東京裁判に関する講演の逐次通訳

Filed under: Professional Development,T&I Student Life,翻訳・通訳・ローカリゼーション管理 — Shinichiro Tanaka at 9:32 pm on Sunday, February 24, 2013

先週の予告通り、今回のブログは講演の逐次通訳について書きたいと思います。

2月22日、武田珂代子先生による東京裁判に関する講演の逐次通訳を同級生と担当させていただきました。内容は武田先生のご著書『東京裁判における通訳』に沿ったもので、中でも通訳の三層構造にフォーカスが当てられました。ご著書自体が非常に面白かったので、内容を楽しみながら準備をすることができました。東京裁判では、日本人、日系人、白人といった異なるグループの人々が、通訳、通訳を監視するモニター、言語の専門家全体を統括する言語裁定官として、通訳作業をそれぞれ担当していました。これには社会的、文化的背景が絡んでおり、敗戦国の日本人に頼ることを避けるため、アメリカ国民の白人が、たとえ日本語がおぼつかなくても言語裁定官として居なくてはならなかったといった点など、非常に興味深い話が書かれていますので、通訳を目指している方や、東京裁判についてご興味のある方は、ぜひ武田先生のご著書をお読みください。

今回は事前にパワーポイント資料をいただくこともでき、十分に準備することができたので、当日はそれなりにスムーズに通訳をさせていただくことができました。いただいたフィードバックは好意的で、大変嬉しく思いましたが、一年生なので少し手加減していただいたのかなと思います。それでも、個人的にはとりあえず出来るだけのことはしたと手応えを感じています。ご著書も何度も日本語と英語で読みましたし、東京裁判に関する動画などを見たりもしました。パワーポイント資料のサイトラも何回かして、自分だけでもプレゼンできるようにしました。やってみてわかったことは、他の授業の予習や復習ももっとやれることがあるはずだという点です。ただ、健康などを害してしまうと元も子もないので、程よいバランスを見出していきたいです。

今日は先生方並びに先輩方がいらっしゃっていたため、通訳を判断していただくという点では、素晴らしいオーディエンスの方々に恵まれました。一応大学時代も人前で通訳する機会はあったので、緊張しすぎることはなかったのですが、人に伝えるという意識をしっかり持つ余裕がもう少しあればよかったなと思います。観客を見るということや、落ち着いてフィラーなどをなくすということに意識を向けることができたらと思います。しかし、普段小さなクラスで通訳をするのと比べ、より大きなオーディエンスに向けて話す場合は視線のあり方や声の張り方などが違うということを改めて実感できたのは良かったです。クラス内の仲間内で練習するだけですと、何のために通訳をするのかという意識がでてこないので、こういう機会があるというのは素晴らしいことだと思います。

今回の企画を可能にしてくださった武田先生ならびにMIISの先生方、先輩方、同級生に改めて感謝の意を述べたいと思います。みなさま、本当にありがとうございました。

Shinblog1

ちなみに、講演の当日、MIISの図書館で行われているブックセールが全品無料になりました。通訳者、翻訳者の勉強は永遠に終わりません。これだけ本が手に入ると嬉しいですね。

一年生の逐次通訳実践〜武田珂代子先生による講演会を控えて

Filed under: MIISについて,Professional Development,T&I Student Life — Celine Browning at 10:36 pm on Sunday, February 17, 2013

春まだ浅いこのごろですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、前回は二学期についての記事でしたが、今回は来週予定されている武田珂代子先生の講演会について書きたいと思います。

まずは、武田先生の簡単なご紹介です。武田先生は現在、立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科教授としてご活躍されています。先生のご専門は、通訳翻訳研究で、ご自身は本学の通訳・翻訳学科を卒業されています。1994年から本学で教鞭をとられ、その間、本学教員でもいらっしゃるアンソニー・ピム教授の下、スペインのロビラ・イ・ビリジリ大学で博士号を習得されました。

