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ATA会議と国際連合

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秋学期も終わり、遅ればせながら、2ヶ月前に参加した ATA (American Translator’s Association, アメリカ翻訳協会) 会議について書こうと思います。
ATAは、米国を主とする翻訳・通訳者が加盟している団体です。しかし、大規模なイベントのため、世界各国からの参加者も多く、日本人も多数。ネットワーキングの機会や翻訳技術のセミナー、認定プログラムおよび翻訳業界について情報提供なども行われ、翻訳や通訳の仕事をしている会員たちをサポートしています。ATAは年に一度会議を行い、開催される場は毎年異なります。2009年は、ニューヨークのタイムズ・スクエアで開催され、50周年記念ということで華やかなイベントとなりました。

この会議には二つの目的があります。第一に、出席している翻訳会社や通訳会社に履歴書を提出し就職活動したり、MIISなど、翻訳・通訳を教えている大学の代表者に面会するため。そして第二に、今現在、翻訳・通訳の現役プロによるセミナーにおいて最新の技術や方法、経験などを学ぶためでもあります。セミナーには様々なテーマがありました。会議通訳向け準備方法、精神障害者のための通訳、翻訳で使われるテクノロジーの今後、法廷通訳のデモンストレーション、など様々でした。また、これらのセミナーは、日本語を含む様々な言語で行われました。
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最も印象に残ったのは、MIISの卒業生や関係者がいかにも多く参加していたことでした。MIIS関係者の人たちがいくつもの言語で活躍しており、参加者からセミナーで話していた専門家まで、いたるところにMIISの存在が感じられました。「やはりMIISのT&Iプログラムはすごい!」と改めて関心しました。

面白いお話がもう一つありました。MIISの教授の紹介で、国際連合の通訳者に会えたことでした。国連で同時通訳者、そしてその人たちを仕切る事務総長補佐官に会う機会もあり、貴重なお話を聞かせていただきました。残念ながら、国連では日本語は公式言語でないため、使われることが少なく、日本語T&I学生の私たちとは国連にはあまり縁がありませんでした。しかし、ともに参加した中国語やロシア語を話す学生にとって、その言葉は公式言語であるため、彼らにとってMIIS卒業後、国連の仕事に就けることが現実性を帯びていました。
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説明によると、国連で働くには最低3ヶ国語を話さなければならない、そして少なくともそのうち2つは国連の公式言語でなければならない、ということでした。さらに、通訳者として働く場合、使用する言語には組み合わせがあります。一つ例を挙げれば、ロシア語が母語の場合、必ずフランス語も話せなければならない。なぜなら、国連の通訳者は、一人で幾つもの言語を使用するのではなく、リレー通訳を行います。つまり、次々と倒れていくドミノのように、ロシア語、フランス語、スペイン語、英語など、一つの言葉から次の言葉へ順番に通訳されるということを聞きました。

特に印象に残るコメントがありました。MIISの学生が国連のベテランの通訳者の一人に「今でも緊張しますか」と聞いたところ、彼は、「私が緊張しなくなった日は通訳をやめる日だ」と答えました。やはり、どんな人でも緊張し、さらに言えば、緊張感なしにレベルの高い仕事はできない、ということです。通訳を目指す皆さん、自分が緊張するからといって、めげないでください。国連のベテラン通訳者も十分緊張しています。

ニューヨークへの旅では、ATAの参加、国連のツアー、そしてニューヨークにいる友達にも会え、目いっぱい楽しむことができました。来年のATA会議はデンバーで開催される予定です。私はまだ一年生だったため、今年は翻訳・通訳の世界を理解するために参加しましたが、来任は就職活動の目的もできるため、私にとって意義深いイベントになると思います。