Summer Internship

Filed under: MIISについて,T&I Student Life,翻訳・通訳・ローカリゼーション管理 — Keitaro Morita at 10:55 pm on Monday, April 2, 2012

インターンシップ――1年生と2年生の間にある約3カ月の夏休みはこれに始まりこれに終わると言われます。1年次に身に付けた通訳・翻訳のスキルを実際の職場環境で試し、同時にそれを通じてさらにスキルを伸ばせる、という弁証法的な機会になっています。 モントレー国際大学院(MIIS)へ進学をお考えの皆さんは学業のみならずインターンシップにも興味をお持ちだと側聞しています。ですので、今回のブログではこのインターンシップについて書いてみたいと思います。 と言ったものの、森田はAdvanced Entryという制度を使って2年次から学業を始めたため夏休みのインターンシップを経験していません。そこで実際にインターンシップを経験した敬愛するクラスメート・津崎由佳子さんにお願いをし、インターンシップの現場についてインタビュー形式で答えてもらいました。以下、その一問一答です。 ―本日は貴重なお時間をありがとうございます。2011年の夏休みにスタンフォード大学病院でインターンシップをされたそうですが、まずはなぜインターンシップをしようと思ったのか教えていただけますか。 「アメリカで一定期間にわたって働いた経験がなかったので、卒業後にプロの通訳者・翻訳者として仕事をしていく際の第一歩になればと思って応募しました。またアメリカの職場においてコミュニケーションがどのように行われているのかは学校では学ぶことができません。現場を知る、という意味でも応募しました。同時に、英語力にさらに磨きをかけたいというのも理由の1つでした。」 ―なるほど。ではなぜスタンフォード大学病院を選んだのでしょうか。 「1つ目の理由は通訳のインターンシップができるためです。翻訳のインターンシップとは異なり、現状では通訳のインターンシップの数は限られています。2つ目の理由は国境なき医師団に関わっていたこともあって医療の現場に興味を持っていたからです。そして3つ目の理由は卒業された先輩から勧められたためです。」 ―選考過程について教えてください。 「2月中旬に履歴書、志望動機書、推薦状の3点を提出しました。2月末のMIISのキャリアフェアには毎年スタンフォード大学病院も参加していますが、その日の夕方に説明会があり、翌日に面接を受けました。その後、数週間で合格のお返事をいただきました。」 ―では同病院のインターンシップの制度の詳細を教えていただけますか。 「スタンフォード大学病院のインターンシップは4本の柱で成り立っています。全体オリエンテーションを受けた後、①シャドーイング ②通訳 ③翻訳 ④自主研究 に取り組みます。①のシャドーイングとは、通訳の練習方法としてのシャドーイング(テキストを見ずに流れてくる音声を聞きながら影のように後についてその音声を声に出す)のことではなく、〈影のように他の通訳者について回る〉ことを指します。他の通訳者に同行することで様々な現場を体験することができます。これは②の通訳の段階に入る前の事前準備としても行われます。②の通訳については、まず〈1人立ち〉する前に経験者による指導が行われます。通訳経験が豊富なスタッフがインターン生に同行し、通訳の進め方を医師にどのように説明するのか、患者が肌をさらす場面で通訳者はどのように振る舞うのか、などを教授します。また必要な場合にはフィードバックや修正が入ったりします。その後に〈1人立ち〉して通訳業務を行うことになります。③の翻訳についても実際に翻訳を行い、それに対して経験者からのチェックが入ります。④の自主研究は、その日や翌日の業務に関連した事項を大学図書館などを利用して自主的に学習することを指します。