写真さて、このたびのご講演は、武田先生の博士論文のテーマでもありました「東京裁判における通訳」についてです。今回はなんと私たち一年生に通訳の機会が巡ってきました。一年生がこのような講演の逐次通訳を本学で行うのは初めてのことです。これまで二回ほど二年生の先輩方の逐次通訳を見る機会がありました。その二年生の前や先生方の前で通訳に挑戦するのは、いくら私たちが将来プロを目指しているといえども、かなりの緊張を強いられるものです。

来週に向け、通訳担当者の私たちは様々な準備をしています。例えば、武田先生についてのリサーチは言うまでもありません。先生についてのご紹介などのとき、知識不足で正確な訳ができなくては話になりません。次に,英語と日本語で先生の著書を読むことも必須です。これは、先生が使われる東京裁判関連の用語を両言語で把握しておくためです。これらの単語をまとめた用語集も作成します。さらに、インターネットなどで調べられる範囲で東京裁判や通訳、そのほか関連性のある内容にも一通り目をとおしておきます。

先生のご講演は来週の金曜日です。ですので、次回のブログはもう一人の通訳を担当する一年生の事後発表になるかと思います。私たちはまだ経験の浅い一年生ではありますが、またとない機会をいただいた以上、恥をかかないよう頑張りたいと思います。

では、次回をお楽しみに…

2学期目突入!

Filed under: T&I Student Life — Satoko Kanamori at 10:19 pm on Sunday, February 10, 2013

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。1ヶ月半の長い冬休みも終わり、2学期に突入しました。そこで、今回は、1学期と2学期の勉強内容の違いについてお話ししたいと思います。

spring_semester22学期は、1学期に比べるとより具体的な内容のもの(翻訳関連の授業はすべて金融・経済)になったので、さらに難しく、勉強しなければいけないことも増えます。また、通訳のほうは、同時通訳の授業が始まりました。1学期に始めた逐次通訳と違い、同時通訳は原文を聞き、理解し、頭の中で訳し、口に出すという行為を瞬時に行なわなければいけないため、練習を重ね、慣れることが大切です。私は先日、同時通訳を始めたばかりなので、今は「大変」という感想しか持っていません。それが、時間と共に「楽しい」に変わってくれればいいのですが、それには努力が必要です。

spring_semester1そこで様々な練習方法があるのですが、私達がやっているのは、シャドウイング、クイックレスポンス、聞きながら数字を数えるなどの並行作業の練習、一文または区切りのいいところで訳す記憶力の訓練です。これらの練習法と同等に大事なのが、良い文章を読んだり聞いたりすることです。今学期に入って痛感するのが、内容がわかっていないと上手く訳せないということです。仮に訳せたとしても、不自然な訳になったり、違う用語を選択してしまったりと失敗が増えてしまいます。日々の積み重ねが一層、大事になってくるのです。

勉強についてばかり書きましたが、勉強の間の息抜きも大切です。ジムに行ったり、友達とおしゃべりをしたり、お菓子を作ったりと勉強とは別の時間を作ることも大学院生として必要です。

以上のことを踏まえて、2学期も楽しく過ごしたいと思います。

英語のグローバル化と翻訳

Filed under: 翻訳・通訳・ローカリゼーション管理 — Lexi Whitmore at 10:47 am on Monday, December 3, 2012

翻訳のオーディエンスがターゲット言語のネイティブスピーカーだという思い込みは多くの人が持っているといえます。MIISに入学する前、自分自身もそう思っていました。私はアメリカ生まれで英語のネイティブですが、以前、日英翻訳の仕事をしたときは、アメリカ人が読むだろうと考えながら訳しました。しかし、MIISの先生方やベテラン翻訳者のお話を伺い、今の時代、日英翻訳は必ずしも英語ネイティブだけを対象にしているわけではなく、世界中の英語話者を対象にする場合もあると分かりました。つまり、英語のグローバル化が翻訳に影響を及ぼす時代が来たということです。このグローバル化について、ちょっと考察したいと思います。

