Monthly Archives: February 2009

シーフードの持続可能性と同時通訳

3196548811_97c4716c7f

昨晩(2月19日)の夜に、モントレー国際大学院が定期的に催してる講演がありました。
今回は、「シーフードの持続可能性は可能か」というテーマでのパネルディスカッションが行われ、
ゲストスピーカーとして以下の4人の人がこられました。

Kim McCoy – Director of Shark Conservation for the Sea Sheperd Conservation Society.

Dane Klinger – Stanford Ph.D student and former research scientist at the Blue Ocean Institute.

Casson Trenor – Director of Business Development at Fishwise.

Jason Scorse – Assistant Professor at the Monterey Institute.

MIIS Alumnus Casson Trenor

MIIS Alumnus Casson Trenor

パネルディスカッションと言いましたが、正確に言うと若干ディベートに近い感じで、Kim McCoyとJason Scorseが持続可能なシーフードの消費など無理、というスタンスで、残りの二人が、実現可能だ、というスタンスでお互いの意見を発表し、その後発表者 どうしで質疑応答があり、最後に聴衆者との質疑応答、というスケジュールでした。

最初にパネリストが全員自分の意見を述べるわけですが、あるパネリストは「魚だって痛みを感じるのだから私たちは食べるべきでない」と若干無理のある論を 張っていたり、またある人は「私たちは持続可能な方法でシーフードを食べることができるし、食べるべきだ」と言ってはいるものの、どうしたらそれが実現で きるかには触れなかったりと、気になる点が多かったです。
もしかしたら管理人が抜けた後にそういった具体的な話もしていたのかもしれません。

それからこれはモントレー国際大学院独自のアイデアなのですが、こういったパネルディスカッションやゲストレクチャーなどを利用して、通訳を学ぶ学生たちが実際にブースに入り、通訳の練習をします。
なので、講堂の入り口で同時通訳が聞けるヘッドフォンを配ってました。
今回は日本語はなかったのですが、中国語・韓国語・フランス語・スペイン語・アラビア語の同時通訳をやっていました。管理人はスペイン語をかじったことがあるのでスペイン語をちょくちょく聞いていました。
こうして講演を聴きに来ていた学生たちからフィードバックをもらい、通訳の腕を上げていくわけです。
非常に実践的で、こういう施設が整っているのも翻訳・通訳で有名なモントレー国際大学院らしいなと改めて実感しました。

管理人が納得いかないのは、「魚だって痛みを感じるから」とか「可哀想だから」食べるべきではない、という議論です。よく聞く議論ですが、あまり論理的ではないかなと。
ちょっとうまく説明できるかわかりませんが、挑戦してみます。

魚だって痛みを感じるから食べるべきではない(獲るべきではいけない)
=痛みを感じさせることは可哀想だ
=だから痛みを感じさせるべきではない
=つまり他の生き物(例えばシャチなど)も魚を食べるべきではない
(魚は牛、シャチはライオンなどに置き換えることも可能です)

「魚だって痛みを感じるから」食べるべきでないという論理を煮詰めていくと上の方程式のようになるかと思います。
この方程式は実現不可能ですし成り立ちません。
なぜなら人間は魚や肉を食べなくても生きていけますが、シャチはベジタリアンになることは不可能だからです。
自然界には食物連鎖があり、ライオンやシャチを頂点とし、全ての種が他の種を捕食して成り立っているわけです。だからこの自然の流れを変えることは無理ですし、大昔は人間もこの食物連鎖の一部として生きていたのでしょう。
つまり、「痛みを感じさせるのが可哀想だから」食べるべきでないという理論は、要は食物連鎖の否定につながるのではないかと管理人は考えるわけです。

では人間だけが食べるのをやめればいいのか。今まで人間がしてきた漁業というのは持続可能なペースを大きく上回る早いペースで行ってきた乱獲といわれるも のであり、さらにバイキャッチ(混獲・漁の目的以外の海洋生物を網にかけてしまうこと)のおかげで必要以上に海の生き物を殺してきたわけなので、当然これ らには規制をかける必要があると思います。
ではこの方程式はどうでしょう?