単語力や背景知識の強化が目的です。」 ―インターンシップはどのような感じでしたか。 「インターンシップを修了するためには22日間で192時間の業務をこなす必要があります。インターンシップでは給与と食事クーポンが支給されます。実際に日本人の患者さんを通訳する機会は2~3回程度でしたが、授業とは全く異なる現場において初めて通訳を体験することで自分のスキルが役立つことを実感し、やりがいを感じると同時に自信をつけることもできました。病院という特殊な場所の実情を知り、限られた時間の中での効率的な仕事の進め方を学び、加えて医療や製薬という通訳ニーズの高い分野の知識を得ることで将来に役立つスキルを獲得することができました。さらには人間として成長する機会にもなったと思います。」 ―では最後に後輩の皆さんにスタンフォード大学病院のインターンシップを勧めて(笑)ください。 「絶対にお勧めです。通訳経験がそれほど積めない、という理由で敬遠する学生もいると聞きます。しかし上述のような事柄を体験できるのみならず、MIISの卒業生が多く勤務しているのでネットワークづくりにもなりますし、MIISを卒業すればプロとしてあれだけの仕事ができるんだ、と実感することにもつながります。私自身も大変刺激を受け『もっと勉強しなくては』という気にさせられました。通訳の最中にクライアントの反応を直に目にすることができることも醍醐味です。さらには英語ネイティブではないインターン生にとっては英語力をさらに高める機会にもなります。目先のことを考えるのではなく、キャリアという大きな視点からみれば得るものは大きい、と言い切ることができます。」 ―ありがとうございました。 ところでその津崎さんからお知らせがあります。前回の森田のブログでも言及したTEDxが4月13日(金)9:00~16:00[注:カリフォルニア時間(太平洋標準時)]にMIISのあるモントレーにやってきます(http://www.tedxmonterey.org/about/)。テーマは“Sea Change”。このテーマをめぐって海と深い繋がりを持つ多様なプレゼンターたち(http://www.tedxmonterey.org/presenters/)がスピーチを行います。ウェブサイトには次のようにあります。 “TEDxMonterey ‘Sea Change’ will explore our diverse human connections with the land and the sea in order to inspire innovative conservation measures, dynamic discussions, and heightened awareness.” (TEDxモントレーのテーマは「海変」。革新性のある保全策や活発な議論、意識の高揚を目指し、人間と陸・海との多様な関係性を模索します。[森田試訳]) 津崎さんはこのTEDxMontereyの通訳責任者を務められています(http://www.tedxmonterey.org/the-sea-change-team/;下の方に津崎さんの写真あり)。そして津崎さんを中心に日本語プログラム・会議通訳専攻の学生4人(森田もその1人)がセッション2、セッション3で通訳を行うことになりました。そしてその通訳はインターネットを通じて世界中に配信されます(http://www.tedxmonterey.org/livestream/;通訳を聞くには一番下までスクロールダウン)。時間は現地時間でセッション2が13:00~14:30、セッション3が15:00~16:30の予定です(尚、時間が変更になる場合がありますのでお聞きになる前に再度ウェブサイトをご確認ください)。 最後に津崎さんからのメッセージです。「時差などで難しい方もいらっしゃるかも知れませんが、ぜひ私たちの通訳を聞いていただければ幸いです。」