現在、英語はアメリカ、イギリス、オーストラリアなど以外にも、ほかの国々で使われていますが、実際に英語話者は何人ぐらいいるのでしょうか。スウェーデンのNationalencyklopedinが2010年に行った調査によりますと、英語ネイティブは3.6億人、英語を第二言語として習得したのは3.75億人、外国語として習得したのは7.5億人です。すべてを足せば約15億人になり、世界中の人々の6分の1以上が英語話者だということになります。要するに、英語は既にリンガ・フランカになったのです。これが翻訳にどのような影響を及ぼすかというと、ネイティブとネイティブではない英語話者、両方が理解できるような訳を提供しなければいけない依頼がこれから増加するでしょう。

実際にそうなれば、いくつか問題が起きるかもしれません。まず、このような依頼を受けたとき、抵抗を感じる英語ネイティブもいるのではないかと思います。日英翻訳者になる人は、ある程度自分の母語、あるいは第二言語に愛着を持っていることが多いでしょう。したがって訳文をわかりやすくするために、時々表現力の豊かさと正しさを犠牲にせざるを得ないことは好ましくない、と思うかもしれません。その一方、翻訳者の任務は簡単に言えばソース言語がわからない人にターゲット言語でメッセージを伝えることですので、翻訳を利用する人が理解できなければ、翻訳者の努力が無意味になり、クライアントは満足しないという考え方もあります。どんな意見を持っていても、英語のグローバル化はこれからますます進むかもしれませんので、日英翻訳者の仕事にどのような変化をもたらすか、引き続き見ていく必要があるでしょう。

メガコンセク授業

Filed under: MIISについて,T&I Student Life — Shinichiro Tanaka at 8:53 pm on Saturday, November 24, 2012

皆さんこんにちは。今回はMIISならではのメガコンセク(合同逐次通訳)授業について話したいと思います。

メガコンセクとは、他言語の通訳生と一緒に通訳の演習を行うという授業です。具体的には、各言語2人または3人のグループとして参加し、別言語の同規模グループとお互い英語以外の発言を英語に通訳し、それをまた別のスピーカーの言語に通訳していくというリレー通訳方式の授業です。

どのような感じで授業が進行したかは下記の図をご参照ください。今回僕は2対2でスペイン語通訳の方々と通訳の練習をしたので、そのときの様子を図にしました。

今回面白かったのは、自分自身が2人の通訳者に通訳してもらえるという点ですね。自分が話すときはノートとらなくて良いのだなと思ってほっとしていました(笑)。それと、普段は日本語から英語への通訳でワンクッションおくだけなのが、今回はスペイン語も混じっていたので2クッションあったのが面白かったですね。タイムラグが普段より長かったのですが、通訳が淡々と訳していたので安心して話せました。スピーカーと通訳者の信頼関係も大事だと感じました。普段から一緒に授業をしている仲間なので、安心して任せられます。

あと、興味深かったのは文化的な違いです。スペイン語圏の文化のようなのですが、話している間によく「ちっ」と舌打ちするのですね。これはどうやら今考えていますというメッセージらしく、悪気は全くないようです。そして、特に直すようなものでもないらしいということにびっくりしました。日本だと結構不快に思われる方も多いと思いますので。逆に、日本語で南アメリカとスペインのスペイン語の違いという風に話したとき、相手側にラテンアメリカです、と訂正されました。メキシコの方だったので、メキシコは北アメリカに属しているため、これは失礼だったと感じました。スピーカーが南アメリカと言っていたので訳としては良かったのですが、他国の人と仕事をする場合は相手に失礼のないように言葉を選ばないといけないと痛感しました。

このように、MIISにはいろんな国の通訳者が集うので、その特徴を生かした教育を受けることができます。今後もこの恵まれた環境を生かし、がんばって精進していきたいと思います。

