています。バンクーバー島は一年を通してカナダで最も温暖な気候と、中央部にある世界的に有名なブッチャート・ガーデン、北部の手つかずの大自然で知られています。   カナダはアメリカに比べて就労ビザが取得しやすく、ワーキングホリデービザの他、学生ビザで留学している配偶者がいれば無制限で仕事ができ、カナダの大学(特に博士号など専門技術や知識、資格を持っている場合)には、ケースにもよりますが早い場合は申請後半年位で永住権がとれる場合もあります。ですから、卒業後の仕事を探している方(そしてアウトドアが何より好き!という方)はアメリカだけに限らず、カナダも視野に入れてみてはいかがでしょうか。   さてカナダ、あるいはブリティッシュ・コロンビア州で通訳、翻訳の仕事をするにはどんな資格が必要か調べてみると、カナダ全国の翻訳者、通訳者、ターミノロジストからなるCTTIC (Canadian Translators, Terminologists and Interpreters Council)、そしてそのブリティッシュ・コロンビア州の支部であるSTIBC (Society of Translators and Interpreters of British Columbia)が実施している資格試験が中心になっているようです。   まずSTIBCの法廷通訳資格試験は毎年2月に行われ、団体に加盟しているメンバーで、カナダ国内の裁判所でプロとして2年以上経験がある人に受験資格が与えられます。試験の形式は、筆記試験と口頭試験に分かれており、筆記試験に合格した場合のみ口頭試験に進むことができます。筆記試験には法律関係の文書の翻訳技術、専門用語の知識、法律に関する知識、そして倫理の4つの分野が含まれます。口頭試験はサイトと逐次を両方向へ、同通は英日で行われます。筆記試験、口頭試験ともに全てのセクションを最低70パーセント以上で通過しなければなりません。   次はカナダ全国レベルの資格試験ですが、これはSTIBCなど全国の地方支部ですでにメンバーになっているプロの翻訳者、通訳者対象にCTTICが実施する試験です。CTTICも筆記試験と口頭試験に分かれていますが、筆記試験を受けるには4年以上フルタイムのプロ翻訳者+倫理試験に合格している、あるいは、言語学、翻訳、通訳の学位をすでに取得している+1年以上フルタイムの翻訳者であることなどが受験の際の条件になります。1年間の仕事量の具体的な目安としては英語の場合11万ワード、日本語なら3万ワードを翻訳していることが条件だそうです。私も早速これまでの仕事をカウントしてみようと思いますが、MIISで学生をしながらこれだけのノルマをクリアするのはなかなか難しいと思います。   CTTICが実施している試験は翻訳、会議通訳、法廷通訳、ターミノロジストに分かれています。それぞれの試験の詳細については団体ホームページにてご確認下さい。この団体のメンバーになるには資格試験を受けて会員登録をする他に、仕事を探す目的で試験は受けずに会費だけを払ってアソシエートメンバーとして団体を利用している人もいるようです。これはアメリカのATA (American Translators Association)と似たようなシステムになっており、ATAは学生の場合だと80ドルの会費を払うと様々なキャリア情報にアクセスすることができます。こちらも詳しくはATAのホームページをご覧下さい。   MIISを卒業後、どこかの会社の専属翻訳者や通訳者になる場合をのぞいて、フリーランスで働いて行こうと思ったら、自分の腕一本で小さな会社経営をしているのと同じことです。CTTICやATAのようなプロの翻訳者、通訳者から構成される団体の会員登録をしてキャリアを積み上げて行くことが大切になってくるそうです。またこのような資格試験に合格していることは、自分の実力を客観的に示す目安として役に立つばかりでなく、巷に溢れる翻訳者・通訳者との「差別化」にもなるのではないでしょうか。ただでさえ忙しいMIISの勉強の合間にどうやってこのような資格試験勉強の時間と体力をひねりだすか、まずそこが一番のチャレンジになりそうですが、努力の積み重ねがいつかきっと実を結ぶ時が来ると信じてがんばりましょう!