法廷通訳への道

Filed under: T&I Student Life,翻訳・通訳・ローカリゼーション管理 — Chiyo Benjamin at 10:42 am on Tuesday, March 27, 2012

皆さんこんにちは。今回はホノルル市内のハワイ州最高裁判所で行われた、法廷通訳のワークショップについてご紹介したいと思います。これはハワイ州内8島にある裁判所で法廷通訳をする通訳者が全員参加義務のあるワークショップで、一年に一度だけ3月に開講されます。朝7時半集合で、夕方の5時まで裁判所内の一室に缶詰で行われ、ハワイ州の裁判所システムの仕組みから、法廷通訳の就業倫理、責任、役割等について学びます。その後通訳について背景知識のない人にために、同時通訳、逐次通訳、サイトトランスレーションについての説明と、言語ごとのグループに分かれてロールプレイも行われました。ロールプレイでは裁判中に起こりうる様々な状況にプロとしてどのように対処すべきかを練習し、フィードバックをもらいました。 参加者の言語は、スペイン語、中国語、ベトナム語、日本語、ロシア語、ドイツ語、タガログ語、イロカノ語の他、マーシャル語やチューク語の話者もいました。インストラクターはハワイ大学の翻訳・通訳センターで法廷通訳のクラスを教えている教授、カピオラニカレッジで手話 (American Sign Language) の法廷通訳と医療通訳のクラスを指導している先生、そして州裁判所で実際に通訳コーディネーターをしている方の3人でした。 ここでいう法廷通訳とは、英語を母語としない被告の人権と知る権利を守るために州裁判所に雇われる通訳者のことです。法廷通訳が他の通訳と違うのは、話者のフィラー(well, let me see, um…など)、感情やトーンを、可能な限り全て忠実に再現する点だそうです。例えば被告が証言台に立って発言するときに、記憶が曖昧など様々な理由で迷いながら発言したり、内容を変えて言い直したりしたものは、全て通訳で再現して、法廷の公式な記録に残す必要があるからです。ただ、被告の感情につられて泣いたり怒ったり、大げさなジェスチャーを繰り返す必要はありません。今学期、同時通訳のクラスでスピーカのフィラーや無駄な繰り返しを省いてまとめ、聞きやすい訳を出すということを習いましたが、法廷通訳では通訳者が訳した言葉の文字通り「全て」が被告の証言として記録に残るため、通訳者は言葉こそ違うものの、話者になりきってなるべく忠実に発言を再現するという作業をしなければならないのです。通訳者は被告の発言の内容はもちろん、感情を声のトーンで表現する他、法廷で使われる様々なレジスターも勝手に変更することはできません。被告の罵り言葉も、判事の読み上げる判決文も、話者による原文のレジスターを正確に反映して通訳することが重要だそうです。通訳中は被告、判事、弁護士、証人の言葉を再現する者として全てFirst person “I”で訳しますが、通訳者が自分のアイデンティティーに戻って話をする場合は混乱を避けるため”I”ではなくて、” The interpreter” と言うことで聞き手のため、また公式の記録上も区別する必要があることも学びました。 またこのワークショップでは言語そのもののテクニックだけでなく、プロとして通訳者がすべきこと、避けるべきことも細かく指導されました。通訳中に誰かの声が小さすぎて聞こえないときどうするか、クライアントである被告が「私はどう答えればいいですか?」と頼ってきたらどうするか、どういう状況下で同通と逐次通訳を切り替えるか、陪審員との関わり方、被告と知り合いだった場合どうするか、弁護士や判事に「○○を被告に説明してください」と言われたらどうするか、審議前に過去の裁判記録や資料をどこで入手するか、どのタイミングで検察側に事前に調書に目を通させてもらえるように頼むか、通訳ミスに気がついたときにどうやって審議の流れを中断せずに訂正するか、通訳としてメディアや陪審員からの質問へどう対応するか等々かなり具体的かつ実践的なスキルを学びました。 3人のインストラクターが何度も念を入れていて印象的だったのが、法廷内での携帯電話の使用についてでした。最近携帯電話はオンライン辞書を使うなど様々な目的で使われますが、いかなる目的であっても、携帯を触っているだけで判事、弁護士、Bailiff(廷吏)など法廷内にいる関係者にかなり悪い印象を与えるので、通訳任務についている間は携帯の電源は切り、絶対にかばんから出さない、あるいは始めから法廷にもちこまないように、と言われました。現役の法廷通訳をしているインストラクターは、法廷内で携帯を取り出すだけでも関係者に不快感を与え、プロとしての意識が低いと思われ次回から依頼が来なくなるのを避けるため、法廷には辞書のみを持ち込み、パソコンと携帯は持ち込まないそうです。ちなみに、場所にもよると思いますが、ハワイ州の最高裁判所では法廷の見学をする際も、殆どの場合パソコン、携帯、カメラ、ビデオ、ボイスレコーダーの持ち込み禁止、飲食はもちろん口の中のガムも禁止、居眠りも厳禁だそうです。基本的に持ち込んでいいのはノートとペンだけ、と言っていました。 ハワイ州の法廷通訳になるにはまず米国での労働資格があり、犯罪歴チェックを通過することが必要です。一年に二度行われる筆記試験に合格してから一年に一度の口頭試験を受験し、どちらも合格すると試験の結果によってレベル別に分けされます。ハワイ州の日本語法廷通訳には2ランクありますが、これによって時給が決まります。その後現役の通訳者の仕事を見学し、実際の仕事に望みます。経験が浅いうちは、信用できる通訳者がどうかを確認するため、法廷で学歴や職歴について判事や弁護士に公式に諮問されることもあり、それらの質問にきちんと答え法廷通訳として能力があることを示さなければいけないそうです。ちなみに連邦政府の法廷通訳資格試験は現在スペイン語とナバホ語のみだそうですが、こちらの口頭試験の合格率は8パーセント以下という難関だそうです。 今回のワークショップはかなり情報量が多く大変でしたが、非常に実りの多い素晴らしい学びでした。これから更に気を引き締めてモントレーで修行を積んで行こう、と改めて思いました。とこのワークショップの参加を快く承諾してくださった先生方、本当にありがとうございました。  