モントレーの海岸です。アザラシが気持ちよさそうに寝そべっています。適度に散歩をしたり、ジムに通うなどして毎日を健康に過ごしたいと思っています。

フォール・フォーラム

Filed under: MIISについて,Professional Development — Celine Browning at 12:12 am on Tuesday, November 20, 2012

皆様、秋も深まり冬が近づきつつありますが、いかがお過ごしでしょうか?ここモントレー国際大学院では、先日フォール・フォーラムというイベントが開催されました。

フォール・フォーラムとは、主に通訳・翻訳課程の2年生が中心となって行うパネルディスカッションです。しかし、一般的なパネルディスカッションとはやはり少し違います。なぜなら、本学の学生が7言語で話される内容を英語に逐次通訳するという一面があるからです。この機会を通して1年生や学外の人が本学の通訳・翻訳課程の内容や質の高さを知ることができ、2年生は卒業してプロになる前の本格的な実績を積むことができます。本学の通訳・翻訳学科以外の学生も通訳がどのように異文化間コミュニケーションを可能にするのかがわかります。この催しは普段あまり関わりを持たない学科間の交流の場にもなります。

今回のフォーラムのテーマはスポーツでした。健康、経済、文化、ジェンダーなどの様々な観点からスポーツが論じられました。三つのパネルディスカッションがあり、テーマは次の通りでした。
1.Sports and Health: Run for Your Life!
2.Sports and Money: A Zero Sum Game?
3.Sports and Culture: Must have Balls to Play?

二つ目のパネルディスカッション

スピーカーにはもちろん通訳・翻訳学科の学生もいますが、スペイン出身の元アスリートの地質学者や、本学科のセネガル出身の教授、MBA課程の学生、ロシア出身のフリーランス翻訳者、国際環境政策学科のセネガル出身の学生(フランス語)、さらには中国出身の国防総省語学研修所(DLI)の教授などが参加されました。

たとえば二つ目のパネルでは、中国語>英語>スペイン語>英語>ドイツ語>英語>中国語の通訳が行なわれました。まず、モデレーターの中国語の質問を中国語科の学生が英訳します。それにスペイン語のスピーカーが答え、スペイン語科の学生が英訳します。さらにドイツ語の質問が続き、それがまた英訳され、最後には中国語のスピーカーが回答するといった具合です。

このフォーラムを通じて最も目についたことは翻訳・通訳学科での各言語ごとのスタイルの違いです。たとえば、日本語のスピーカーや通訳者の場合はやはり、動作や話し方の格調の高さに、特に注意が払われます。逆にスペイン語の場合は、スピーカーの話す速度がとても速く、カジュアルに感じます。手の動きも話者、通訳者の両者ともに惜しみなく導入し、話者の話し方を再現する通訳者もいました。ロシア語の場合は静かで落ち着きがあり、身振り手振りもありませんでした。とてもプロ意識の高い学科だと実感しました。中国語は本学で最も学生数の多い分野ですが、内容、話し方ともにとても質が高いものでした。

一つ気づいた重要な点は、通訳者が笑顔で話すと気分良く聞くことができるということです。

通訳者

アイコンタクトについても、常にではなくてもある程度の間を置いて客席を見ることにより、聞いている側は親近感を覚えます。もう一つ重要な点は、通訳者が適切な訳語を考え出せない時でも、わからない事を声や態度で示さず、堂々といかにも自信のあるように話せば聴衆の信頼を損なわないという事です。同じように、たとえば通訳者が服をいじったりペンを回したりすると、聞いている側は不安を覚えてしまいます。このような多言語の通訳を見ることにより、様々な真似るべき点、注意すべき点を再認識することができました。

このように本学では1年を通して逐次、同時通訳の本格的な実践を積む様々な機会があります。春学期にはTEDxトークというイベントがあるので、報告をどうぞお楽しみに。

サンディエゴATA会議で得たもの

Filed under: Professional Development — Satoko Kanamori at 11:12 pm on Monday, November 12, 2012