魚だって痛みを感じるから食べるべきではない。
=ただしこれは人間に限ったことで、魚を主食としている動物は食べてOK
=魚は痛みを感じ続けることになる

もともとこの論を張った人にこの質問をぶつけてみたかったものです。一体どんな返答をしたのでしょうかね。
この方程式がもしOKならば、やはり「魚も痛みを感じるから」食べてはいけない、という議論は論理的でないと考えます。人間が食べるのもシャチが食べるのも「魚に痛みを与える」という意味では同じ行為であるからです。じゃあなぜ人間だけが特別なのか。

こういう議論の陰に「人間は特別な存在で自然を管理しなければならない」といった考えがあるのではないかなと感じました。
高校のときに習った人もいるかと思いますが、山崎正和氏が書いた「水の東西」という短編の文章があります。これは、人間がどのように自然と付き合ってきた かを、水を通して著している文章で、東洋の思想は自然との共存を実践し、西洋は自然と対立してきた、というのが著者のポイントだったと記憶しています。東 洋の思想の例として鹿おどしを、西洋の例として噴水を使われていました。鹿どおしは水を上から下に落とすものであり、逆に噴水は自然な流れに逆らい水を下 から上に押し上げる、と。
先ほどの話にもどりますが、つまり人間は特別だから魚を食べないことによって自然をしっかり管理していこう、という考えがあるのではないかなと。

管理人の個人的な考えですが、欧米ではこういった考え方が主流です(西洋なので当たり前ですが)。しかし管理人は東洋文化出身なので、人間が自然を管理で きるなどというおこがましい考えは持ってません。やはり人間は自然の一部であり、自然とともに生きていけなければいけない、と考えます。
文化の西洋化が広まった今日の世界では、こういった東洋的な考え方は段々と少数派になりつつあります。
そのせいとも言えるでしょう、ここまで自然破壊が広まってしまったのは。
いくらテクノロジーが発展しようと、人間は自然から多くの利益を享受しています。
なので、その自然との共存という点は絶対忘れていけないと思います。
自分も環境のことを学ぶにつれて、ますますそれを実感しています。
ベジタリアンもいいですが、管理人は自然なペースで魚や牛を食べるほうがよっぽど自然だと思います。

以上、わかりにくい点も多々あったと思いますが、最後まで読んでいただきありがとうございます。

ワークショップ: Grant Proposal Writing

今回はモントレー国際大学でオファーされてるワークショップのひとつ、Grant Proposal Writing (プロポーザルライティング) について詳しく書いていこうと思います。

Grant Proposal Writing (プロポーザルライティング) ですが、日本語で簡単に言うと、「助成金獲得術」とでもなりましょうか。
これはモントレー国際大学で教えられてる数多くのワークショップのひとつです。
ワークショップは週末を使って行われることが多く、管理人が今取ってるのも金曜日の夜6時~9時、土曜日朝9時~夕方4時、日曜日は朝9時~午後2時までと、かなり強烈な日程となっています。
通常週末を使って次の週の宿題を大体やってしまうのですが、このワークショップのせいで今週末は一切ほかの宿題手をつけておりません。
現在アメリカは土曜日の夕方なのですが、通常の宿題のみならずこのワークショップの宿題も重なるため、かなり大変です。そこまでしてこのワークショップを受ける価値はあるのか?

答えは、管理人は取る価値あると思います。
なぜかというと、この助成金を獲得する術ですが、社会の中で公私共に役立つからです。
日本では財団法人・助成財団センターなどがありますが、一般の財団から研究助成金を得られるというのはそこまで盛んには行われていないイメージがあります。
フルブライト本庄奨学金など(これらは将来的にブログエントリーで紹介したいと思っていますが)でも留学する研究員のサポートなどが行われていますが、自分の勉強不足も手伝ってか、そこまで日本で研究助成金のお知らせ、というのは聞いたことがありません。
ところがどっこい、アメリカでは多くの財団が研究や奨学金のみならず、広い分野での助成金を出しています。

おそらく財団の数自体が圧倒的に多いというのもあると思います。
このリストによると、お金持ちの財団上位25団体のうち、実に17団体がアメリカの財団です。ゲイツ財団(マイクロソフト)やフォード財団(自動車会社のフォード)、パッカード財団(パソコンのHP)など、アメリカの大企業はこういった財団を通しての慈善活動にも力を入れています。
日本の財団はひとつもリストには入ってませんでした。
ただ勉強不足ではありますものの、日本でもトヨタやホンダ、三菱などの大企業がが財団をやっているみたいです。奨学金等の支援が多い模様。。面白いなと思ったのは、スラムダンクの作者である井上雄彦氏が立ち上げたスラムダンク奨学金です。アメリカでバスケを学べるみたいですね。