One Week Diary of a 2nd-Year Conference Interpretation Student

Filed under: Life in Monterey,T&I Student Life,翻訳・通訳・ローカリゼーション管理 — Keitaro Morita at 8:12 pm on Saturday, March 10, 2012

過酷で寝る暇もないのか、試験だらけで常にプレッシャーを感じているのか、それとも意外に楽なのか……私はモントレー国際大学院(MIIS)に来る前に、日本語プログラムの学生がどんな1週間を過ごしているのか気になって仕方がありませんでした。 残念ながらそれを知る術がないままMIISの学業を始めたのですが、知っていればもう少し楽に学業に軟着陸soft landingできたのでは、と振り返って思います。潜在的な後輩のみなさんにはそんな経験はして欲しくない、という思いから、今回は2年次で会議通訳コースを専攻する森田がこの春学期にどんな1週間を送っているのかご紹介したいと思います。 まずは月曜日。新たな1週間はこの最もハードな日から始まります。10:00~11:50は英日の逐次通訳。続けて12:00~13:50は日英の逐次通訳。両クラスともにスピーチを2分ほどに区切り、そこで当てられた学生が取ったノートをみながら逐次通訳を披露します。その後、パフォーマンスに対して教授およびクラスメートからのコメントが飛び交います。トピックは秋学期が経済・金融、そしてこの春学期は技術と政治。毎回、いつ当てられるか分からない緊張感で教室が満たされますが、貴重なコメントは自分の通訳力を伸ばすよいきっかけとなります。「プロとしてお金をもらうようになったら誰も注意してくれず知らぬ間にクビになるだけ」。このフレーズは日本語プログラムでよく耳にする金言です。 14:00~15:50は週2回ある日英の翻訳の授業です。教室が離れているため、前の授業が終わると駆け足で2ブロック離れた建物へ移動。MIISは教室が1つのビルにまとまっているのではなく、3つのストリートを跨ってこぢんまりとした建物・教室が点在しているのです。急ぐあまり交差点でまで行かずにjaywalkする学生もいますが、取り締まりがあることもあるので要注意。 火曜日の授業は10:00~11:50の英日の同時通訳のみ。トピックやその日の体調によってうまくいったりいかなかったりします。ですので、背景知識と体調管理は通訳者には欠かせません。通訳者がアスリートに例えられることが多いのもこの辺りから来ているのでしょう。ガラガラ声の通訳なんて聞きたくないですもんね。またフリーランス通訳者が体調を崩した場合、代わりはおらず、穴を開けたら次回から仕事が来なくなり、死活問題にもつながります。 火曜日の授業終了後はクラスメートと「サイトラ」の練習をしています。「サイトラ」と聞いて動物の「サイ」と「虎」を思い浮かべた、という笑い話がありますが、「サイトラ」は「サイトトランスレーションsight translation」の略語。最新号の『The Economist』などから記事を1つ選び出し、大体4~6段落を2分間で速読します。その後、〈「最初はグー、じゃんけんぽん」で勝った人〉(これがMIISの伝統になっています)が半分に当たる2~3段落を目で追いながら前から訳出していきます。前から訳していくため同時通訳の訓練になるとともに、最新の経済動向を把握し、また簡潔で無駄のない上質の英語に触れるよい機会となります。訳出が終わったらもう1人がそれについてコメントし、その後、役割を交代します。 水曜日の授業は14:00~15:50の日英の翻訳の授業だけなので、朝はゆっくりできます。大抵は授業の予習、たまっているEメールや新聞の処理で終わってしまいます。授業ではまず課題が配布されます。そして制限時間内に学生が翻訳に取り組み、ネット経由で披露された翻訳を教授が評価し、またクラスメートがコメントします。1人で取り組みがちな翻訳の作業に〈他者の目〉を入れることができるので、自分の翻訳を異なる視点から見つめ直し、またクラスメートの訳出と比較することのできる又とない機会です。英語のネイティブ話者ではない私にとって、この授業は英語力アップにも直結しています。 