10月24日から27日まで翻訳・通訳科の一年生はサンディエゴで開催されたATA(American Translators Associationアメリカ翻訳者協会)の会議に参加しました。

ATAの歓迎レセプション

まず、ATAは翻訳者だけではなく通訳者も登録できる、アメリカをベースにした団体です。プロの翻訳・通訳者の支援のため、新しい人材を育てるため、そしてさらに翻訳・通訳の仕事を推進するのが目的です。ATAは年に一度、毎年違う都市で会議を開きます。プロの翻訳・通訳者(大勢のMIISの卒業生)に出会える良い機会でもあり、分野ごとのプレゼンテーションを見て、学び、そして翻訳・通訳者とだけではなく、様々な関連企業とネットワーク作りもできます。

ATAは様々な言語部門に分かれているので、Japanese Language Division(日本語部会)のセミナーに出席したり、一般的な翻訳・通訳に関するセミナーにも参加したりすることができます。今年の一年生は5人しかいないので、興味のある分野に分かれて別々のセミナーに出席し、後から主な内容をお互いに説明するという方法で分担しました。

英日翻訳・通訳科の一年生

私が特に興味深いと思ったセミナーは、デポジションのチェッカー通訳者の役割、英日同時通訳時の予測方法、翻訳・通訳業界においての知識とマナーなどでした。

最初はあまり興味がないと思っていた分野でもセミナーに参加し、その分野に詳しい人と話すことで興味が湧き、新しい発見につながりました。また、現役の翻訳・通訳者に会うことで、たくさんの刺激を受けることができ、やはりこの業界で働きたい、キャリアを積みたいと改めて思いました。

サンディエゴでのATA会議は、セミナーに参加するだけではなく、これからどのように翻訳・通訳者としての道を切り開くのかということを考えさせてくれる場でもありました。私の将来のビジョン作りにも大きな影響を与え、有意義な時間を過ごすことができました。

世界知的所有権機関 夏期フェローシップ(その2)

Filed under: Internships,Professional Development — Chiyo Benjamin at 3:55 pm on Tuesday, November 6, 2012

みなさんこんにちは。今回は、前回の私のワイポでの翻訳フェローシップに関する投稿の続編ということで、フェロー翻訳者の仕事の内容についてもう少し詳しくお話します。

 

私たちフェローのオフィスはリバイザーのオフィスと同じフロアーにあり、翻訳ドラフトを一本仕上げるたびに細かくフィードバックをもらい、修正点が多い場合は二度目のドラフトを提出します。初めのうちは時間をかけてきちんと下調べをし、リサーチ能力を身につけるように指導されます。2ヶ月近く経つと翻訳はすべて採点され、一本ずつ合格、不合格が決定されます。毎回翻訳のクラスの期末試験を受けているような感じでしょうか。

採点はエラーごとに、その重度によって減点数が決まります。ミーニングエラー、読解エラー、リサーチ不足による訳語エラーなどは重度です。特許翻訳では分野ごとの用語特異性が非常に高いので、一般的な辞書の訳語、オンライン辞書やコーパスに載っている訳語をそのまま使ってしまうと訳語エラーになってしまいます。私の場合は英語が第二言語なので、特許翻訳に特有の冠詞の使い方(文法ミス)に非常に苦労しました。冠詞ミスは、読解ミスなどのいわゆる重度エラーに比べ小さな減点だったようです。

 

私が一番気をつけていたのは、一度リバイザーに注意された点や、フィードバックをもらった事項はすべてノートに書き留めて、同じミスは繰り返さないようにしたことでした。リバイザーは、私たちフェローが3ヶ月という短期間のトレーニング中に、今後、委託翻訳者として自力で仕事をこなす力を身につける能力があるかどうかを見ていますので、素直にフィードバックを受け入れ、吸収し、次の翻訳に適用する能力があることを証明しなければなりません。翻訳能力だけでなく、知らない分野や専門用語を的確に調べるリサーチ能力、またリサーチを短時間でこなし、ノルマをクリアする仕事の効率性も評価されます。