話がだいぶそれましたが、要はこういうプロポーザルを書けば助成金がもらえる、という知識があれば、例えば将来非営利団体やNGOなどで働くようになり、プロジェクトを立ち上げる際の準備金を獲得する際に非常に役に立ちますし、自分の研究を進めるために、例えばアフリカでリサーチを行いたいがお金がない、といったときに助成金でそれを獲得できるわけです。
もちろん、出されるプロポーザルの9割は通らないと言われるように、かなりの狭き門ではありますが、通るプロポーザルを書くためのコツを知ることは必ず自分の役に立つと思います。

このワークショップでは管理人は先日の記事で紹介したCLPの規模を大きくするプロポーザルを書いています。パッカード財団から5000万円を獲得して、CLPを海外で行おう、という壮大な計画です。実際環境保護プロジェクトのデザインに関してはどこにいてもできるわけですが、それを環境保護の場で実施する際の知識や技術は、現場で実際に体験しないとなかなか得られるものではないので、このプロポーザルはCLPのそのセクションを強調したものとなっています。
CLP担当教授とも話した結果、書き上げたら実際にこれをパッカード財団に出してみよう、という話になっています。
もしこれで5000万円獲得できたからかなりすごいですが、期待せずに提出しようと思います。

武田珂代子教授出版物 続報

4622074222

先日インタビュー を交えてお知らせした武田教授の本「東京裁判における通訳」が大手各紙で紹介されています。 毎日新聞の記事より
「東京裁判の運営に重要な役割を果たした通訳に光を当てる『東京裁判における通訳』(みすず書房)が刊行された。裁判の関連本は多いが、通訳の問題を正面から論じた研究はほとんど例がない。」
朝日新聞から。
「異なる言語の人が参加する国際裁判が公正に行われるためには、適切な通訳の存在が不可欠だ。しかし第2次世界大戦直後の東京裁判では、連合国側が信頼で きる通訳の人材は少なかった。また翻訳に関するルールも、法廷で審理が始まってから試行錯誤の末に形成された。本書は東京裁判の通訳をめぐる権力関係を取 り上げたものである。」

同じく朝日新聞の東京裁判に関する記事から。
「海外の史料を用いた研究としては、東京裁判を国際人道法の発展史に位置づけた戸谷由麻『東京裁判』(みすず書房)や、通訳の問題を分析した武田珂代子(かよこ)『東京裁判における通訳』(同)がある。 」

それからオンライン版では見当たらなかったのですが、熊本日日新聞も1月18日付けでこの本の紹介をしています。武田教授が熊本出身というつながりからでしょうか。
各記事はリンク先から全文が読めるようになっていますので、興味のある方は是非読んでみてください。

お勧め電子辞書

留学生の必需品といえば性能の良い電子辞書ですが、今日はいくつかお勧めのものを紹介したいと思います。
かなり個人的な意見も入ってますのでその点はご了承ください。

個人的にお勧めなのが、SEIKOの電子辞書です。

中でも、SR-G10000というモデルは、英語上級者モデルとなっているとおり、プロの翻訳者・通訳者も使うモデルのようです。

SEIKO SR-G10001

英語関連の収録辞書は以下の通りです。
  • 研究社 新英和大辞典 第六版
  • 研究社 リーダーズ英和辞典 第2版
  • 研究社 リーダーズ・プラス
  • 研究社 新編 英和活用大辞典
  • 大修館書店 ジーニアス英和大辞典
  • 大修館書店 ナノテクノロジー用語英和辞典 電子版
  • 研究社 新和英大辞典 第五版
  • ハーパーコリンズ コウビルド英英辞典 改訂第3版 オリジナル電子増補版
  • ハーパーコリンズ COBUILD Dictionary of Idioms 2nd edition(イディオム辞典)
  • ハーパーコリンズ COBUILD Dictionary of Phrasal 2nd edition(句動詞辞典)
  • ハーパーコリンズ COBUILD English Usage for Learners 2nd edition(使い方)
  • ハーパーコリンズ COBUILD Intermediate English Grammar 2nd edition(文法)
  • ハーパーコリンズ コンパクト類語辞典
  • 5-million-word Wordbank from the Bank of English
  • オックスフォード大学出版局 オックスフォード英英辞典 第2版
  • オックスフォード大学出版局 オックスフォード類語辞典 第2版
  • 小倉書店 科学技術論文、報告書その他の文書に必要な英語文型・文例辞典

