Tag Archives: ワークショップ

ワークショップ:人身売買

Contributed by Matthew Carpenter 

モントレー国際大学院(MIIS)では、通常提供される四単位の授業のほかに、週末のみ行われる一単位の「ワークショップ」と呼ばれる授業がいくつかあります。最近受けた人身売買についてのワークショップについて、報告します。

人身売買についての講義を行ったのはビル・ヒラー氏。彼はMIIS の教授ではないのですが、何年も前に16歳の娘さんが東南アジアを旅行中拉致され、ヒラー氏は情報を得るために賄賂として使う現金十万ドルをかばんに入れて、六ヶ月間娘に関する色々な情報をだとってアジア全域を駆け回りました。しかし、娘さんの居場所を六ヵ月後見つけたときはもうすでに手遅れ。彼女は性の奴隷として扱き使われたあげく、逃げ出そうとしたために見せしめとして他の拉致された女性の前で集団強姦されて、結局は殺されていました。この事件をきっかけにヒラー氏は人身売買の問題に関わるようになり、MIISで一年に一度講義をしてくれます。

人身売買は麻薬の密輸に次いで規模が大きい犯罪で、世界で四百四十億ドルにものぼるビジネス。アメリカだけで三十億ドル、日本では八億ドルにも及びます。人身売買は急速にその規模を拡大しています。その理由は、麻薬を密輸するよりリスクが低いことと、麻薬は女性と異なり、一度使えばなくなってしまいます。犯罪組織の多くは麻薬の密輸だけでなく人身売買にも積極的に力を入れてきている傾向があります。

アメリカでは、25万人の性の奴隷がいると推測され、平均年齢は12歳。ヒラー氏はこの女性たちについて語るとき「売春婦」という呼び方は使いません。理由は、売春婦と言えば、この女性たちはまるで自分の意思でその仕事に就いたように聞こえるからです。12歳で売春婦に自分からなりたがる女性などおらず、ほとんどは無理やりその仕事をさせられているので、ヒラー氏は売春婦より奴隷という言葉を使います。

男性も売買されます。性の奴隷のほかに、強制労働や兵士として無理やり働かされて、その規模は売買される女性の数をしのぎます。この問題に取り組むには警察などの組織が必要ですが、アメリカの警察組織はこの問題に対してあまり認識がなく、他の国々において警察自体が人身売買に関わっていることは珍しくありません。人身売買は国際ビジネスであり、その解決策には世界各国の協調が欠かせませんが、残念ながらそういった試みはまだ積極的には進められていません。

私は関西出身なので、夜遅く大阪を歩いていると東南アジアの女性に迫られます。英語で「三十分三千円!」と積極的に声をかけながら、私の腕を引っ張ってでも連れて行こうとします。私はもちろん必ず断るのですが、なぜ日本で外国の女性がこのようなことをしているのでしょうか。こういった女性の多くは人身売買の被害者であり、それにもかかわらず彼女たちが被害者であるという認識はきわめて低いのではないでしょうか。人身売買の解決に取り組む第一歩は、その被害者たちに関する認識を変えていくことだと思います。