このように書くとワイポでの仕事は大変なように思えてしまうかもしれませんが、知的探究心の強い方、難解なパズルが解けるまで根気よく取り組むのが好きな方には本当に面白い仕事だと思います。用語や文法にこだわりを持ち、最適な表現を見つけ出すのが好きな方にもうってつけだと思います。どのリバイザーも辞書が好き、調べ物が好き、自分の知らないことは知りたい、わかりたい、というタイプの翻訳者さんばかりでした。日々取り組む様々な特許や科学的事象の仕組みを、少しずつ調べながらひも解いていく面白味は何にも代え難いものがあります。

 

私にとってジュネーブでの仕事の最大のボーナスは、フランス、イタリア、ドイツ、リヒテンシュタイン、オーストリアと隣接しているスイスという土地柄、週末を使って気軽にヨーロッパ各地を旅することが出来たことでした。ヨーロッバは電車、バス路線、高速道路などが整備されているので、短時間でどこへでも行けます!夏の間のヨーロッパ旅行についてはまたいつかの機会に!

 

モノリンガル環境からMIISへ

Filed under: Path to MIIS — Lexi Whitmore at 10:19 pm on Monday, October 29, 2012

アイダホ州ボイシ市

MIISでの日本語翻訳・通訳の学生を想像してみるとどのようなイメージが思い浮かぶでしょうか。バイリンガルの人、帰国子女、日系アメリカ人などのイメージかもしれません。もちろん、そのような学生もいます。しかし、私のように日本語と全く接触できないところで育った学生もいます。

私の出身地はジャガイモで有名なアイダホ州です。人口60万人の州都であるボイシ市で育ちましたが、ボイシ以外は完全に田舎だと言えます。ヨーロッパ系アメリカ人やヒスパニック系アメリカ人がほとんどであり、日本人と会う機会は多くの場合ありません。ボイシの場合は、日本人や日系アメリカ人が人口の0.4パーセントを占めるのみです。

この状況はアイダホ州だけではなく、「田舎国家」とも言えるアメリカでは一般的ではないかと思います。2010年の米国国勢調査によりますと、全米に76万3325人の日本人と日系アメリカ人が住んでいます。しかし、そのうち39万4869人はカリフォルニア州、29万6674人はハワイ州に住んでいます。つまり、この二州以外に住む日本人・日系人は10万人にもならず、多くのアメリカ人は、日本人と、日本の文化や言語と接触できないところで住んでいるということです。

アメリカに住んでいる日本人

それでは、地元の文化や家族と全くつながっていない翻訳・通訳になれるようなレベルまで 日本語を習得するには、何が必要なのでしょうか。まず、母語がしっかりとしていることです。当たり前だと思う方もいるかもしれませんが、母語できれいに書かれている文章の魅力を理解できなければ、日英通訳・翻訳でもアウトプットが分かりづらくなるでしょう。そして、日本語に対する熱心さが必要です。熱心さというか、楽しくなくても苦労が多くても、「これを諦めたままではいられない」という気持ちです。この気持ちがあれば、自然に努力するようになって、モノリンガル環境を乗り越えられるでしょう。最後に不可欠なのは、クリエイティブであることです。私の地元のようなところでは日本語を習う機会がないので、自分で作らないといけません。日本語をマスターするのは不可能だと思わずに、独学用の資料、日本でのインターンシップや留学など、あらゆる手法を使って機会を見つける必要があります。

以上はあくまでも私の経験からのお話ですが、アメリカの片田舎でまわりのサポートがない環境で日本語を習っている人たちに何より言いたいのは、「私のような人が日英通訳・翻訳になれるはずがない」なんて思わないで下さい、ということです。出身地がどこであれ、粘り強く賢い人に、不可能なことはないのです。