授業後はクラスメートと1時間ほど逐次通訳の練習。練習場所は食堂が併設されているSamson Student Center(写真参照)。練習の内容は授業の予習か試験準備が中心で、英日なのか日英なのかはその日に決めています。1人でもできる作業かも知れませんが、友人との共同作業で学ぶことは多く、また彼/女からもらうコメントは有難いものばかり。「翻訳通訳学部の授業を1人で乗り越えるのは難しい」と最初のオリエンテーションで釘を刺されましたが、まさに的を射ていました。時に厳しいコメントをもらうこともありますが、「学び合う姿勢」、これが学業を乗り越えるコツの1つです。   木曜日は授業がないので、クラスメート3人とそれぞれ1時間ずつ午後に練習しています。この日は日英のサイトラ、そして英日・日英の逐次通訳を練習しました。逐次の練習教材としてはYouTubeやTEDxの映像を使って行います。特に、ボランティアの手による日本語翻訳プロジェクトが進行中のTEDxの動画には世界を賑わせている「有名人」が登場し、専門とする分野の最新動向をプレゼンしてくれるため、練習ツールとして手放しがたいものになっています。 そしてやっと金曜日。月曜と同様、金曜日にも3つの授業があります。1つ目は朝8時にスタートするTranslation & Interpretation as a Profession。現在進行形の授業なのですが、これまで学んだ内容としては「フリーの翻訳者・通訳者になった際の仕事の請け負い方、見積もりの方法」「顧客関係の構築方法」などが挙げられます。実務に即した形で授業内容が構成されています。 2時限目は日英の同時通訳の授業。ブースに入り、日本語の音声を聞きながら英語に通訳していきます。またウィスパリング通訳やビデオ通訳、機器を使った通訳など、実際の現場を想定した訓練も行われます。訓練はすべて、卒業時点で完成されたプロの卵になっていることを目指して行われます。 ランチブレークをはさんで1週間最後の授業は14:00~15:50のInterpretation Practicum。この授業は会議通訳を専攻する各言語プログラム(日本語・韓国語・中国語・ドイツ語・フランス語・スペイン語・ロシア語)の仲間が一堂に会し、実践経験が豊富な2人の優れた教授陣を中心にプロの通訳者としての育成が行われます。実際の通訳の手法のみならず、3言語以上の通訳が発生するリレー通訳の方法、また通訳があるイベントをどう組織するのかということまで学びます。毎週、Practicumの学生のうち2人がCI(Chief Interpreter;通訳責任者)となり、その週に開かれるイベント・授業に通訳者を割り当てて通訳を組織化するとともに、会場や機器の手配など事前・当日の準備に従事します。前回のブログ(http://sites.miis.edu/tijapanese/2012/02/17/fall-forum-2011/)でお伝えしたFall ForumもPracticumの学生が組織運営したものです。このPracticumの授業は基本的に会議通訳コースの学生しか受講することができません。このブログを読んでPracticumに興味を持たれた方はぜひ会議通訳コースへ! そして週末の土日は学会で通訳のボランティアをしたりPracticumの一部としてイベントで通訳演習を行ったりすることもありますが、原則はお休み。大抵は課題や次週の授業の予習、また日本から持ってきている翻訳の仕事に追われて終わってしまいますが、友人と食事をしたり、ジムで汗を流したり、テニスをしてストレスを発散したりすることもあります。うまく気分転換をし、心と体のバランスを取ることができることも学業を乗り切る1つの秘訣です。 と、このようなスケジュールの繰り返しで学期の約15週間が過ぎていきます。 ここまで読んでいただいた皆さんはMIISの学業の様子を垣間見ることができたと思いますが、いかがでしたでしょうか。これを読んで同大学院への関心がさらに高まっていれば、と思います。

モルダウ捜査官とヨロヨロハイヒール

Filed under: T&I Student Life,翻訳・通訳・ローカリゼーション管理 — Chiyo Benjamin at 6:28 pm on Saturday, March 3, 2012