今まで何枚も英語でレポートを書いてきていえるのが、一番重宝する辞書は類語辞典及び連語辞典(Collocation)だということです。類語辞典は同じ言葉を何度も繰り返して使いたくないときに非常に便利ですし、連語辞典は使いたい単語をどういった言葉で修飾すればいいか、というのが一発でわかります。
英語を母国語としない人が苦手なのが、まず冠詞(theやa、anなど)、次に前置詞ではないかと思います。冠詞は量をこなして経験を積むしか上達の道はありませんが、前置詞は連語辞典があれば大体正しい使い方がわかります。
このSEIKOのSR-G10000にはどっちの辞書も入っており、なおかつコウビルドやオックスフォードなども入ってますので、英和で調べた単語の意味を英英で二重にチェックすることで間違った使い方や文脈に沿わない単語を使ってしまうことを防ぐことができます。

唯一の難点は値段です。中身が充実してる分べらぼうに高いのです。販売価格69800円となってますが、実際はAmazonの値段を見てもわかるように45000円前後です。家電量販店などに行くともう少し高いかもしれません。

そこまで充実してなくもいいからもうちょっと安いほうがいい、という方には、SR-S9002というモデルがお勧め。これは同じくSEIKOが出してる電子辞書なのですが、こちらは若干コンテンツが少ないです。

SEIKO SR-S9002

英語関連の収録辞書は以下の通りです。

  • 研究社 リーダーズ英和辞典 第2版
  • 研究社 リーダーズ・プラス
  • 研究社 新編 英和活用大辞典
  • 大修館書店 ジーニアス英和大辞典
  • 大修館書店 ナノテクノロジー用語英和辞典 電子版
  • 日外アソシエーツ 180万語対訳大辞典 英和・和英
  • 日外アソシエーツ 人文社会37万語英和対訳大辞典
  • 日外アソシエーツ 人文社会37万語和英対訳大辞典
  • 研究社 新和英大辞典 第五版
  • オックスフォード大学出版局 オックスフォード米語辞典 第2版
  • オックスフォード大学出版局 オックスフォード米語類語辞典
  • オックスフォード大学出版局 オックスフォード現代英英辞典 第7版
  • オックスフォード大学出版局 オックスフォード連語辞典

と辞書の数は少ないですが、若干種類の違った辞書が入ってます。上で紹介したのがプロの翻訳者・通訳者向けに対して、こちらは大学生・ビジネスマン向けとなっています。

管理人はここでの修士号を始める前に日本でこの「大学生・ビジネスマン向け」のモデルを購入してずっと使っていますが、今のところこれで足りないと思ったことはないですね。なので、モントレー国際大学院で言語教育や翻訳・通訳の分野に進みたい人には上のモデル。国際政策やMBAを目指したい人にはこのモデルがお勧めではないかと思います。こちらは定価60000円ですが、Amazonでは半額近くの32500円、家電量販店では若干高いかなと思います。ちなみに管理人は去年の夏にこのモデルを家電量販店で購入したのですが、確か値段が39000円ぐらいでした。でも値札は44000円となっており、ちょうど5000円引きキャンペーンかなんかで安くなったと記憶しています。

両方に共通して言える長所ですが、液晶が非常に綺麗。しかも明るいので直射日光のもとでもちゃんと使えます。逆にその分ライト機能というのは搭載していないので、本当に真っ暗闇の中では使うことができません。ただこの綺麗な液晶を生かして、イラストなどもときどき搭載しています。例えばブリタニカ国際百科事典で「シャチ」という言葉を検索すると、シャチの説明文の一番下に、人間の大きさと対比させることでいかにシャチが大きいかを表すイラストがでてきます。

もう一個短所は若干起動に時間がかかること。ほんの1,2秒の世界ですがそれまで使ってたシンプルな電子辞書に比べるとすぐ起動しないな、と思うことが時々あります。

2010年8月3日追記:
現在はそれぞれのモデルで新しいのがでており、最新版のモデル名は、SR-G10001と、SR-S9002のようです。それにともない、写真とリンクを差し替えました。説明文とモデルがマッチしてなくて申し訳ないです。収録辞書は新しいモデルなので、それぞれ増えています。