ICUからMIISへ

Filed under: Life in Monterey,MIISについて,Path to MIIS — Shinichiro Tanaka at 9:17 am on Monday, October 22, 2012

皆さんこんにちは、そして初めまして。会議通訳専攻1年の田中です。

幼い頃より海外で生まれ育ち、日本という国から少し距離をおいて物事を考えてきました。なので、日本で勉強や仕事をし、キャリアを積み上げていくという一般的な道筋よりも自分にとってより効果的な道程はないだろうかと考え、一年間のギャップイヤーを経て、モントレーで勉強するのが良いという考えにいたりました。理由を挙げると、アメリカで一番なら良いに違いない、院に行くなら二年間はやりたい、インターンもやってみたい、ということで決めました。

受かるも八卦、受からぬも八卦と思い、MIISに願書を送りました。受かったら行く。受からなかったら行かない(行けない)。という至ってシンプルな思考をしていました。受からなかった場合は、日英翻訳の先生に弟子入りしていたので、そのままフリーランスで翻訳を続けながら、ボランティアなどをしながら、チャンスを待つか掴みに行くか、したと思います。とはいえ、大学を卒業してからずっとフラフラしているのも良くないので、焦りはありました。

モントレーの良さは何といってもブランド力だと思っています。あと、ネットワーク。国際基督教大学(ICU)で通訳や翻訳の勉強をしていたので、何人かはその道の人とも知り合えたのですが、ICUで授業を受けている人の大半は他の道に進みます。ただ、いろんな道にみんなが進むので、将来のクライアントとしては有望な人はたくさんいると言えるでしょう。そのへんを今後活かせるかどうか…(笑)。ちなみに、通訳や翻訳の授業は良かったです。通訳サークルにも参加していたので、貴重な経験をたくさんさせていただきました。なので、MIISでこの経験を生かさねば、と思っています。

ICUの授業では、早い段階から同時通訳を習いました。これは、最終的に難しいのは逐次通訳、という考えからだと思います。おかげで僕は同時通訳に対して難しそう、とか大変だというイメージをあまり持っていません。逆に逐次通訳の方が苦手です。なので、逐次通訳をまず勉強するMIISのやり方はありがたいです。これで逐次の苦手意識を払拭できれば、と思っています。

ICUのサークルでは会議などの通訳や、大学の講義の通訳など実際の通訳と同じような環境で通訳をする機会がたくさんあったのが特に良かったです。日本の良いところは通訳や翻訳を始めるにあたってのハードルが低いところだと思います。学生の頃からバイトのような形で仕事が出来るのは、経験を積むのに便利です。まあ、あまり安く引き受けると市場にとって悪影響となりうるので、ボランティア以外は控えるようにしていましたが。また、大学自体がバイリンガルなので、寮に住んでいたのですが、月に一度の寮会の逐次通訳を2、3時間ぶっ続けでやるなど、練習の機会はそこら中に転がっていました。

モントレーへと飛び出した理由は、仕事を頼んでいただいた方にもっと自信を持って通翻訳サービスを提供したい、という思いからです。また、僕の翻訳の師匠はCATなどを使っていなかったこともあり、今の時代に合った通訳・翻訳のあり方を見極めるために、様々な通訳者や翻訳者の集まるMIISに行きたいと思うようになりました。

MIISの恵まれた環境を最大限活用し、精進し続けたいと思っております。ちなみに今年の日英通訳・翻訳一年生は僕も含め、全員10月24日から27日までのATA(American Translators Association)の会議に参加します。ATAでたくさんの翻訳者や通訳者の方々とお会いできることを楽しみにしております。今後とも、よろしくお願い申し上げます。


勉強とはあまり関係ないのですが、有名なモントレー・ジャズフェスティバルに三日連続で行ったり、ホエールウォッチングなどをしたりと、勉強以外でも素晴らしい経験をさせていただいております。観光地としてもモントレーは素晴らしい場所ですよ。

« Previous PageNext Page »