会場の片隅で薄汚い灰色のパンプスからシャープな黒のハイヒールに履き替えていざ出陣。目はFBIブースに釘付け、しかし果たして転ばずにあそこまで行けるだろうか、、。   モントレー大学院では毎年春に就職フェアが開催されます。このフェアでは、キャンパスからほど近いホテルのイベントホールを借り切って、MIISの学生専用の就職活動の場が提供されます。これはもちろん5月に卒業を控えた二年生の就活の場になるだけでなく、私たち一年生にとっても夏のインターンシップを探したり、フリーランスの仕事のきっかけ作りや登録をしたり、就職先の目安をつけたりと、とても意義深いイベントです。 2月24日に行われた今年のフェアの参加企業は翻訳・通訳・ローカライゼーション関係だけでも47団体、そのうち日本語関連の仕事のオファーがある団体が30以上。主な参加企業は、ホンダ、スタンフォード大学病院、国連の知的財産管理団体であるWIPO (World Intellectual Property Organization) の他、Apple、Facebook、FBI、CIA、楽天、そして多数の翻訳・通訳のエージェントが来ていました。朝9時の開会から参加企業の代表の方たちに履歴書を渡したり、仕事の内容を詳しく聞いたりしているうちに、あっという間に閉会の時間になってしまいました。 その後カリフォルニア州裁判所の法廷通訳試験の説明会、授業二つ、プレゼン発表、授業の後更にインターンシップ説明会に参加、翌朝提出期限の課題を終わらせ、帰宅した時には着替える気力もないくらい疲労困憊。来年のフェアの日は、授業を振り替えていただけるように先生方にお願いしてみよう、などと考えつつベッドまでよたよたと這って行き、力尽きました。   就職フェアに向けた準備として私がしたことは、まず過去にインターンをしたことのある先輩や先生方に体験談を伺いました。学校の勉強が一段落した冬休み中に自分の履歴書とカバーレターを練り直し、それらを経験豊富なアドバイザーに添削してもらいながら更に内容に磨きをかけました。1月は冬休みでモントレーに残っている学生がほとんどいないので、普段は多忙なアドバイザーにゆっくり会ってアドバイスをいただくチャンスでした。フェアの開催日の前にインターンシップの募集を締切る団体もあるので、あらかじめ確認しておきましょう。 またフェアに臨むにあたり、学校主催で数週間前から複数のワークショップが用意され、面接の練習や、心構え、服装、持ち物まで、かなり詳細なアドバイスをもらえるので、授業スケジュールが許す限り参加しておくといいと思います。また、参加企業の中でも特に興味のある団体については下調べをきちんとしておけば、担当者に的確な質問をして第一印象アップ!その上、当日会場での短い時間を有効に使うことができます。 フェア前日に心優しいクラスメートにスーツ、シャツ、ハイヒールなど何から何まで貸してもらい、当日は早く起きて、シャワーを浴び、朝食をとり、すっかり忘れていた課題二つを締め切り時間ギリギリで提出し(良い子の皆さんはなるべく前の日までに終わらせましょう!)、大急ぎで着替えをすませて会場へ。 実はこの日一番のワクワクと言えば、生でFBI、CIA、Department of State(米国務省)のスタッフを見たこと!日本人むけの募集はしていなかったものの、「今ここでテロが起きてもいざとなったらきっとこの地味なおじさんたちがトミー・リー・ジョーンズばりのかっこよさで救ってくれるに違いない」という確信をもって心ゆくまでフェアを回ることができました。皆さん「モルダウ捜査官あれから10年後」くらいの渋い年齢層の方で素敵でした。あぁ麗しのFBI捜査官様。ずっと昔福島県の小さな八百屋さんで小さな日本人のおばあさんの変装をしていたけど、うっかり背中に大きくFBIとかいてあるジャケットを着てしまっていたあなたを見かけた日以来の再会でしたね。   何はともあれ、今回の就職フェアは私にとってとても有意義であり、翻訳・通訳がうまくなりたい、という気持ちがますます強くなりました。プロとして仕事をするのは遥かな夢ではなく、がんばれば近い将来実現するかもしれない、とも感じた一日でした。普段履かないハイヒールと普段着ないスーツでヨロヨロと歩き回ったこの日の成果やいかに。その結末はまたいつか。  

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